第317話:1年生 対 甲賀ショウ(猫)
「よーし!じゃぁ、そろそろ始めようかー」
猫獣人ショウが、いつも修行する森へと到着した一同に笑って言った。
それはもう、物凄く嬉しそうに。
(((あぁ、頑張って良かった)))
重清とソウ、そして恒久は、そんなショウの表情に心からそう思っていた。
「じゃぁまずは、1年生ー」
そんなショウの言葉を聞いた重清は、プレッソ、チーノ、ロイを具現化した。
「みんな、待たせてごめんな!流石に学校で具現化するわけにもいかなくてさ」
「へっ、いつものことじゃねーか!まぁ、ショウの送別会にはでたかったけどよ!」
「そうね。そこは少し残念だったわ」
「お主らなら、変化の術で人に化ければ良かったのではないか?」
「「あ・・・・」」
珍しいロイのつっこみに、プレッソと、これまた珍しくチーノがそう声を漏らしていた。
「なははは。チーノでもこういう失敗するんだな」
重清が笑いながらそう言うと、
「おい重清っ!オイラはいいのかよ!?」
プレッソが重清へとつっかかった。
「えー、プレッソはまぁ、たまにあるじゃん?」
そう言ってプレッソに笑い返した重清は、チーノのロイに目を向けた。
「今回の手合わせ、とりあえずチーノとロイは待機しててもらってもいい?」
「あら、自分からそんなこと言うなんて、珍しいわね」
重清の言葉に、チーノはそう言って微笑んでいた。
「今回は命に関わるわけでもないからさ。まずはおれとプレッソだけでやってみたいんだ。まぁ、ヤバかったらアレで助けてもらうかもだけどね」
「えぇ、アレなら助けてあげてもいいわね。多分、私達の出番は・・・・」
「ふむ。だろうのぅ」
チーノとロイはそう言って、面白そうな目でショウを見つめていた?
「ん?まぁいいや!じゃ、そういうことでよろしくな!」
そう言って重清は、プレッソと共にソウ達の元へと戻った。
「じゃぁー始めるよー?準備は出来てるかなぁー?」
そう言ってショウは、手で顔を洗っていた。
気分はもう、完全に猫なショウなのである。
そんなショウに見惚れているアカを放っておいて、重清はプレッソに声をかける。
「プレッソ、銃化でいっていい?」
「なんだよ。オイラも参加できないのか?」
プレッソはそう言って不機嫌そうな顔を重清へと向けた。
「うーん。なんかさぁ、どうせだったらまず、4人でやってみたいんだよね」
「ふ〜ん。まぁいいや。銃化も久しぶりだしな」
「さんきゅっ!」
重清はプレッソへと笑いかけ、術を発動する。
「『具現獣銃化の術』っ!!」
その瞬間プレッソのカラダが光へと変わり、重清の手に
「準備オッケイっ!!」
その重清の言葉に、ソウは
「あれ?ツネ、幻獣の術は使わないの?おれ、楽しみにしてたんだけど?」
重清はそっと、恒久に耳打ちした。
「まぁ最初は、俺ら4人でやりたいんだよ。お前だってそうだろ?」
「なーる!」
恒久の言葉に重清がそう言うと、
「じゃぁ、始めようかー」
ショウは言いながら
「ポロッ」
「あれー?」
いや、握ることができなかった。
「この手じゃ、握れないのかー。あっ、握れないのかにゃー」
猫の獣人となったことでテンションの上がっているショウが、わざわざその姿に寄せて言葉を言い替えると、
(((その言葉使い辞めてっ!)))
(その姿でその言葉使い・・・尊しっ!!)
アカはアカで、新たなる扉を開き始めていた。
「んー、じゃぁこれでどうだー」
ショウはそう言って、杖を更に3本具現化し、地面に転がった1本とともに技の力で杖を空中に浮遊させた。
「じゃ、行くよー」
ショウはそう言って一歩前へと踏み出し、それと同時にその姿が消えた。
「おごっ!!」
次の瞬間、そんな声と共に重清が吹き飛び、先程まで重清がいた場所には驚きの表情を浮かべるショウの姿があった。
「おぉー。この術、凄く速くなってるー」
自身のスピードに驚くショウの姿に、恒久とソウはそれ以上に驚愕していた。
先程まで悶絶していたアカさえも、そのスピードにただ口をあんぐりと開けていた。
ツネ「おいおい、これやべーんじゃねーの?」
アカ「ちょっとあんた達!ショウさんになんて術渡してんのよっ!」
ソウ「いや、考案者はシゲだよ?」
シゲ「痛ってぇ・・・・」
吹き飛んだ重清がそう言いながら立ち上がると、
ソウツネアカ「自業自得っ!!」
3人の容赦ない声が重清へとかけられる。
「えぇ〜」
重清がそう声を漏らしていると、
「じゃぁー、今度こそ始めるよー」
ショウがそう言って、空中の杖を自在に操りながら構えた。
「みんな、散ってっ!!」
そんなソウの言葉に、アカと恒久は素早く反応し、
「えっ、あっ!」
重清も一瞬遅れてその場を離れた。
ショウの四方を囲むように配置した一同に、
「最後くらい、ショウさんに勝つわよっ!!」
アカがそう声をかけると、
「「「おうっ!!!」」」
重清とソウ、恒久はそう答えて、構えるのであった。
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