第315話:お礼参り

「ショウさん!これ、俺達からです!」

シンはそう言って、ショウに大きな包みを手渡した。


「大きいねぇー。なんだろー?うわぁーーー!猫ちゃんのぬいぐるみだー!!」

包から巨大な猫のぬいぐるみを取り出したショウは、ぬいぐるみに顔を埋めた。


「シン、ケン、ノブ、ありがとー。ちょうど日曜日分の猫ちゃん抱きまくらが無かったんだー。これからは、この子に抱きついて日曜の夜を過ごすねー

・・・・・・・あっ」

ショウは言いながら、言葉を詰まらせた。


猫のぬいぐるみに理性を失っていたショウは、今更ながら自身がひた隠しにしていた(と、本人は思っていた)超猫好きな一面をさらけ出したことに赤面した。


本当に、色んな意味で今更なのだが。


(っていうか、最低でも6体は猫の抱きまくらがあるんだ)


男子一同が心の中でつっこんでいる中、茜だけは、


(もう!猫に抱きつくショウさん可愛すぎっ!私を抱きまくらにしてっ!!)


と、とんでもない事を考えていた。


そんな茜は気を取り直し、唯一ひとりで準備したショウへのプレゼントを差し出した。


「あの、シンさん達と比べると見劣りしちゃうかもしれないですけど・・・」


恐る恐る差し出されたプレゼントを受け取ったショウは、包みを開け、


「わぁー!猫ちゃんのハンカチだぁ!これなら毎日でも使っちゃうねー!」

そう言って満面の笑みを浮かべていた。


「そう言ってもらえると、嬉しいです!」

ショウにそう返して引き下がる茜を見た重清と聡太、そして恒久は、


(((あれ?)))


と、拍子抜けしたように茜に目を向けていた。

茜ならば必ず、このタイミングでショウに告白するだろうと思っていた重清達は、肩透かしを食らったように茜を見つめていた。


方や茜も、重清達のそんな視線から彼らが何を考えているのかを察し、話を逸らすように重清達に声をかけた。


「そ、それであんた達は何を準備したのよ」

茜の言葉に、話を逸らされた重清達は茜への追及を諦め、一瞬顔を見合わせてにやりと気持ち悪い笑みを茜に返した。


「何よ気持ち悪い」

茜がそう3人に返すと、


「へっへっへ~。ちゃんと準備してるって。でも、ここじゃさすがに渡せないんだよな」

代表して茜に返した重清は、言いながらちらりと部室に掛かる掛け軸へと目を向けた。


「ん?お前ら、あっちで渡したいのか?ま、そろそろ送別会も第2部に移っていい時間か。ショウさん、良いですか?」

シンが、そう言ってショウに目を向けると、


「うん、大丈夫だよー」

ショウはそう言ってシンに笑顔で返していた。

シン達にもらったぬいぐるみを抱きしめながら。


「「「「第2部??」」」」


そんななか重清達1年生は、シンの言葉に首をかしげていた。


約1名だけは、ぬいぐるみを抱きしめるショウに見とれていたが。


「あれ?言ってなかったか?」

「シン、言ってなかった」

「がっはっは!確かにこいつらには言っていなかったな!」


「いや、ケンもノブも、気付いてたんなら教えろよ!」


相変わらずな2年生トリオのやり取りを見つめながらも、重清達の頭の上にはハテナマークが浮かんだままであった。


「っと、悪ぃ。じゃぁ説明するか。向こうでな」

そう言って掛け軸を指すシンに重清達は頷き、忍者部一同は忍者部の部室へと移動を始めた。



「さて、と。じゃぁ第2部について説明する。が、その前にツネ。この学校、どう思う?」

「なんですか急に。どう思うって言われても・・・」


「じゃぁソウ」

「う~ん。良い学校だと思いますけど・・・」


「本当にそうか?シゲ、どうだ?」

「あっ!たまに変な風習が出てくる!」

重清が思い出したように言うと、


「正解だ」

重清の言葉に、シンはニヤリと笑い返した。


「2中では、何故だかおかしな風習がまかり通ってる。しかも、先輩達に有利なようにな」


「「「あー」」」


シンの言葉に、恒久とソウ、そしてアカが納得したように頷いていた。


「そこでこの忍者部では卒業式の日に、とあるイベントが行われることになったってわけだ」


「「「「とあるイベント??」」」」


「お礼参り」


重清達が首を傾げると、ケンがシンに代わって、ショウへと目を向けながら重清達へと答えた。


「おいケン!俺が説明してるだろ!?」

「シン、回りくどい」

「がっはっは!言えてるな!」


2年トリオがそう言ってじゃれ付き合っていると、


「お礼参りって・・・」

アカがそう言ってショウへと目を向ける。


「ん?あぁ。アカの言いたいことはわかる。俺達は別に、ショウさんに恨みがあるわけじゃない。それに、このお礼参りだって言ってみれば変な風習だしな」

シンはそう言いながら、ショウに笑いかけた。


「だねー。でもまぁー、お礼参りっていっても、学年ごとにまとまって僕と戦うだけだからねー。単純に手合わせだと思えば、いいと思うよー?」

「ショ、ショウさんがそう言うなら・・・」

ショウスマイルに負けたアカは、そう言って引き下がった。


「じゃ、話はまとまったし、早速やりましょうか」

シンは、ショウへと目を向けた。


「だねー」

そう言ってショウが立ち上がると、


「じゃぁその前に、ショウさんに俺達からのプレゼント渡そうぜ!」

恒久がそう言って立ち上がると、重清とソウも笑みを浮かべて立ち上がった。

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