第268話:コモド氏の子づくり

「死っ!?」

コモドドラゴンの言葉に、一同が驚きの声を上げた。


しかし智乃とロイだけは、驚くこともなくただじっと、コモドドラゴンを見つめていた。


『そこの具現獣2人はわかるようだな。我ら具現獣にとってもまた、多すぎる力は危険なのだ。だから我は、子を作ることにした』


「いや、また結構端折っちゃったな!」

恒久が、得意げな笑みを浮かべてコモドドラゴンを見つめていた。


『さっきと変らないではないか。まだまだだな』

「ちきしょぉ〜!!」

コモドドラゴンからの評価に、恒久は地面へと倒れ込み、声を上げて拳を地へと叩きつけていた。


(いや、だからこれなんなの?何見せられてんの?)


重清達は、そんな恒久の姿に呆れながらそう思っていた。


『まぁ、確かに今のは省略しすぎたがな。そこの具現獣よ。我らが何で構成されておるか知っているか?』

1人悔しがる恒久をそのままに、コモドドラゴンは玲央へと目を向けた。


「ん?忍力じゃねーのか?」

玲央は、倒れ込む恒久をツンツンしながら答えた。


『その通りだ。我らは、主の力で作られておる。

だから我は考えたのだ。我が身を蝕むこの有り余った力で、新たな具現獣ができぬか、とな』

「そ、そんなことが・・・具現獣が具現獣を具現化するなんて、聞いたこともない・・・」


「なんかもう、具現具現言い過ぎだよね」

「あー、うん。シゲ、もう少し黙ってて」

ボソリと言った重清に、聡太は目線も合わせず雑にそう返した。


「ソウが塩対応っ!!」

「ちょっとシゲ、うるさいっ!」

重清が拗ね始めるのと同時に響いた茜の叫びに、重清はシュンとしてそのまま恒久の横に倒れ込んだ。


2人の男子中学生が、地面でいじけ始めたのである。


その場の全員が、その相手をする面倒臭さから逃げ、コモドドラゴンの次の言葉を待っていた。


「でも、やらないよりはいいと思うわよ」

しかし言葉を発したのは、コモドドラゴンではなく智乃であった。


「智乃ちゃん、それどういうこと?」

茜が、智乃の顔を覗き込んだ。


「昔、平八に聞いたことがあるのよ。具現獣に許容量を超える忍力を大量に与えすぎた場合、その具現獣は弾け飛んでしまう、ってね。

今彼の中には、想像できない程の忍力が溜め込まれているわ。普通の具現獣とは比べられない程の、ね。

もしもそれが、弾けた場合、あの村もろとも、大爆発ね」


「「「「大爆発っ!?」」」」

ガク、聡太、茜、玲央が超えを揃えた。

ガクも充分、騒がしくなってきたのである。


「大爆発だってよ、ツネ。怖いね〜」

「いやシゲ、さすがにそれはリアクション薄すぎだろ」

いじけ組は、地面に寝そべったまま小声でそんなことを言い合っていた。


「して、勝算はあるのかのう?」

いじけ組を無視して、ロイがコモドドラゴンを見つめる。


『そればかりはやってみん事にはわからん。それでも、自分の意思で力を放出するのだ。大事にはならんさ』

コモドドラゴンは、ロイへとそう返し、一同を見渡した。


『まぁ、何か起こっても、主らがおればどうにかなるであろう?そのために立ち会ってもらいたいのだ』

コモドドラゴンの言葉に、一同はゴクリと喉を鳴らす。


「シゲ、ツネ。いい加減いじけるのはやめてシャンとして。流石にもう、ふざけてる場合じゃないよ」

聡太は、重清と恒久に目を向けて言った。


寝そべったまま恒久と目を合わせた重清は、立ち上がって背伸びをした。


「みたいだな。で、おれたちは何をすればいいんだ?」

そう言って目を向ける重清に、コモドドラゴンは頷いた。


『うむ。我はこれから、力を集中させる。主等には我を囲み、主等の力で我の力の暴発を防いで欲しい』

「暴発って・・・大事にはならないんじゃなかったの?」

茜は、焦り顔でコモドドラゴンを見る。


『あくまでも万が一に備えるためだ』

コモドドラゴンの言葉に頷いた茜の肩に、恒久がそっと手を添える。


「まっ、どうにかなんだろ」

「ふん。さっきまで不貞腐れてたくせに、えらく呑気なもんね。あと、肩に触れるのはちょっと馴れ馴れしい」

茜は、恒久にそう返して肩に触れる手を払い除けた。


「いや今のはひどくない!?俺、今ちょっとカッコ良かったじゃんか!」

「そう思ってる時点で、かっこ悪いよね」

「あぁ、今のはシゲに賛成かも」

茜に抗議の声を上げる恒久に、重清はそっと呟き、聡太もそれに同意して頷いていた。


「まったく。これからどうなるかもわからないのに、この子達は・・・」

「ほっほっほ。さすがは儂らの主と、その友じゃな」

「コイツら、ほんと緊張感がないよな」

呆れ顔で重清たちを見る智乃にロイが笑いながら答え、玲央も緊張感のない顔で笑いながら重清達を見ていた。


「なんというか・・・すみません、緊張感の無い奴らで」

『構わんさ。我も流石にどうなるかわからぬことをやろうとして、多少なりとも緊張しておったからな。これくらいがちょうど良い』

申し訳無さそうに頭を下げるガクに、コモドドラゴンは笑いかけて一同を見渡した。


『では皆、すまんが準備をしてくれ。始めるぞ』

コモドドラゴンのその言葉に、それまでのふざけた雰囲気は消え去り、一同はコモドドラゴンを取り囲むのであった。

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