第253話:重清達の作戦
ノリからの課題提示が行われてから数日後のある日。
チーノはその日、ずっと違和感を感じていた。
重清が、とにかく優しいのだ。
学校へ出かける前も、
「
と声をかけてきたし、雅宅で寛いでいるときも、授業中にも関わらず重清はチーノへと心を通じて話しかけてきた。
(チーノ、今何してるの?暇してない?大丈夫??)
と。
基本、大丈夫?をつけてくるあたり、まだまだ女性への心遣いに課題のある重清に、チーノは不信感を抱いていた。
(絶対に何か企んでいる)
と。
そんな想いを懐きつつ1日が過ぎ、その日の夜。
「みんな、ちょっとこっちに来て」
重清の言葉に、プレッソとロイがベッドへと上がり、チーノも渋々ながらそれに続いた。
「課題の事なんだけど・・・」
重清が、チーノをチラリと見ながら話し始めた。
「おれとプレッソ、それからロイで、男子の動向を探りたい。誰が誰を好きなのか、とか」
「ん?いいぞ」
「ふむ。面白そうじゃな」
プレッソとロイが、それぞれ頷いていると、
「それで、私には何をしろと?」
チーノがそう言って重清に目を向ける。
「あー、えっと、チーノには女子の動向を探って・・・もらえませんかね??」
重清は、顔色をうかがうようにチーノを見返して続ける。
「ロイはどうかわかんないけど、おれやプレッソじゃ、女子の『カッコいい』が本音かどうかなんて見分けられない。だから、同じ女子として、チーノにその役をやってほしい。んだけど・・・」
「なるほどね。それをお願いするために、今日一日私に変に気を使っていたのね」
チーノは呆れ声で重清へと返した。
「えっ、バレてたの!?」
「バレバレよ。重清、これからは、女性に気を使うなら『大丈夫?』は控えなさい。そう聞かずとも、大丈夫でないことを見極めてこそ男よ」
「え、ちょっとその辺詳しく―――あ、はい。そこはまぁ、気をつけます。それよりもチーノ、この案、どうかな?」
重清は脱線しようとして、直ぐに話を戻してチーノの顔を覗き込んだ。
「・・・・確かに、重清やプレッソでは女心は分からないでしょうね」
「じゃ、じゃぁ―――」
「でも嫌よ」
重清の言葉を遮って、チーノはきっぱりと言い切った。
「はぁ〜、やっぱりかぁ」
重清は、笑みを浮かべてチーノへと返した。
「えぇ。せっかく考えたのに、ごめんなさいね。
チーノはそう言って、ベッドに置かれた重清のスマホへと語りかけた。
『あれ?バレてたの?』
スマホから、聡太の声が聞こえてきた。
「もちろん。重清が、こんな案考えつくわけないもの。これは、あなたの案でしょ?」
『あははは。全部バレてたかぁ〜。さすがチーノ。ちなみになんでやってくれないのか、理由を聞いてもいい?』
「それはね、私が恋する乙女の味方だからよ。重清達の命の危険があれば別だけれど、さすがに今回は味方するわけにはいかないのよ。
乙女たちの恋を、邪魔なんてさせないわ」
チーノはそう言って微笑んだ。
「まぁ、ばあちゃんの修行1週間って、充分命の危機なんだけどね」
重清が、ボソリと呟き、ベッドへと倒れ込んだ。
「やっぱりダメだよねー。だからおれは、絶対チーノが断るって言ったじゃんか」
ベッドに寝転んだ重清が、聡太へ不満をぶつけた。
『シゲの言ったとおりだったね。あーあ、良い作戦だと思ったんだけどなぁ〜』
「ふふふ。作戦としては、悪くはなかったわよ?
さすがは、重清の司令塔ね」
「ちょ、チーノ!ソウは右腕なんだって!!」
『やった!チーノのお墨付きゲット〜』
重清の反論と、聡太の喜びの声を聞いていたロイが、同じく仲間外れにされているプレッソへと声をかけた。
「なんなんじゃ?司令塔とか右腕とか」
「ん?あー、なんかあの2人、いつもそれで言い合ってんだよ。まー、それも含めて、あいつらは仲良いから、テキトーに流しとけばいいよ」
「ふむ、そんなものか。しかし重清よ、結局その課題とかいうやつは、どうするんじゃ?」
ロイは、そう言って亀の首を伸ばして重清へと向いた。
「あー、どうする?おれの右腕?」
『そうだねー、シゲの司令塔としては、他に良い作戦も思いつかないし・・・ちなみに、ロイは女心に造詣は?』
「ほっほっほ。儂を誰だと思うておる。生まれて150年、雑賀本家の具現獣として生きた男ぞ?」
「おぉ、爺さんかっけーな!」
「ま、今は1番若い亀だけどな。でもロイ、だったら女心ってやつは・・・」
プレッソにつっこみつつ、重清はロイへと期待の眼差しを向ける。
「ふむ。女心など、どれだけ生きようとも男に理解出来るはずがないじゃろ?」
「じゃぁなんだったんだよ、さっきのかっこよさげなタメは!!」
重清はロイにつっこみつつ、頭を抱えた。
『クラスの女子に、頼ってみる?』
「いや、そもそもそんなこと頼れる程仲良い女子、いないよ」
聡太の提案に、重清が悲しい反論をする。
『えっ?村中さんとか、シゲに良く話しかけてるじゃん』
「そうか?でも、普通に考えて、いきなり『女心のこと教えて』とか、ひかれるだけじゃん」
『あー、確かに』
「だろ?あー、男子でもいいから、せめて情報通なやつとかいないかなぁ」
『うーん。正達も、そんなんじゃなさそうだもんねぇ・・・あっ!』
「ん?ソウ、何か良いアイデアでも思いついた?」
『シゲ、いるよ!情報通かどうかまではわかんないけど、どこにでも現れる神出鬼没の男子が1人!』
「へ?そんなやついたっけ――――あっ!!」
『思い出した?』
「『長宗我部氏!!!』」
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