第251話:久しぶりの課題
「うえっ!ただでさえ応援合戦の練習で精神すり減らされるのに、そのうえ課題かよぉ〜」
シンが、ため息交じりに隣のケンへと愚痴っていた。
しかしそれは、シンだけでなく、苦笑いを浮かべているショウを含めたその場の全員の総意でもあった。
その証拠に、それまで殆ど瀕死と言ってもおかしくない状態であった重清達も、ノリの宣言に気を落としていた。
「それで、どんな課題を?」
恐る恐る、ノブがノリへと聞くと、ノリはニヤリと笑って答えた。
「まぁ、そう慌てるな。もうすぐ麻耶も来るだろう。続きは向こうに行ってからだ」
そう言ってノリが部屋に掛かった掛け軸を指差してニヤニヤしていると、
「やっほぉ〜!あれ、なにこの空気?なんか、凄く淀んでる!!」
元気に部室へと入ってきた麻耶が、淀んだ空気を払いながら一同を見渡していた。
「さ、麻耶も来たことだし、移動移動♪」
そんな麻耶の言葉を無視して、ノリが元気よく掛け軸の向こうへと歩いていった。
シゲ「おれ、初めてノリさんに殺意覚えたかも」
ツネ「わかる。今あのテンション、マジで腹立つな」
ソウ「確かに、あれは気持ちの良いものではないね」
シゲ達3人が、掛け軸の向こうへと恨みがましい目を向けながらものそりと立ち上がり、そのままフラフラと掛け軸の方へと歩いていった。
シン「はぁ〜。俺らも行くか。ってか、そろそろ一回、ノリさんに夜襲でもかけていいかな?」
ノブ「ガッハッハ!やっちまうか!」
ケン「・・・賛成」
重清達に続くように、シン達3人もそう言いながら掛け軸へと向かった。
「え?なに?なにが起きたの!?」
1人置いていかれている麻耶が掛け軸へ向かう面々に目を向けながら首を傾げていると。
「はぁ〜。向こうに行けばわかるわ。行きましょ」
茜がため息交じりにそう言って、麻耶と連れ立って掛け軸の向こうへと歩いていった。
「いやー、みんな頼もしくなったねー」
最後に残ったショウが、笑ってそう言っていると、
「お主もなかなか良い性格をしとるのぉ」
ロイが小声で呟き、プレッソとチーノもショウの肩の上で視線をくみかわしてため息をついていた。
その後、麻耶を含めた全員が忍者部の部室へと集まったことを確認したノリは、再びニヤリと笑った。
「で、さっきの話の続きだ。今回の課題だが、お前らには、体育祭が始まる前までに、くっつきそうなカップルを洗い出してもらう!」
「は??」
部室に、一同のそんな声が重なった。
「あの、ちょっと何言ってるかわかんないんですけど」
ノリのヘラヘラした顔に若干の苛立ちを感じつつ、聡太が小さく手を上げた。
「おーおー、尖ってんなぁー!」
そう言ってニヤニヤと笑っているノリに、麻耶と具現獣ズを除いた全員が苛立ちの表情を浮かべていた。
「お前ら、めちゃくちゃ怖いぞ!」
その場のほぼ全員から殺意のこもった目を向けられたノリは、冷や汗をかきながら話し始めた。
「体育祭なんて大きな行事の時はなぁ、浮ついた奴らが必ず出てくるもんなんだよ。俺は教師として、そういう奴らを見逃せないんだ!
だからお前らからの報告を受けて、実際に付き合いそうな奴らがいたら・・・・」
そこまで言って、確固たる信念の宿る瞳で部室を見回したノリは、
「俺が全てぶっ潰す!!」
そう、宣言した。
(めちゃめちゃ私怨入ってんじゃねーかよ!)
忍者部一同が、揃って心の中でつっこんだ。
(あ、でも、おれらが報告しなきゃいいだけじゃん!)
ふと気付いた重清が、そう思って頷いていると、
「あー、ちなみに、報告しないとか、嘘の報告したらもれなく罰な。
ちなみに、今回の罰は『1週間、異性と会話できなくなる』だ。もちろん、家族と教師は除いてな。
特に重清と恒久!お前らは契約で縛れねーから、課題クリアできなかった時は雅様の修行1週間な」
「「「はぁ!?」」」
ノリの情け容赦無い言葉に、重清と恒久、そしてプレッソが声を上げた。
「いっ、1週間て!そこまでやるかよ!!」
恒久が抗議の為に立ち上がるも、
「俺は、この課題に命かけてんだよっ!!」
ノリは、熱い拳を高らかに掲げてそれへと反論した。
「マジかよぉ〜」
そんなノリの様子に、重清が絶望していると、
「そもそもなぁ、これは重清!お前のせいなんだぞ!?」
ノリは怒りの表情で重清を睨みつけた。
「へ?おれ!?」
「お前だよ!俺の目の前でイチャイチャしやがって!!お前が平八様の孫でなく、しかも相手が本家の人間じゃなけりゃ、今頃お前に当たり散らしてたたところだよ!!」
(うわぁ〜)
ノリの言葉に、今度は麻耶や具現獣ズも含めた全員が心の中で声を漏らしていた。
それと同時に、課題を課された忍者部一同は、重清にも殺意のこもった目を向け始めていた。
「えっ、ちょ!おれ悪くないよね!?
やめて!みんなそんな目で見ないで!!
どう考えてもノリさんの職権乱用だよね!?」
そんな重清の悲しい抗議だけが、部室に響くのであった。
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