第207話:雑賀重清 対 雑賀美影 決着?
「大忍弾の術だぁーーーっ!」
そう叫んだ重清は、そのまま指先を向け、続けた。
「ドカンっ!!」
((発射音もダセぇ!!))
再びつっこんでいるプレッソとチーノの言葉に若干傷ついている重清の忍力が、重清の指先からサッカーボール大の忍力の塊となり、重清の声とともに美影に向って飛び出した。
銃を使わない状態の弾丸の術よりも少し遅めのその『大忍弾』は、まっすぐに美影に向って進んでいった。
「こここここんなもの、避けるまでもないわ!!」
相変わらず焦り声の美影は、自身に向かって来る忍力の塊に耐えるべく、忍力を全開にして身構えた。
大忍弾が美影の目前へと迫った瞬間、美影の視界に黄色い閃光が迸った。
その直後、美影の目の前に1人の男が姿を現した。
一瞬にして美影の前に現れた男の姿に、重清は瞬時に思った。
(うわぁ)
と。
重清の視線の先にいるその男は、いわゆる忍者装束を身に纏っていた。
重清の思う『これぞ忍者』ってくらいに忍者っぽい装束である。
ただ1点、重清の思っていたのとは似ても似つかないところが、その男の纏う装束にはあった。
重清の中では、忍者装束と言えば黒だった。
闇に生き、闇とともに死す、それが忍者。
まさに中二病的な思想の中一男子、重清にとって、男の姿はまさに理想的であった。
忍者らしくない、あまりにも目立つ『黄色』という色を除いて。
(忍者っぽい!けどそうじゃない!!)
一瞬にしてテンションがマックスからミニマムへと上下した重清は身動きも取れず、ただ男の動向を見つめることしかできなかった。
美影の前に現れた瞬間に重清複雑な思いを抱かせたその男は、迫る大忍弾を見つめ、こともなげに重清に向って蹴り返した。
「うそっ!?」
重清が「ドカン」した時よりも速いスピードで蹴り返された大忍弾に、重清は声をあげつつ慌てて防御に徹しようとする。
(やっべ、忍力結構使っちゃってる!)
焦りながらも重清は、残り少ない忍力を腕へと集め、自身が放った大忍弾を受け止めようとした。
「へ??」
しかし大忍弾は、まるでそこに重清などいないかのようにスッと重清をすり抜け、忘れられていたかのように黙って重清たちを観戦していたショウ達の方へと向かって行った。
「あら、こっちに来るじゃない。重清の新しい術、私達だったら止められるんじゃない?」
「どうだろうねー。あれ、かなり忍力込められてるみたいだよー」
大忍弾の前に、麻耶とショウが立ちはだかった。
「やる気出してるとこ悪ぃが、あれはお前らにはどうにもできねーよ」
麻耶たちの背後から聞こえるノリの言葉に、2人はむっとしながらも笑いを浮かべ、構えた。
雷脚の術を使った麻耶の蹴りと、その直後に
しかし、麻耶の脚と水砲をすり抜けた大忍弾は、慌てて防御に構えたショウすらもすり抜けて、背後のノリへと迫る。
「はぁーーーーーー」
深いため息の後、ノリは両手を前へと突き出し、大忍弾を
そのまま両掌で挟み込むように抑えた大忍弾を、グッと力を入れたノリが潰し、大忍弾は霧散していった。
「覚えておけ。今のが本来の、百発百中の術の力だ」
ノリは、ショウ達に目を向けてそう言った。
その時。
「甲賀ノリ!!!!」
黄色い男が、怒鳴り声をあげた。
「貴様、何故介入しなかった!!美影様にお怪我を負わせるところだったのだぞ!!」
男の言葉に、ノリは離れた男に聞こえるか聞こえないかくらいの声で答える。
「申し訳ございませーん。初めて見る技でしたので、威力がわかりませんでした!」
なんともやる気のないノリの言葉に、男は黄色い装束に覆われた顔に青筋を浮かべた。
「ちっ。甲賀平八の弟子が、粋がりおって」
「すみませーーーん、
ノリに聞こえないほどの声で呟いた男の言葉に、わざとらしく間延びした声でノリが反論した。
「黙れ!!たかが契約忍者が、雑賀の名を名乗るなど、この私が認めぬわ!!」
「た、たかが?」
男の言葉に、忍力切れに近いフラフラの重清が反応した。
「じ、じいちゃんをそんな風に言わないでもらえませんかね、黄色いおっちゃん」
「き、黄色いおっちゃんだと!?貴様、雑賀本家の一番弟子であるこの私に、なんてことを言うのだ!!」
重清の言葉に、男が怒りの表情を浮かべるのと同時に、美影は驚きの色を浮かべて重清に視線を向けていた。
「いや、そんなの知らないし。それよりじいちゃんに謝って―――」
「ちょっと末席!あんた、雑賀平八の、雑賀雅様の孫なの!?」
美影が、重清につかみかかった。
「えっ、いや、今そこ!?ちょ、やめて、首もげる!」
美影に首をガクンガクンされながら重清が美影に返していると、
「おい貴様!美影様にタメ口とは、どういう了見だ!!!」
黄色いおっちゃんが重清に対して怒鳴り始めた。
なんかもう、その場はただ、わちゃわちゃするのであった。
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