第193話:説得と納得

恒久が頷いたのを確認したソウは、再び口を開いた。


「まず、アカに充希って人をお願いしたい理由なんだけど。アカ、あの人が、その・・・本性を表したとき、ぼくらよりもショック受けてなかった?」

「う、そりゃぁ、まぁ・・・見た目も良いし、初めは物腰も柔らかかったから、アリかなぁとか思ってたからね。ま、シスコンに興味は無いから、もうナシだけど」

アカが、少し顔を赤らめてそう返した。


「あははは、あれは強烈だったもんね。でも、だからこそぼくは、アカにあの人の相手をして欲しいんだ。なんていうか、思いっきり見返してほしい、みたいな?」

「いや、それだと、わたしの方がフラれちゃってるみたいじゃない」


「あ、そうか」

「でもまぁ、言いたいことはわかったわ。元雑賀本家次期当主だったみーちゃんの弟子としても、アイツには一泡吹かせたくなってるし」


「ふふふ。ってことでアカ、よろしくね」

「任せなさいっ!」


「それで、あの隠って人とは、ぼくがやる。ツネは、見学だよ」

「で、その理由は?」

不貞腐れたように、恒久がソウに続きを促した。


「ツネ、この前ぼく等の前で言ったツネの覚悟、何だった?」

「ん?あぁ、忍者部の部長になるっていう―――」


「いやそっちじゃねーよっ!」

ソウが、普段の恒久を真似てつっこんだ。


「「・・・・・・」」


「あれ?」

ソウは、2人の反応に顔を真っ赤にしていた。


「まだまだだな、ソウ」

「ソウ、あんまり無理しないでね」


「・・・とりあえず、今のは忘れて。

で、ツネの覚悟!『協会のトップに立つ』だったでしょ?」

「あぁ、そっちな。まぁ、そう言ったな」


「ぼくも、どうすれば協会のトップに立てるかなんてわかんないよ?でも、今あぁいう偉そうな人と事を荒立てるのは、ツネにとって良いことではないと思うんだ」

「・・・・・・なるほどな。流石、俺等の部長は頼りになるな」

「でしょ?あんたじゃどう頑張っても、ソウには勝てないわよ」


「まだぼくは、部長のこと認めてないからね?」

ソウは、困ったように2人を見つめていた。


「ま、ソウがそこまで考えてくれてるんなら、今回はおとなしく身を引いてやるよ。でもな、どうせやるなら2人とも、絶対に勝てよなっ!」

そう言って恒久は2人にニカッと笑って、事を見守るノリ達の元へと歩いていった。


「・・・ツネ、意外と素直に引き下がったわね」

「それだけ、ツネも本気で先のことを考えてるってことだよ。それよりもアカ、巻き込んじゃってごめんね」


「気にしないで。あの充希って人に幻滅したのは本当だし。それよりも、ソウはよかったの?あなた、あんまり戦うの好きじゃないでしょ?しかも、あんなヘナっヘナのやつと」

そう言ってアカは、充希の隣に立つ隠へと目を向けた。


「なんとなく、彼とは仲良くなれそうな気がしててね。それに・・・いや、なんでもない」

「なによ、気になるわね」


「ごめんね」

「ま、いいわ。1年の中で1番強いあんたなら、あんな奴楽勝でしょ」


「いや、絶対にぼくは1番弱いでしょ」

「あんた、そんな風に思ってたの?私の中では、あんたが1番よ。わたし達3人と比べても、ソウは頭も良いし。1人でバンバン術覚えてるし」


「いや、そんなには覚えてないから」

「それでもよ。ソウとシゲとツネなら、断然わたしはソウ押しよ」


「押しって。やめてよ」

「何顔を赤くしてんのよ。もしかして、あんたもわたしに惚れちゃった?ごめんね、わたし、自分より背の高い男がタイプなの」


「はぁ。なんでぼく、勝手にフラれちゃってるのさ。って、なんかぼくら、シゲみたいになっちゃってるよ?」

「あっ、ホントだ。脱線しまくり!」


「ほら、あの人も怒ってる」

そう言って目を向けるソウの視線の先では、


「おいお前ら!いつまで待たせるんだっ!!」

充希が、2人に大声で声をかけていた。


その隣では、隠が申し訳無さそうに佇んでいた。


「じゃぁ、雑賀本家様もお待ちのようだし、行きましょうか」

「だね。お互い、頑張ろ」


そう言って2人は拳を合わせ、充希と隠の元へと歩き出していったのであった。

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