第194話:甲賀アカ 対 雑賀充希

「ごめんなさい、お待たせして」

「いや、構わないよ」

充希の元へとやって来たアカがペコリと頭を下げると、充希はショウに負けないほどの素敵スマイルをアカへと返した、


(はぁ〜。これでアレシスコンがなければ、完璧なのになぁ)

アカは、その笑顔に残念な気持ちをつのらせた。


「おや、浮かない顔だね。安心していいよ?すぐに終わらせるから」

(あの余裕そうな表情、カッコいいはずなのにただただ腹立つわっ!)

心の中で悪態をつきながらも、アカは充希に声をかける。


「あのー、やっぱり、わたしも敬語使わないと、ダメ、ですか?わたし達同じクラスだし、その、なんか・・・」

「え?君たち契約忍者が、本家の血をひく僕等に敬語を使うのは、当たり前の事なんじゃないの?」

爽やかスマイルを浮かべ、指を顎に当てて首を傾げながらそう言う充希を見たアカは、


(うわっ、爽やかな笑顔のうえに可愛い。じゃない!!前言撤回!アレシスコンだけじゃない。この人、素でわたし達を見下してる!!こんな奴、こっちから願い下げだわ!!!)

頭の中で完全に充希を『ナシ』判定にしたのであった。


(まぁ、シゲと同じで自分の立場なんてどうでもいいんだけど、師匠でもあるみーちゃんの立場が悪くなるのは嫌だし、仕方ないわね)

そう諦めたアカは、


「そうですよね、失礼しました!じゃぁ早速、いかせていただきます!」

「あははは、元気だねぇ。じゃ、雑賀本家当主、雑賀六兵衛の孫にして弟子、雑賀充希、いくよ!」

そう言った充希が、スリングショットを具現化して構えると、


「みーちゃんの弟子、甲賀アカ!いきます!」

アカもそう返して火の鎧を全身に纏った。


「ぷっ!君、師を『みーちゃん』だなんて呼んでいるのかい?なんてヌルい師弟関係なんだ!」

充希は馬鹿にしたように言いながら、スリングショットをアカへと向けた。


「残念だったね。君ほ僕と相性が悪かったみたいだ。申し訳ないけど、すぐに終わらせるよ」

その言葉と共に充希は、


「水弾の術!」

そう叫んでスリングショットから水の弾をアカへと発射した。


(くぅっ!水の属性ね。確かに、相性は良くはないわね。でも、そんなもん、当たらなきゃいいだけでしょ!!)

アカは自身に迫る水弾を避け、充希に向かって走り出した。


それと同時に、アカが避けた水弾が弧を描き、アカの背へと直撃した。


「がっ!」

アカは声を漏らし、自身の前に進む力と背後からの攻撃によってそのまま前へと倒れこんだ。


「あはははは!雑賀家は技の力に優れた家系。一度避けたくらいで、油断してもらっては困るよ!」

そう大笑いする充希の視線の先にいたアカが、すっと立ち上がった。


(・・・・・・思ったよりもダメージがない。もしかして、術の練度が低いのかしら?)


アカは、無言でその場に立ち、先程のダメージの影響を確かめるかのように腕を回していた。


「おや、あまり効いていないみたいだね。どうやら僕が、無意識に力を抑えてしまったようだ!

じゃないと、『みーちゃん』なんて呼ぶことを許すようなバカな師の元にいるヤツを、僕が一発で倒せないわけないからね!」


そう言って充希は、1人笑っていた。


「・・・にしたわね」

そんな充希の言葉に、アカが呟いた。


「ん?どうしたんだい?よく聞こえなかったよ?」


「あんた今、馬鹿にしたわね!?わたしの尊敬する、そしていつか超えるべき師、みーちゃんを、雑賀雅を!!!」

「なっ!?雑賀雅だと!?」


アカの言葉に驚愕の表情を浮かべる充希に、アカが再び充希に向かって走りだした。


「くっ!ふざけたことばかり言わないでもらいたいね!雑賀雅様は、誰も弟子を取らないはずだ!!

もしも雑賀雅様が弟子をとるとしたら、姉上以外には考えられないんだぁ!!!」

そう言って充希は、スリングショットを構える。


「水弾の術!氷弾の術!!」


いくつもの水と氷の弾が、アカへと襲い掛かった。


アカは自身の身を包む火の鎧に忍力を込め、さらに炎拳の術を発動して手甲に炎を灯して迫る水と氷の弾を


そのまま次々に2種類の弾を撃ち落としているアカの姿に、充希はしばし呆然とそれを眺めていた。


「ば、バカな。何故水の術を火の術で・・・・」


「あんたの術、練度低すぎ」

「なっ!?」


突然背後から聞こえた声に声を漏らして振り向いた直後、充希の腹部に衝撃が走り、そのまま充希はその場に膝をついた。


意識が朦朧としていく中、充希は目の前に立つアカを見上げた。


「な、ど、どうして・・・」


「変り身の術よ。元々は3メートルくらいの範囲しか移動できなかったけど、みーちゃんの、雑賀雅の修行で、範囲が一気に伸びちゃったの」


「ま、まさか本当に、雑賀雅と?」

「だからそう言っているでしょ?」


そう言って火の鎧を全身に纏いながら髪をかき上げるアカの姿に充希は、


「う、美しい・・・」

呻くように言葉を残して、意識を沈めたのだった。



--------

あとがき


もうすぐ200話!

誰も求めていない『記念対談』、次は誰にしよう。

分かってます、いないと分かってはいますが、それでも言わせてください。


「リクエスト、お待ちしています」

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