エピローグ
「いや~、なんて言うか・・・雅さんと平八さんて、やっぱ凄いんだな」
智乃の話を聞いていた恒久が、呟いた。
「ほんとだね。でも、これでノリさんの理想の出会い、わかったね。それは、結婚も諦めちゃうよね」
聡太が言うと、3人とスマホの向こうの茜が頷きあった。
「ノリさん、喫茶店での出会いに憧れてるんだな」
「「「『え??』」」」
重清の呟きに、智乃を含めたその場にいる全員が、驚愕の目で重清を見た。
ソウ「あー。久々に出ちゃったね、シゲのバカが」
ツネ「・・・だな。まさかここで出るとは思わなかったぞ」
アカ『あんた、一体何を聞いてたのよ!?』
チノ「重清。あなたって子は・・・」
「え?違うの!?」
重清が慌てたように周りを見渡していた。
「シゲ、よく考えてみて。喫茶店での出会いなんて、そんなに難易度高くないでしょ?」
聡太が、子どもに言い聞かせるように言うと、
「いや、女子は喫茶店なんかより、オシャレなカフェに行きたがるのかと思って」
と、真面目な顔で重清が答えた。
「いや、納得の仕方が特殊だなおい!」
久々の、恒久のつっこみが炸裂する。
『まったく。あんな素敵な2人から、どうしてこんなバカが生まれてくるのかしらね』
「いやおれ、じいちゃんたちの子どもじゃないし」
『そんなことを言ってんじゃないわよっ!!いい、シゲ。ノリさんはね、自分の命を狙う相手と、結婚したいのよっ!』
「いやいやいや。そんなん、ムリゲーじゃん!」
「「『だからそう言ってんだよっ!!』」」
茜達3人が、一斉に重清へとつっこんだ。
なお智乃は、重清のバカさ加減に若干呆れつつ、頭を抱えていた。
「え〜、マジでか〜。でも、それだったら、リア充嫌いなのも納得は出来るか・・・」
と、重清は1人、やっとのことで状況を理解して納得していた。
「はぁ。それにしても、平八さんって、協会の会長にまでなってたんだね。ツネ、早速、目標ができたね」
聡太が、ニヤニヤして恒久を見る。
「ソウ、お前の言いたいことは良くわかる。今の話聞くだけでも、このバカのじいさんがとんでもないってことは分かった。そんな人の後を目指すなんて、今の俺には無理だってこともな。
でもな、一度決めちまったんだ。もう今さら、『やっぱやーめた』ってわけにもいかねーだろ?」
『あら、ツネがらしくないこと言ってるわね』
「うるせーよ。俺だって少しは―――」
「っていうかそんなことよりさ」
重清が、恒久の言葉を遮って智乃に目を向けた。
「チーノって、シロの時、じいちゃんのこと好きだったの?」
「いや今かよ!確かに気になるけど!!今は俺がちょっとカッコつける場面じゃねーかよっ!!」
恒久が重清につっこむも、
「実はぼくも、それはちょっと気になってた」
『私も、ずっと気になってたのよね~』
聡太と茜はそう言って興味津々で智乃を見つめていた。
「えぇ。そうよ。もう、昔の話だけどね」
智乃はそんな聡太たちにあっけらかんとそう答えた。
『智乃ちゃん、そんなに簡単に言っちゃって良かったの?』
「えぇ。この話をするって言ったときから、そのことを隠すつもりはなかったもの」
「まぁ、シゲが気づくくらいわかりやすかったからね」
「あれソウ。おれそんなに鈍感ではないぞ?」
「鈍感だよ!お前はまごうことなきキングオブ鈍感だよ!特に、場の空気に関してはもう目も当てられねーよ!返せよ、俺の『ちょっと大人な恒久アピール』の時間をっ!!」
アカ『え、ちょっとツネ。そんなの誰にアピールしようとしてたのよ。まさか、わたしじゃないでしょうね。やめてよね、気持ち悪い』
ツネ「気持ち悪いって言っちゃったよ!?え、ちょ、ひどくない!?」
シゲ「ねえソウ!おれそんなに鈍感じゃないよね!?」
ソウ「・・・智乃、なんかごめんね、智乃の話が逸れちゃって」
チノ「いいのよ。話が逸れるのは、昔から慣れているから」
智乃がそう言って、聡太に笑いかけた。
鈴木家の夜は、こうして更けていったのであった。
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