エピローグ

『とまぁ、これがノリさんの中学生時代の話だ』

話し終わった公弘が、スマホ越しに重清達に言った。


「ノリさんも、苦労してんだな」

恒久が、ボソリと呟いた。


「っていうかキミ兄ちゃん、よくそんな本持ってたよね」

祖父がわざわざ自費で出版したものを『そんな本』呼ばわりしつつ、重清がスマホの向こうの公弘へと、呆れたような声をかけると、公弘の笑い声がスマホから響いてきた。


「言っておくけど、別にノリさんの過去に興味があったわけじゃないんだぞ?この本な、付録としてじいちゃんの教育論がガッツリ載ってるんだよ。俺の目的はそっち」

「あー、キミ兄ちゃん、教師目指してんだもんね」


「まぁな。っていうか、まさにもうすぐ教員採用試験目前のこの大事な時期に、こんな話させるためにわざわざ俺の時間を取るなんて、どう落とし前つけるつもりなのかな、重清君?」

「・・・あ。や、やだなー。キミ兄ちゃんなら絶対受かるって信じてるからこそ、だよ」


「嘘つけ。今思いっきり『あ』って言ってただろ。ま、いいや。俺はそろそろ勉強に戻るから、切るぞー。重清も、みんなも、ちゃんと勉強するんだぞー」

そう言って、公弘は電話を切るのであった。


「口うるさい兄ですみませんねぇ」

重清が、聡太達に苦笑いを見せる。


『先生目指してるんなら、しょうがないんじゃない?それに、夢に向かって頑張ってる公弘さん、素敵じゃない』

「ま、まさか茜、キミ兄ちゃん狙ってる!?」


『んー、素敵だとは思うけど、タイプじゃないかなぁ』

何故か知らぬ間にフラレている、公弘なのである。


「でも、公弘さんが教師になって忍者部の顧問やったら、その中学凄いことになりそうだね」

「そっか。ソウはキミ兄ちゃんから修行つけてもらってたんだもんな。教え方、上手かっただろ?」


「うん。公弘さんのお陰で、ぼくは2つ目の属性を使えるようになったからね」

聡太が笑っていると、


真剣な顔をした恒久がその場を静まらせた。


「俺達も、ちゃんと目標持って勉強、しなくちゃいけねーのかな」


「「『・・・・・』」」


「はぁ〜〜〜。なんでこういう楽しい場で、そんなこと言うかねー」

重清がそう言うと、一同のため息が重なるのであった。

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