第161話:一方の重清達は
聡太が黒服の男の1人から逃げた頃よりしばらく前。
ちょうど重清が聡太と別れて少し経った頃、重清は猫銃(にゃんじゅう)・マキネッタとなったプレッソを構え、ひたすら撃っていた。
「ちょっ、きりが無いんですけどっ!!」
「重清っ!頑張れっ!!」
「いいなぁプレッソは楽でっ!ていうか、撃ってる時に喋ったら舌噛むぞ!」
「いやマキネッタのどこに口と舌があるんだよっ!」
「えっ!?じゃぁどこで喋ってるの!?」
「それはあれだ・・・なんか喋れてるんだよっ!!」
なんか意外と余裕そうである。
そんな会話をしながらも重清は、迫りくる動物達を撃ち続けていた。
ちょうど、ゴリラ・ラッコ・コアラの順に。
「何でわざわざしりとりの順に撃ってんだよっ!」
「いやたまたまだって!っていうかもう無理!いくら具現獣でも、動物撃つの精神的にキツいっ!!」
そう言いながら重清は、ラクダ・ダチョウ・ウォンバットを撃っていく。
「いや重清、お前絶対わざとだろ!?しかもキツいって言いながら、比較的可愛い奴らも撃ってんじゃねーかよっ!」
「いやマジで違うんだって!その順番で襲って来るんだから仕方ないじゃんかよっ!
ソウ!早くノリさん呼んできてくれよぉ〜〜!」
「甲賀ソウなら、来ないわよ?」
重清が叫びながら発砲していると、動物達の奥から女の声が聞こえてきた。
叫びながら発砲。
字面だけ見たら重清は完全に危ないヤツである。
そんなことはさておき。
「だ、誰!?」
重清が声のする方へ目を向けると、木の陰から1人女が姿を現した。
黒いチャイナドレスを身に纏うその女は、足元の切れ目から見せる白い足と、ハート型に空いている胸元から2つの巨大な脂肪の塊によって出来た谷間を覗かせて、妖艶に微笑んでいた。
「エッロっ!!」
女の登場に、重清はつい声を漏らした。
初対面の女性に、それはあまりにも失礼な発言ではないだろうか。
しかし対する女は自身のエロさを自覚しているのか、その言葉に嬉しそうに微笑んでいるようであった。
「重清。最初に会った時のチーノと、どっちがエロいんだ?」
「えっと・・・うん。エロ姉ちゃんバージョンのチーノの方が格段にエロかったね。」
「なっ!?」
マキネッタ状態のプレッソと重清の会話に、女がそれまで浮かべていた笑みを歪めていると。
「チーノって、こいつのことかなぁ〜?」
女の背後から別の声が聞こえてきた。
そのまま女の隣へと歩いて行った声の主である男は20代後半に見え、全身黒で統一した服に身をまとい、同じく黒い長髪を後ろで1つにまとめ、女の隣に佇んでいた。
その男は以前、芦田優大をいじめていた元忍者、近藤浩介に接触して来た男であったが、もちろんそんなことを知らない重清は、男の手元を見て叫んだ。
「チーノっ!!」
「いくらあの雑賀平八の元具現獣といっても、こんなに力を無くしてしまっては僕の相手にならないよねぇ〜。」
男はそう言って、ボロボロになったチーノを無造作に女の前へと投げ出した。
「こんな猫がっ!ワタシよりもエロいですってぇ!?」
目の前に放り投げられたプレッソを、女はそう言って蹴りつける。
「だ、大丈夫か、チーノ!」
蹴り飛ばされたチーノを受け取った重清がそう声をかけると、
「重清、ゴメン。アケ達に会う前に、やられちゃった。」
チーノは弱々しく、申し訳無さそうに言っていた。
「んなこと気にすんなっ!それよりチーノ、一回戻れ。ついでにプレッソもだ!
全力で忍力込めるぞっ!」
そう言うと重清は、プレッソとチーノを自身へと戻した。
(重清、具現化するときに、私には雷、プレッソには金の忍力を注いでちょうだい。)
(この土壇場で、またいきなりな注文だなっ!やったことないけど、やってみる!)
チーノに答えた重清は、再びプレッソとチーノを具現化する。
そして具現化されるプレッソとチーノ。
プレッソは白く光る忍力を全身に纏い、チーノは白い雷を全身から放出し、重清の前に立っていた。
「お、出来た!2人ともカッコいいじゃん!」
そう言って重清がプレッソ達に駆け寄ろうとすると、
「重清。オイラには近づかない方がいいぜ。今のオイラは、触れるもの皆傷つけちゃうぜ!」
「いや中二かよっ!あ、それだとおれより年上になるか。」
「2人とも、無駄口はそこまでよ。あちらはずいぶんお待ちみたいよ。」
「なんでワタシが、待たなくてはいけないのよ!?ワタシは今、もの凄くイライラしているのよ!?」
「まぁまぁ、そう言わないでくださいよぉ~。あなたの方がエロいですからぁ~。」
「そ、そう?そんなに言うんならまぁ、少しくらい待ってあげてもいいわね。」
(本当にチョロい人で助かるよぉ~。でも実際、あの猫は確かにエロいねぇ~。雑賀重清の言っている『エロ姉ちゃんバージョン』、是非とも見てみたいものだねぇ~)
男は盛大に女をヨイショしながら、ちらりとチーノに目を向けていた。
「なんか、あっちはあっちで盛り上がってない?」
「いや、盛り上がってるっていうより、男の方が思いっきり持ち上げてるよな。」
「なんだか、もの凄~くいやらしい視線を感じるわ。この感覚、恒久に勝るとも劣らないわ。」
若干恒久がディスられた気もするが、3人がそう言いあっていると、チーノにいやらしい視線を送った主が、プレッソとチーノの変化に気づく。
「おやぁ、いつの間にか準備が整ったようですよぉ~。」
「やっとね。さぁ、やるわよ。ワタシは、あのチーノって猫とやらせてもらうわよ!」
「構いませんよぉ~。では僕が、雑賀重清の相手をしますので、もう1匹の猫の相手は、動物たちにお願いできますかぁ~?」
「しょうがないわね。お前たち!お前たちはあの白く光る黒猫の相手をなさい!」
女がそう言って動物たちに声をかけると、動物たちはプレッソ目掛けて襲い掛かっていった。
「なんか、勝手に相手が決められちゃったぞ。しょうがない!プレッソ、チーノ!ノリさん達が来てくれるのを信じて、各自全力で行くぞ!!あ、でも絶対に無理はするなよ!それと、おれがやばくなったら助け――――—―」
重清が話している最中に押し寄せる動物達の足音に、重清の声はかき消されるのであった。
「「気合い入れが長い!」」
プレッソとチーノはそうつっこんで、各々の相手に構えるのであった。
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