第162話:プレッソ 対 アニマル軍団、チーノ 対 エロ女

「お前らの相手はオイラだってよ!さっきまでは銃だったけど、今のオイラは刃のように―――」

動物達に向かってプレッソが叫んでいると、目の前の虎がそれを無視して掴みかかってきた。


「っ!人の話は最後まで聞けよっ!まぁ、オイラは猫だけど。」

そんな虎を爪で切り裂き、霧散していく虎にプレッソは呟くように言った。


(それにしてもこいつら。本当に具現獣か?あいつらの話しぶりだと、あのエロ女が具現者っぽいけど・・・)


「おいお前ら!オイラの話、聞こえてるか!?」

プレッソは、襲いかかってくる動物たちの攻撃を避け、時には反撃しながらそう動物たちに声をかける。


「・・・・・・・・」


しかし目の前の動物たちは、その全てがプレッソの言葉には全く反応を見せず、生気のない目で、ただ女の命令に従うようにプレッソを襲い続けていた。


「こいつら、本当にオイラと同じ具現獣なのか?」

プレッソは、そう独り言のように呟き、諦めたようにその爪を振るい続けた。


「あぁ!マジできりが無いぜ!なんかいい方法は・・・おっ。」


そこまで呟いてピンときちゃったプレッソは、自身の尻尾に金の忍力を集中させ、その忍力を心の力へと変換し、尻尾を覆うような刃の幻を作った。


更にその刃を実体化させ、プレッソの尻尾は1つの実体を持った刃となった。

同時に自身の爪を金の忍力で強化し、プレッソはその場で飛び上がった。


「いっくぞーーー!」


そのままその場で回転し始めたプレッソは、そう言って自身を技の力で操り、動物たちへと向かっていった。


それはまるで、ケンが刀を回転ノコギリのように操っているのと同じ技のようであった。

いわゆる、パクリである。


「オイラの新技!名付けて、『回転猫切(かいてんネコギリ)』だぁ!!」

プレッソはそう言いながら、次々とその場の動物たちを切り裂いていった。


プレッソの名付けのセンスは、重清譲りのようである。

しかも、人の技をパクっておいて堂々と名前まで付けているプレッソなのである。


それはさておき。


その場にいる動物たちが全て霧散して消滅するのを確認したプレッソは、回転を止めて辺りを見渡して・・・


「気持ち悪い!!」


酔っていた。


酒にでも自分にでもなく、もちろん回転に。


「でもなんとか、全部倒せた―――」

と、プレッソが言っているそばから、再び動物たちがどこからか現れてくる。


プレッソがチラリと、チーノと戦っている女を恨めしそうに見ると、女はそれに気づいたのかプレッソに対してウインクを返してきた。


「むかつくっ!あのエロ女スゲーむかつく!!チーノやっちまえっ!!」

プレッソは大声をでチーノを応援し、諦めたようにため息をついた。


「あぁ!わかったよ!やればいいんだろやれば!!そして、もっと回ればいいんだろ!?

いいよもう!吐きながらでも回り続けてやるよっ!!

こうなったらなぁ、オイラの忍力が尽きるか、あのエロ女の忍力が尽きるかだよ!!」


ヤケになったプレッソは、動物たちに向かって叫ぶ。


しかし動物たちは、そんなプレッソの言葉には全く反応せず、ただプレッソ目掛けて向かってくるのであった。


(あぁ!意識の無いやつらを倒し続けるの、マジで気分悪ぃ!!チーノ、さっさとそのエロ女を倒してくれっ!)


プレッソは心の中でそう祈りつつ、再び構えるのであった。



そんなプレッソに祈られたチーノは、エロ女と激しい攻防を繰り返していた。


「さっきまでボロボロだったとは思えない動きねっ!」

エロ女が、チーノの爪を避けながら言うと、


「ごめんなさいね。さっきはお腹が空いていたのよ。」

チーノがエロ女の蹴りを躱してそう返した。


そして2人は、そのまま激しい攻防を繰り返しながらも女子トークを始めていた。


「ホントに腹の立つ猫ねっ!こんなんが、ワタシよりエロいなんて、信じないわよっ!」

「あら、あなたも充分魅力的よ?」


「そ、そうかしら?」

「えぇ。ウチのご主人様が、つい『エッロっ!!』なんて言うくらいですもの。」


「そ、そうよね!?」

「でもね、もっと女を磨く方法があるのよ?」


「な、なによそれ!教えなさいっ!」

「ふふふ。さぁ、どうしようかしら。私に勝つことが出来たら、教えてあげましょうか?」


「い、言ったわねっ!いくらあの雑賀平八の元具現獣だからって、力を無くしたあなたなんかに、負けるはずないのよっ!」

「あら、酷い言いようね。いくら力を失っているとは言っても、力の使い方は覚えているのよ?

中学生相手には出せないけれど、あなたになら少し、本気を出してあげるわね。」


チーノはそう言うと、忍力を体の力へと変換する。


「えっ。」

女がそう声を漏らしたときには、白い雷を纏ったチーノがもう、女の目の前へと迫っていた。


「ぐっ!」

その勢いのままぶつかってくるチーノを避けることもできず、女は吹き飛ばされる。


「急に速く!?あんた、そんなに力を使ったら、すぐに忍力が切れるわよ!」

「ふふふ。心配してくれるの?でもね、今のはほんの少しの忍力しか使っていないの。だから安心して?」


チーノは、そう言ってエロ女に微笑みかける。


(あぁっ!今ドキッとしちゃったわ!あんな猫にっ!!)

エロ女は、自身の抱いた感情に歯ぎしりをして、チーノを睨み返した。


「あら、そんなに怖い顔をしたら、綺麗な顔が台無しよ?」

「うるさいっ!あんたなんかに、負けないわよっ!力も、エロさもっ!!」

エロ女はそう言って、チーノへと向かっていった。

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