第157話:聡太の着信音
「ノリさんは・・・こっちだっ!」
重清と別れた聡太は、ノリと合流すべく森の中を駆けていた。
その時。
「そこで止まって頂けますか?」
突然、聡太に声がかけられる。
「だっ、誰っ!?」
立ち止まった聡太は、声のした方に目を向ける。
「こちらですよ?」
すると、聡太の背後からそんな声が聞こえた。
「あれっ?おかしいな。」
聡太が別の方向からする声にそんな言葉を漏らしながら振り向くと、そこには1人男が立っていた。
全身黒の服を身に纏った30代程の男は、先日重清と恒久が風魔呉羽の元で出会った男だったが、そんなことを知らない聡太は、不思議そうに男に声をかける。
「えっと。どちら様でしょう?」
「名乗る程の者ではありません。強いて言えば、あなたに甲賀ノリを呼んでほしくない者、でしょうか。」
「もしかして、おじさんがさっきの動物達を?」
「おじ・・・まだ29なのですが。それはいいでしょう。あなたの質問にお答えするならば、あれは私ではありませんよ?」
「じゃぁ、おじ、じゃなくてお兄さん仲間がやったの?」
「お気遣いありがとうございます。えぇ。あなたの言うとおり、あれは私の仲間がやったことです。」
「じゃぁ、今すぐ辞めて貰うようにお願いしてもらえません、かね??」
「申し訳ありませんが、そのご依頼にはお応えできませんね。」
「な、何が目的なんですか!?」
「あなたがお気になさることではありせんよ。ちょっと、ご友人の重清君に用があるだけです。」
「シゲに?シゲに何するつもりなんですか!?」
「悪いようにはしませんよ。」
「そ、そんなの信用できるわけないじゃないですかっ!
ぼくはシゲの所に行くので、これで失礼しま―――」
聡太が男に言いながら振り向くと、
「いやいや、それをさせないのも私の仕事なんですけど?」
いつの間にか男が聡太の背後へと現れて、そう言って笑っていた。
「くっ。」
聡太は男から距離を取ると、
「だったら、頑張ってここを抜けさせてもらいますっ!」
「そうですか。では、ここからは力を使わず、体の力のみでお相手させて頂きましょう。」
不敵に笑う男は、そのまま姿を消し、再び聡太の背後へと現れる。
(速いっ!けど、さっきと違ってわかるっ!)
聡太はそう思いながら、男から再び距離を取った。
「ほぉ。今のに反応できます、か。忍者になって1年目にしては、やりますね。」
「ぼくのことを、知ってる!?」
「あなただけではありませんよ、甲賀ソウ君。2中の皆さんのことは、色々と調べさせてもらっていますので。」
「それも、シゲと関係するの?」
「・・・ノーコメントとさせていただきましょうか。
さてと、このままお話しているのもいいですが、よければあなたに少し、訓練をつけてあげましょうか。いきますよ?」
聡太の問に答えた男が、再びその場から姿を消す。
「くぅっ!」
直後に背後から現れた男の蹴りを腕で受け止めながらそう声を漏らした聡太は、衝撃を抑えることができずそのまま後方へと吹き飛ばされる。
(速すぎっ!)
なんとか着地した聡太はレーダーを具現化してその画面へチラリと目を向ける。
「えっ?」
「おや。そのレーダーで、私が認識できませんか?」
その声と共に、聡太の背に衝撃が走り、そのまま聡太はそのまま正面から目の前の木に衝突する。
「ガハッ。な、なんで・・・」
聡太は口から血を流しながら、そう呟いて男に目を向けた。
「いや、私に聞かれても分かりませんよ?」
男は呆れたように聡太にそう答えていた。
「はぁ、はぁ。チーノが言ってた、普通と違う忍力が関係してるのか、な。」
「さぁて。それはどうなんでしょうね。もしかすると単純に、あなたの忍力の練度が低いだけなのかもしれませんよ?」
「はぁ、はぁ。それを言われると、返す言葉もありせん、ねっ!」
言いながら聡太は、木砲の術を発動する。
現れた花から種が飛び出し、男へと迫るも、男はそれをただ、手で払いのける。
「こんな初歩の術で、どうにか出来るとお思いですか?」
男は冷ややかな笑みとともに冷たい言葉を投げかけ、直後には聡太の目の前へと現れる。
先程のダメージが抜けていない聡太は、頭ではそれに反応するも体がついていかず、そのまま男の拳を身に受ける。
吹き飛ばされた先に現れる男に再び殴り飛ばされ、さながらピンボールのように飛ばされ続けながらも、聡太は冷静に体の力を全力で纏って防御しながら、考えていた。
(速すぎる!今のぼくじゃ、対処出来ないっ!
ノリさんの言うように、風の術が使えるようになればっ!)
そして聡太は、防御しながらも徐々に蓄積するダメージにより意識が朦朧としながらもただイメージする。
(風――翔ぶ――忍力と、体、技――)
「ピロリンッ♪」
朦朧とする意識の中、聡太の頭の中に着信音が鳴り響き―――
聡太はその場から姿を消した。
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