第132話:重清ざまぁ会

忍者部一同が雅に一斉につっこんで数分後。


つっこんだ全員(重清・プレッソ・ソウ・恒久・シン・ケン・ノブ・ノリ)がもれなく頭に出来たたんこぶをおさえて悶絶している中、オウがため息をつく。


「この短時間で、ワシの予想を超える出来ごとが起きすぎたわ。」

「やっぱり、そう思います?私も、ちょっと頭が追いつかないですね。」

あけみ姉さんが、オウの言葉に頷いて目頭をおさえていた。


2人の間に、これまでにない絆ができた瞬間であった。


「さてと。あんた達、いつまでそうやってるんだい!?」

(誰のせいだよっ!!)


雅が悶絶する7人と1匹に声をかけると、全員が心の中で恨みの声をあげていた。


「何か文句でもあるのかい?」

「ノー、サー!!」


雅の優しい、それは優しい笑みに、7人と1匹はそう声を揃えて直立不動の姿勢をとる。


「とりあえず、あっちゃんを弟子にすることにはしたけどね。あっちゃんや、すまないが師弟の契約は、保留にさせてくれないかい?」

「えっ!?なんで!?」


「別に弟子にすることを保留にするつもりはないさ。ただね、中学生の間は、ノリの弟子のままでいて欲しいのさ。

あの人の最後の弟子であるノリから学べることは、またまだあるはずだからね。」

そう言って雅は、ノリに目を向けると、ノリが雅に頷き返していた。

たんこぶを撫でながら。

それを見た雅は、とはいえ、と、雅は続ける。


「ひとまず、夏休みの間はあたしの修行を受けてもらおうかねぇ。ノリ、いいかい?」

「えぇ、それは構いません。しかし―――」


「忍者部が休みの日はこっちの修行も休み。修行時間も忍者部に合わせる。依頼がある時には、そちらを優先させる。

他にはあるかい?」

雅がニヤリと笑ってノリを見る。


(あの雅様が、ここまで考えてくださるとは。これは、公弘君に感謝だな。)

ノリはそう考えながら、

「はい。それで結構です。」

雅に頷き返して周りを見渡す。


「とりあえず、大体の話は済んだみたいだし、今日のところはこの辺で解散とする。

明日は1日休みとし、明後日から修行の再開だ。

アカも、修行は明後日からだ。

・・・死ぬなよ。」


最後の言葉に色んな想いを込めて、ノリはアカへと視線を送る。


「任せてくださいっ!」

アカが元気にそう答えると、


「たまにはこっちにも顔だしてくれよ。お前がいないと、ウチはヤローばっかりになっちまうからな!」


「あら、失礼ね。私がいるのを忘れてない?」

ノリの言葉に、チーノが猫顔を膨らませる。


「いや、猫じゃん。」

ノリがつっこんでいると、


「でもさ、チーノって、アカよりもよっぽど色気ないか?」

恒久がボソリと呟くと、


ソウ「やっぱり!?ぼくもそう思ってた!」

シン「おぉ、俺だけが感じてたんじゃなかったのか!」

ケン「確かに、エロい。」

ソウ達3人が、恒久に同意していた。


「あれ?ノブさんとシゲは、そう思わないの?」

無言の2人に、ソウが声をかける。


「いや〜、なんていうか、ねぇ、ノブさん。」

「うむ。あの時の姿と比べるとな・・・」

「ですよねぇ。ホントにエロかったですもんね。チーノのエロ姉ちゃんバージョン。」


「「「「なにそれ詳しく!!」」」」

4人が声を揃える。


ソウやケンがこういった話に加わっているのに驚きながらも、アカが口を尖らせる。


「チーノちゃんの方が色気あるのわかってるけど、みんなして言わなくてもいいじゃん!!しかも、こんな話に入らなさそうなソウとケンさんも一緒に。

みーちゃん、こいつらやっちゃって!」


「あっちゃん、仮にも師匠のあたしを顎で使わないでおくれ。

あんた達も、いくら寂しいからって、あっちゃんをいじめるんじゃないよ!」


「「「「すみませんでしたっ!!」」」」

4人が頭を下げるのを見て溜飲の下がったアカは、


「まっ。チーノちゃんに色気があるのは事実だし、許してあげよう!」

そう言って笑顔になる。


(本当に、こいつらにとっては寂しい夏休みになりそうだな。)

その笑顔に、ノリは密かにそう思うのであった。


「じゃぁ、とりあえず今日のところは解散だ。みんな、明日はゆっくり休めよっ!」

その後、ノリがこう切り出してその場は解散となった。


「シゲ。お前このあと、どうするつもりなんだ?」

『中央公園』を出ようとする重清の背に、恒久が声をかける。


「どう、って?」

「お前昨日言ってただろ?中忍体のあと、告白するって。」

「あぁ。その事か。しないよ、告白。騙されてたんだし、琴音ちゃんだってあの場所に来るわけないし・・・」

そう言って重清が肩を落としていると、その方に両側から腕が回される。


「シゲ、落ち込まないで!今日はもう、とことん飲もう!コーヒーをっ!」

「いやソウ、そこは酒だろ!あけみ姉さんっ!ここ、酒置いてある!?」

「お前ら、教師の前でなんて事言ってやがる!」


重清に肩を組む2人の頭に、ノリのゲンコツが振り下ろされる。


「っつー!ぼくお酒なんて言ってないのにー。」

「いってぇー!ノリさん、かてーこと言うなよっ!」

「言うよ!こう見えても教師だからな!って、誰か教師に見えないんだよっ!!」


そう言って再び、ノリのゲンコツが2人に振り下ろされる。


「「今のひどくないっ!?」」


頭をおさえて2人が抗議していると、暗い顔だった重清の表情が、ふっと明るくなる。


「みんな、ありがと!よしっ!今日はとことん飲もうっ!オウさん、あけみ姉さん、いいでしょ!?」


少し無理をした笑顔の重清の言葉に、オウは頷く。


「えぇ、構いません。ワシは用があるのでこれで失礼しますが・・・」

「任せてっ!あとは私が面倒見ますっ!よし、みんな!今日は重清の、失恋パーティーだよっ!!」

「ちょ、あけみ姉さん!失恋パーティーは酷くない!?」

笑顔の重清にホッとしたアカは、


「じゃ、わたしは帰るわね。」

重清達にそう声をかける。


「なんだよ。アカは参加しねーのか?失恋パーティー。」

「ちょっ、恒久までっ!!」

「ゴメンね。今日わたしこのあと、友達と予定入れちゃってるから。っと、もうこんな時間!じゃぁ皆さん、お疲れさまでした!

みーちゃん、明後日からよろしくねっ!」


そう言って、アカは『中央公園』を出る。

アカが出ると、


ショ「よーし!今日は僕らも参加しよー。シゲの恋バナパーティーだー!」

シン「いや、失恋パーティーですって!」

シゲ「どっちも嫌だー!」

ノブ「どっちでもいいわ!泣け、シゲ!泣いて全部忘れろ!」

ノリ「よし!この重清ざまぁ会、この俺がおごるっ!!」

ケン「あけみ姉さん、ブラックコーヒー1つ。」

ツネ「いやケンさん!何フライングしてんすかっ!!」

ソウ「あけみ姉さん、ぼくはエスプレッソで!」

プレ「相変わらず、騒がしい連中だな。」

チー「ふふふ。本当にね。」

雅「重清は、良い仲間たちに囲まれてるねぇ。」


そんな声が、アカの背に響いてきた。


(よかった、予定入れてて。流石に、これに参加できるほど、わたしはまだ自分が許せそうにもないし。)

そんな想いと共に、アカは駆け出してその場を後にする。



(あー、遅くなっちゃった。市花いちか、怒ってるかなぁ〜)

茜が親友、相羽 市花の怒った顔を想像して苦笑いしながら走っていると、とある公園でふと足を止める。


そこで1人ベンチに座る人影を見た茜は、パッと笑顔になって自身のスマホを取り出して、電話をかけようとする。

ふと茜が顔を上げると、公園にいる人影を目が合った。


相手の様子を見た茜は、寂しそうな表情で持ち上げていた手を降ろし、スマホをギュッと握りしめて相手に頷き、そのまま駆け去っていくのであった。



---あとがき---


次回更新は明日20時です!

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