おれは忍者の子孫

第109話：シン・ケン・ノブ対雑賀麻耶

「ちっ。大魔王の孫かよっ！そりゃ余裕あるわけだ！２人とも、全力で行くぞ！」

（大魔王？？）

麻耶がその言葉に引っかかっているなか、シンがそう言うのと同時にケンが２本の刀を回転させて麻耶へ向かって放つ。

回転ノコギリとなった刀が麻耶を挟み込むように襲いかかる。

しかし直撃する直前、小さな電撃を残して麻耶の姿が消え、目標を失った刀はぶつかり合ってそのまま霧散する。

「へぇ。面白い使い方するのね。でも、当たらなきゃ意味ないよっ！」

（早い！）

突然耳元でそんな声が聞こえたケンは、声と同時に繰り出された雷を纏った蹴りを咄嗟に腕でガードする。

「ぐっ！」

その声を残して、ケンはそのまま上空へと飛ばされる。

（今ので、両腕ダメになった。）

そう考えながらも、ケンは反撃のために再度刀を具現化させ、技の力でそれを操り、地にいるはずの麻耶へ放とうとする。

「っ！？」

しかしそこには既に麻耶の姿はなく、

「残念でした！」

いつの間にか蹴り飛ばしたケンを超えるスピードでほとばしる雷と共に飛び上がった麻耶が、ケンの頭上からそう言って構えていた。

「させるかよぉーー！」

しかし麻耶の攻撃がケン届く前に飛び上がったノブの鉄拳が、麻耶に向けて放たれる。

それに合わせるように、ケンも咄嗟に刀を頭上のマヤに向けて飛ばす。

（あぁもうっ！反応早いわねっ！）

そう心の中で悪態をつきながら、麻耶は刀の切っ先を避け、そのまま刀身に足をかけ、刀に載せた足を軸に回転してノブの拳を蹴り弾く。

「っ！？」

ノブの拳を弾いた直後、麻耶の目の前にシンが現れ、そのまま麻耶に殴りかかる。

麻耶がそれを受けようとすると、シンの姿がすうっとぼやけていった。

「幻術！？」

「正解。」

地上でシンがニヤリと笑って呟いている頃には、シンが投げていたクナイが麻耶の背に直撃していた。

「ぐっ！」

背に受けたクナイの衝撃に体を硬直させた麻耶に、氷を纏うノブの拳と、回転するケンの刀が再び襲いかかる。

（あぁもうっ！チュウ、おね―――）

その時、２本の水の刃を纏ったナイフが、ノブの拳とケンの刀を弾く。

そのまま３人は、地へと着地する。

「白馬の王子様、登場！ってねー。」

そう言ってニヤつくイチの背後では、既に気絶してリタイアした３中の３人が、仲良く倒れていた。

（劇団３中を、この短時間で倒したのか？アイツ、あんなんだけど強いな。）

シンが、ニヤつくイチに視線を送ってそう考えていると、着地したケンとノブがシンの近くへと飛んでくる。

「２人とも、大丈夫か？」

「俺の方は大丈夫だが・・・」

ノブがそう言ってケンを見る。

「腕、使えなくなった。」

ケンが、無表情で呟いて、

「一度、引いたほうがいい。」

そう続ける。

「だな。ケン、あいつら縛れるか？」

「おっけー。」

シンの言葉にケンはそう答えて、術を発動すると、麻耶とイチの足元に火の蛇が現れ、２人の足へと絡みつく。

「っ！？」

２人が声にならない声を上げるのと同時に、ノブが地面を殴りつけてアスファルトと吹き飛ばし、

（砂幻の術！）

同時にシンが発動した術で麻耶たちの視界が奪われる。

「クソがぁっ！お前らーー！麻耶をいじめておいて、逃げるなぁーー！」

イチが足を封じられながらそう叫んでいると、次第に視界が晴れていった。

しかしそこには、既に３人の姿は無かった。

「あーあ、逃げられちゃった。」

火の蛇が霧散したあと、麻耶が楽しそうにそう呟いた。

「なんだよ。楽しそうだな。」

「えぇ。あの３人、思ったよりも楽しめたわ。」

「結構追い詰められてたのにか？」

そう言ってニヤつくイチに、

「まだあの子、出してないし。」

不貞腐れたようにそう返して、麻耶は倒れている女子３人に目を向ける。

「あんた、女の子相手に容赦ないわね。」

「麻耶以外の女に興味ねーし。それに、忍者に男も女も関係無いだろ？」

「まぁ、そこだけは同感だけど。」

そう言って麻耶は、倒れた３人に向かって歩き出す。

制服がめくれ、絶対領域を覗かせていたアズのスカートに手をかけた麻耶は、それを隠すようにスカートを正す。

「同じ女子として、これは見逃せない。」

「お優しいことで。で、このあとどうするんだ？」

「もちろん、重清を探すわ。」

「ちっ、やっぱり重清ってヤツかよ。そいつ、麻耶のなんなんだよ？」

「・・・ただの、ムカつくいとこよ。」

それだけ答えて、麻耶は歩き出す。