第108話:微笑みのゴリラ
「あれ、ゴリラがいる。」
少女の言葉に、シンとケンが吹き出す。
ゴリラ、もといノブだけは、何故か嬉しそうに微笑んでいた。
「今それ言う!?まぁ、間違ってはないけど。」
シンが笑いながら少女に言うと、
「それより、あんた達2中よね?雑賀重清、知ってるわよね?」
肩まで伸びた髪を払いながら少女が3人を見つめて言う言葉に、シン達は身構える。
「シゲを知ってる?あんた、何者?」
ケンが少女に問いかけると、
「私のことはどうだっていいのよ。それで?重清はどこなの!?」
そう言ってケンを睨み返す少女。
「シゲに会って、どうするつもりなんだ?」
「どうって。アイツをぶっ倒すのよ。だから重清の居場所、教えてよ。」
ノブがそう凄むも、少女はそれを意に返さずにさらっと返す。
「それ言われて教えるほど、おれ俺らも薄情じゃないんでね。」
シンが少女に笑いかけると、興味をなくした様子の少女は、
「あっそ。じゃぁいいわ。邪魔したわね。」
そう言って踵を返す。
「いやいやいや。シゲを倒すなんて言われて、そのまま見逃すわけにもいかないんで。」
シンはそう言って、背後から少女の首元にクナイを突きつける。
その時、シンの視界に雷がほとばしる。直後、
「私に刃を向けたってことは、そういうことよね?」
「なっ!?」
直前まで目の前にいた少女の声が、シンの背後から聞こえてくる。
「ちょーっとまったぁーー!!」
硬直するシンを差し置いて、そんな声が辺りに響く。
再び雷と共に姿を消した少女が、シン達から少し離れた場所へ現れて、声のする方へ目を向けると、シン達もそちらの方へ視線を送った。
「あなた達!私達を放っておいて、何を勝手に盛り上がってるの!」
3中のアズであった。
「劇団3中か。」
シンがそう呟くと、
「ちょっとあなたっ!変なあだ名、付けないで―――――」
「ハァーーニィーーー!お待たせぇーーー!」
狂気じみた叫びと共に、雷を足に纏った少女の側に少年が空から降ってきた。
「イチ、その呼び方ホント辞めて。気持ち悪いし、迷惑だから。」
「そんなつれないハニーも、可愛いよぉーーおごっ!」
少女の言葉に、何故かテンションを上げた少年が叫ぶのと同時に、少女の回し蹴りが少年に炸裂して近くの壁まで吹き飛ばす。
少女とのやり取りで、おそらく少年が1中の所属であろうと判断したシン達3人は、しみじみと思った。
(((2中でよかった。)))
と。
「いたたた。」
そう言いながら何事もなかったかのように瓦礫から出てきた少年は、ホコリを叩いて少女の元へ歩きながら、
「冗談はこれくらいにして。これ、どんな状況?」
「まったく。無駄なことさせないでよね。イチ、あんたはあっちの3中の3人をお願い。
私は、こっちの2中の3人とやるわ。」
「俺以外の男に、負けんなよ?」
「それはまず、私に勝ってから言うことね。こいつらには、重清の情報を吐いてもらわないといけないのよ。」
「ちっ。また重清ってヤツのことかよ。いい加減、ヤキモチも限界だぞ?」
「餅でも何でも勝手に焼いてて。別に、重清に変な感情なんて持ってないから。
っていうか、それはあんたに対してもだけど。」
「はっ!相変わらず寂しいことを!」
男は、言いながら2つのナイフを具現化させて、3中の3人へと向き、
「1中3年、風魔イチ。愛する女のため、参る!」
そう言って、劇団3中へと走り出す。
「さてと。あっちも始まったことだし、わたし達も始めましょうか。」
「いいのかよ?3対1で。」
「問題ないわ。」
「まったく。舐められたもんだ。」
そう呟いたシンがクナイを具現化させると、それに合わせるようにケンとノブもそれぞれ刀とナックルを具現化させて、少女に構える。
「ケン、ノブ。あの雷、属性わかるか?」
「ありゃ多分、金だ。雅さんが確かそう言っとったわ。」
ノブが答えていると、
「へぇ。あんた達、おばあちゃんと面識あるんだ。」
少女が会話に入ってきた。
「「「おばあちゃん!?」」」
3人が驚愕の表情で声を揃える。
「まだ名乗っていなかったわね。私は雑賀麻耶。雑賀雅の孫で、一応1中の部長よ。」
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