第107話:滑る男子とドラマチック女子
シン、ケン、ノブの3人が身を潜みながら街の中を進んでいると、
(シンさん。シンさん達の右手から、誰かそっちに向かっています!相手は1人です!)
ソウからレーダーの力でそんな連絡が入る。
「っと、ソウからだ。誰か1人、こっちに来てるらしい。」
そう言ってシンが誰かが来るであろう方向に目を向けると、確かに接近してくる人影が見えた。
「まぁ、さすがに見逃すわけにもいかないだろ?」
そう言って相手の道を塞ぐようにシンが立ち、ケンとノブもそれに続いて立ちはだかる。
「っと。あっちゃー。見つかっちゃいましたか。」
1中の制服を着た男子生徒が、そう言いながら立ち止まる。
「2中の方とお見受けしやす。あっしは1中2年の風魔トクと申します。あっしは今、ちぃと急いでるんで、よかったら見逃してくれねぇですかい?」
目の前の男、トクの言葉に3人は思う。
(((初っ端からキャラ濃いな)))
と。
「俺は2中2年の甲賀シン。こいつらは同じくケンとノブ。で、さっきの話だけど。さすがに見逃したくはないんだけど。」
「いや、そう言わずに、たのんますよぉ!」
「あっ、アズ先輩!こっちに人がいます!」
トクがシンに手を合わせて見逃してくれるよう頼んでいると、上から声が聞こえる。
その声の出どころにシン達3人が視線を送ると、近くの家の屋根から女子3人がシン達を見下ろしていた。
「あっちゃー。新手ですか。こりゃ、あっしが圧倒的に不利でやんすね。
ってことであっしは、このあたりで失礼させていただきやす!」
そう言ってトクは、履いている靴を輝かせてその場から飛び上がる。
「させるかっ!」
飛び上がったトクに、シンがクナイを投げるも、クナイはトクに当たることなく、そのまま彼方へと飛び去っていく。
飛び上がったトクはというと、空中に現れた氷の道を、さながらアイススケートでもしているかの如く滑り、
「バイバイでやんすー」
そう言って滑り去ってしまった。
「・・・・・・・」
突然の逃走に呆気にとられて見ていた残された6人は、しばしトクの去った方を見つめていた。
そこにはただ、氷の道が少しずつ消えていく光景のみが残されているだけであった。
「っと!」
先に立ち直った女子3人が、屋根からシン達の目の前へと着地する。
「今のは1中の子かしら?まぁそれはいいわ。
あなた達は、2中ね?以前模擬戦で会ったわよね?
まさか、あなた達まで逃げたりはしないでしょうね?」
「いや、こっちも逃げられた側なんで、そのつもりはありませんよ。」
シンが、ため息をついて答える。
「じゃぁ、早速やらせてもらうわよっ!」
そう3人の中でリーダーらしき女子が言うと、3人はそのままシン達と距離をとる。
「見せてあげるわ!わたし達の連携をっ!」
3中3年の根来アズの言葉を合図に、
「木砲の術!」
3中1年の根来スミが、そう叫んで小さなバラを咲かせる。
「水流の術!」
さらに、3中2年の根来サキがそう言って、バラへと水やりを始める。
チョロチョロとサキの手から流れる水が、スミの出したバラへと注がれ、バラが成長する。
手のひらサイズから、50cm程に。
「おい、ケンがやってるようなことしてるぞ。2人がかりで。」
「・・・しかも、しょぼい。」
「ハッハッハ。綺麗な花じゃないか!」
シン達がヒソヒソ話していると、
「いっけぇーー!」
スミが叫び、バラからいくつかの棘がシン達に向かって飛んでいく。
「ここは任せろ!」
そう言って金鎧を発現したノブが、シンとケンの前に出て構えると。
「甘いわっ!火砲の術!」
そうアズが言うと、アズの手のひらから飛び出した火の玉が、バラの棘を包み込む。
炎を纏ったバラの棘は、その勢いのままノブへと向かって飛び続け、
ノブへと届くことなく燃え尽きた。
「「「・・・・・」」」
「「「・・・・・」」」
流れる微妙な空気。
「あいつらもしかして、属性のこと、よくわかってないんじゃないか?」
「・・・いや、考え方は間違ってない。火が強すぎ。」
「おい!俺はどうすればいいんだ!!」
3人が言いたい放題に言っていると、
「あーもぅ!なんでなのよ!いっつも失敗しちゃう!」
「アズ先輩、ごめんなさい!私の術が弱いばっかりに。」
「スミちゃんのせいじゃないわっ!きっと、ウチの水流が少なかったのよっ!」
「スミ、サキ、ごめんなさい、取り乱して。あなた達のせいではないわ!私の力不足よっ!」
「「アズ先輩っ!!」」
抱き合う女子3人と、それをただただ見ている男子3人。
「おれら、何見させられてんだ?」
「・・・もう、反撃しよう。」
「ハッハッハ!俺ももう、待ちくたびれたっ!」
ノブの言葉を合図に3人が構え、抱き合う女子に向かおうとすると。
「青春中の女子の邪魔なんて、許さな~~~い!!」
その声とともに、雷が3人の中央に落ちる。
雷によって突き破られたアスファルトが辺りに飛び散り、同時に砂埃が舞った。
「今度はなんだ!?」
ノブがそう叫んでいる間に砂埃が収まり、視界がはっきりすると、3人の中央には1人の少女が立っていた。
そして少女は呟く。
「あれ、ゴリラがいる。」
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