第103話:中忍体会場へ

重清が琴音と約束をした翌日の早朝。


「よし、全員揃ったな。」


忍が丘第2中学校の校門前で、ノリが周りを見渡しながら言う。


「よっし、じゃぁ、会場に向かうぞ。」

「あれ?」

そう言って校門を背に歩き出すノリを見て、重清が声を出す。


「ノリさん、会場って部室から行かないんですか?」

「ん?言ってなかったか?会場には別の場所から行くんだよ。

っていうか、集合をここにした時点で、そのくらい気付けよ。

いつも、休みの日だって部室に入ってるだろ?」


「「あ。」」

重清と同時に、恒久も声を漏らす。


「恒久、お前もか。」

「なははは。」

「ったく。少しはソウとアカを見習って頭使えよ。」

ノリの言葉に2人が聡太と茜に目を向けると、茜がそっと目をそらしていた。


「おいっ!茜、お前も分かってなかっただろ!?」

「えっと・・・・それよりノリさん!これからどこに向かうんですか!?」

恒久のつっこみに、茜が無理矢理話題を変える。


「着いてくりゃわかるよ。まぁ、お前ら1年もよく知ってるトコだがな。」

そう言ってノリが歩き出し、ショウ達がそれに着いていく。


重清達1年生メンバーは、お互いに顔を見合わせ、肩をすくめて先輩達の後に続いていく。


その道中、重清の側を歩いていたチーノが、フワッとノリの肩へ飛び乗り、

「ノリ、今日の夕方、雅が家にいらっしゃいって。もちろん、私も一緒にね。なんのことだか、わかるわよね?」

そう言ってグッとノリの肩に爪を食い込ませて、チーノはその場から飛び降りる。


「・・・・」

チーノの言葉に、ノリはただただ茜を睨む。

「あ、わたしもみーちゃんから伝言!『あっちゃんに報復しようとしたら、ただじゃおかないよ。』だそうです!」


「雅様を後ろ盾にするとは。アカめ・・・」

そう呟いたノリは、肩を落としてあるき続けるのであった。



そして一同がしばらく歩いていると。


(この道って・・・)


聡太が周りを見てそう思っていると、プレッソを頭に乗せた重清と目が合った。

どうやら重清も同じことを考えていると思った聡太は、重清に頷いて歩みを進めた。


そしてノリは、ある建物の前で立ち止まる。


それに合わせて重清達も立ち止まり、目の前の建物に目を向ける。


『準備中』と書かれた札の掛かった扉。

そして扉の近くにあった看板には『喫茶 中央公園』の文字。


「ノリさん、会場って、ここから?」

重清が、ノリに話しかけると、ノリはただニヤリと笑って、準備中の札も気にせず店内へと入っていく。


それに続いて一同も、店内に足を踏み入れる。


「いらっしゃーい。」


重清達の耳に、いつもの声が聞こえてくる。


「あ、あけみ姉さん!?と、誰??」

忍者部一同を迎え入れたのは、『喫茶 中央公園』の店員、あけみ姉さんと、見知らぬ初老の男であった。


「キミが、平八様のお孫さんですな。」

男は、そう言って重清に笑いかける。


「この店にはよく来ていただいているのに、お会いするのは初めてでしたな。ワシは林道と申します。忍名を、甲賀オウ。この店のマスターをしております。」


「おぉっ!!幻のマスター!!あれ?ってことは??」

何年も通っていた店のマスターに初めて出会って興奮した重清は、叫んだあとにふと、あけみ姉さんに目を向ける。


「ふっふっふ。そう、この私、黒屋朱美は、忍者、甲賀アケだったのさ!!」

ババァーーン!という効果音でも聞こえてきそうなくらいのドヤ顔で、あけみ姉さんが胸を張る。


「えぇ!?あけみ姉さん、黒屋って名字だったの!?」

「いや、そこじゃねーだろ!!」

重清の小ボケをしっかりと捕球する恒久。

相変わらずのキレである。


「っていうかお前ら、アケさんと知り合いだったのか?」

シンが、そんな重清達に呆れながら言う。


「はい。ぼく達、よくこのお店に来てたんです。」

ソウが、シンに返す。

「・・・よくこんな店、見つけたな。」

ケンが呟くと、


「ちょっとケン君!?こんな店、って失礼じゃないかい!」

あけみ姉さんがそう言ってケンを睨むと、ケンはスススッとノブの後ろに隠れてしまう。


「はっはっは!アケさん!コイツに悪気はないんです!許してやって下さい!」

ノブがそう言ってケン庇うのであった。


ノブは、いつもボロっカスに言ってくるケンをも庇う、優しきゴリラなのである。


「ケン、ちょっと言い過ぎだよ~?ノブも、ケンを甘やかさないの。」

ショウそう言って苦笑いしている。


そんな中、

「オウさん、アケさん、お久しぶりです。」

ノリが、そう言って2人に頭を下げる。


「久しぶりじゃな、ノリ。お前のところは、いつもこんな感じなのか?」

自己紹介をして以降、全く触れられなかった林道が、そう言ってノリに笑いかける。


「はい。大体は、重清、平八様のお孫さんが原因なのですが・・・」

「ほっほっほ。いつの間にか話の流れを違う方向に持っていってしまうとは。平八様を思い出すのぉ。」

懐かしそうにそう言う林道の言葉に、


「確かに、平八様はいっつも、いつの間にか話が脱線していたわねぇ。」

あけみ姉さんもそう言って微笑んで重清に目を向ける。


「おれって、そんなに話の流れ、変えてる!?」


「自覚ないんかいっ!!」


ショウ達先輩を含めた、忍者部一同が重清につっこむのであった。

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