第83話:最終日遭遇戦 その4

「「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!」」


シンとアカが、森の中を駆け抜ける。

それはもう必死に。


2人は逃げていた。

その後ろでは、“何か”によって木々が押し倒されており、その“何か”が2人の後ろを着いてきていた。


「アカ!あれ、なんとかならないのかよ!?」

「ムリですっ!あのパターン、わたし知らないですっ!!」

「ちっ。言われるとおりに、みんなを集めないと――――」

シンがそう口にした直後、シンの真後ろに雷が落ちる。


それが偶然ではないと感じたシンは、渋々改めて口を開く。


「ゆ、『勇者達』を集めないといけない。」

そう言って後ろにチラッと目をやると、満足そうな“何か”が目に入る。


(チッ。)

言いたくもないことを言わされた事に内心で舌打ちをしながらシンは、

「アカ!一旦分かれるぞ!ゆ、『勇者達』を集めるんだっ!」

「・・・りょーかいっ!」


シンの言葉につっこみたくなったアカであったが、敢えてそこには触れずにただそう言って頷き、それを確認したシンは、アカとは別の方向へ走り出す。


((向こうについて行って!))

お互いが、自分ではない方へ後ろの“何か”がついて行くことを期待した2人であったが、


「俺かよぉ~~~!何でだよ!?アカと仲良いじゃん!!」

そう言って、ついて来る“何か”から逃げるように走り、すぐにシンはアカの視界から消えていった。


「・・・シンさん。シンさんのこと、忘れません!」

アカはそう呟いて、『勇者達』を探すために再び走り出すのであった。



「・・・あれ、ここは?」

「あ、気が付いた?」


いつの間にか木にもたれかかって気絶していた恒久が目を覚ますと、目の前のショウが笑顔を向けてくる。


「おれは一体・・・あ。思い出した。」

「思い出しちゃった?ツネは、ソウに思いっきり飛ばされちゃったんだよ?」

「いや、思い出したって言ってるのに、わざわざ説明しなくていいですよ!っていうか、結構な高度まで飛ばされた気がするんですけど、なんで無事なんですかね?」

「う~ん。僕がツネを見つけたときには、今の状態だったからね。この空間の特性とかなんじゃないかな?」

「・・・流石は、シゲのばあさんだな。」


2人がそんな会話をしていると。


「い~~~たぁ~~~~~!」

突然そんな声とともに、シンが走ってくる。


「あ、シン。アカはどうしたの??」


「2人とも、走って!!」


ショウの言葉を無視し、さらに2人を追い抜きながらショウが叫ぶのを唖然としながら見ていた2人であったが、

「後ろ、後ろ!!!」

シンの言葉に2人が背後を振り向くと、木々をなぎ倒しながら向かって来る“何か”が目に入る。


瞬時に2人は、シンを追いかけて走り出した。


「シンさん、なんなんですかあれ!あれって、しげのばあ――――」

そう恒久が言おうとした直後、恒久の背後に雷が落ちる。


「・・・・・・」

流石にそれを偶然で片づけることはできず、恒久は口を噤んでシンに目をやると、


「わかったか!?余計なことを口にしたら、そうなるんだ!いいか、あれはなぁ、『大魔王』だ!!」

シンが、真に迫った顔で世界観を台無しにすることを口にするのを見た恒久は、


「いや、シンさん。さすがにそれ、意味わかんないっす。」

と、走り続けながらもちょっと噴出してシンにそう返す。


恒久のバカにするような顔にシンは泣きそうな顔をしながら、

「俺が考えたんじゃないやい!本人が言ってたんだって!

『私は大魔王だ。8人の勇者を集め、私と戦いなさい』って!

それからず~~っと追いかけられてるんだぞ?ずぅ~~~っとだ!

アカと二手に分かれたのに、何故か俺の方について来るんだよ!!!」

最早完全に泣きながら、シンがそう叫ぶ。


「・・・とにかく、『大魔王』を倒すために、『勇者達』を全員集めないといけないんだね。」

涙を流すシンに同情の目を向けながら、ショウが確認するようにシンに声をかける。


「そういうことです。」

鼻水を啜りながらそう返すシンを見て、先輩の涙に戸惑っていた恒久はただただ、


(ショウさん、ナイス取りまとめ!)

と、心の中で親指を立てていた。


「こういうとき、ソウがいたら全員すぐに見つかるんだけどな。」

「確かに、あいつのレーダーなら、一発ですもんね。」


シンの呟きに恒久が納得したように答えているのを見たショウは、恒久がソウに怒っていないことに安心して、笑っていた?


「ん?ショウさん、どうしたんですか、笑ったりして。」

こんな状況でそんな笑顔をしていたショウに恒久が声をかけるも、


「なんでもないよ。」

と、爽やかスマイルで返された恒久は、


「そうですか?それよりも、アイツを見つけたいですね。アイツなら、この状況について何か説明できるかもしれませんし。」

そう言って後ろをちらりと見る。

「まぁ、確かにな。」

恒久のその言葉に、シンも後ろへと目をやる。


「まぁとにかく、他の『勇者達』を探すしかないね。」


ショウの言葉に、2人は頷き、後ろから追ってくる“何か”かから逃げ続ける。



一方、恒久が言うアイツは・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る