第82話:最終日遭遇戦 その3

ソウが放つ種を撃ち落としながらケンへと迫るショウ。


2人の距離が縮まり、杖と刀がぶつかる。

「まずは、お手並み拝見といこうか。」


そう言ってショウは、片手の杖でケンの刀を受け止めながら、もう一方の手でさらに杖をケンの胸の前で具現化し、

(武具伸縮の術!)

そのまま杖を伸ばす。


ゼロ距離で杖を具現化され、更にはそのまま術により伸びたショウの杖に反応できず、ケンの体は杖の伸びるままに背後の木へと向かって突き進んでいた。


「ぐっ。」


ケンは木に激突する直前になんとか体勢を変えて、ショウの杖から逃れる。

その時、恒久が投げた手裏剣がケンへと迫る。


「キンッ!」

しかし手裏剣は、花の種によって撃ち落とされる。


「援護は任せて下さいっ!」

そう叫ぶソウに目を向けて、


「助かった。」

そう声に出すと同時に、

「油断はダメだよー?」


ショウの声が聞こえてケンのカラダに衝撃が走る。


ショウに打たれた脇腹を押さえながら後ろへと跳躍したケンは、口に広がる血の味に苦い顔をする。


「今度は、こっちの番。」

そう呟いたケンは、口に広がる血を地面へと吐き出し、手に持った刀を消してその半分ほどの小刀を2つ具現化する。

そしてそのままそれを、頭上へと放り投げる。

放り投げられた小刀はそのままクルクルと回転し、その勢いを越える速さで、回転ノコギリのごとく回り始める。


回転しながらも空中にとどまっていた小刀は、

「反撃、開始!」

ケンのその言葉と同時に、回転する小刀2つがショウを挟み込むように両脇へと移動する。


「へぇ、技の力が強い、ケンらしい方法だね。」

そう笑って、向かてくるであろう回転ノコギリを撃ち落とすべく、杖を構えようとする。


「っ!?」

しかしショウは腕を持ち上げることができなかった。

気付くと、ショウの腕だけでなく足までも、地面から生えたツタが絡みついていた。


「凄い。全然気付かなかった。」


「さらにいきますよ。」

そう呟いたケンが、術を発動させる。


(火縛の術!)


それと同時に、ショウの足元に火の蛇が現れ、ショウの体を這って手足へと巻き付いていく。

さらに火の蛇は、ショウに絡まるツタを吸収するように取り込んでいき、その炎を大きくさせ、それを待っていたかのように空中で回転していた小刀がショウへと飛び掛かる。


「ん~、それは悪手だよ。」


ショウはそう呟くと、全身に青い忍力のオーラを纏い、それをそのまま絡みつく蛇にぶつけるように開放する。


「ジュッ」


そのオーラに触れた蛇たちはそんな音を立てて消滅し、体を解放されたショウは迫りくる2つの小刀を難なく空中に飛ぶことで避け、行き場を失った小刀はお互いに回転しながら衝突し、そのまま霧散する。


「ん~、火の力を、先に出していた木の力で強化する方法は、ナイスアイデアだと思うよ?

でもさ、僕の元々の属性は水なんだから、そこはちゃんと勘案しとかないと。木縛の術だけだったら、さっきの方法じゃ抜け出せないでしょ?」


地に着地したショウが、笑いながらケンへと話しかけると、ケンも納得したのか素直に頷いていた。


そんな2人の後方では、それぞれソウと恒久が思っていた。


((全く援護できていない。))

と。


そんな無力感に突き動かされたのは、恒久だった。


「今度は、こっちが行くぞ!ソウ!!」

そう言って幻刀の術を発動した恒久が、幻刀を構えてソウへと向かって走り出す。


(くっ、間に合え!!)

恒久に目を配りながらも、ソウは慌てて手元のスマホ型レーダーを操作する。

直後、ソウへ向かっていく恒久の足元から炎の壁が出現し、


「ノォォォォォ~~~~~~~~!」

勢いよく下から出現した炎の壁の勢いで、恒久は遥か彼方へと飛ばされていくのであった。


「「・・・・・・・・・」」


その光景に、ショウとケンがじっとソウを見つめていると、


「あ~、間違って、『迎撃』に炎壁の術をセットしちゃいました。」

アハハと乾いた笑いを浮かべて、ソウが恒久のとんだ方向に目を向けながら呟く。


「え~~っと。どうしよう。このまま、続ける?」

ショウが首を傾げてケンに問うと、


「いや、ツネ助けに行ってあげてくださいよ。」

ケンが珍しくショウにそうつっこむのであった。


「あ~、うん。そうだよね。あまりの出来事に、判断力が鈍っちゃったね。じゃ、僕はこの辺で!」

そう言ってショウは、恒久が飛ばされた方向に向かって走り去っていった。


「・・・ケンさん。あのまま戦っていて、勝てたと思いますか?」

「いや、無理だろうな。ショウさん、強くなってた。しかも、ツネはまだ色々と隠し持っている感じだったしな。それが何かはわからなかったが。」

「えっと、なんか、すみません。」

「いや、面白かったから気にするな。でも、ツネにはあとで謝っとけよ?」

「そうします。ツネ、許してくれますかね?」

「大丈夫だろ。アイツ、基本的にはバカで良い奴だから。」

「プッ、確かに。」

ケンの辛辣で優しい評価に噴出したソウに、


「さて、次の相手、探すか。」

ケンも笑って、ソウに告げる。


「はい!」

そして2人は、森の中を進んでいく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る