第77話:修行の成果を見せてやれ
「なるほど。そんなことが起きてたのか。」
忍者部の他の面々と合流するために歩いている道すがら、これまでの経緯をやっと聞くことができたノブは、感心したように頷いていた。
「ノブさん、なんか、置いてけぼりにしてしまってすみませんでした。」
重清が申し訳なさそうにそう告げると、
「ハッハッハ!気にすんな!」
「でも、ノブさん、最後には泣いて・・・」
「重清!いいか、あれは泣いていたんじゃない。あれはな、目の筋トレをした成果なんだ。わかるな??」
ノブが必死な顔で重清に詰め寄る。
その目にはまたしても筋トレの成果が現れていた。
「は、はい。」
ノブの必死で無理のある誤魔化しに、重清はただそう言って頷く。
重清は、先輩の顔を立てることができる良き後輩なのだ。
「そういえば、チーノ、だったか?これからの模擬戦ではどうするんだ?新しい術は使わないことになっていたが・・・」
ノブが、誤魔化すように重清に尋ねる。
「最後の日までは、隠しておくことになりました!最初の2時間の修行でだけ一緒に修行して、最後の模擬戦は、ばあちゃんと離れて見てるそうなんです。」
「わざわざ離れている意味あるのか?」
「んー、なんかチーノって、元々感知する力が凄いらしいんですよ。だから、余計な口出ししないように、離れさせておくらしいんです。」
「ん?でも、チーノって今まで持ってた力、全部失ったんじゃないのか?」
「術は全部忘れちゃったらしいんですけどね。感知は、感覚的なものだから残ったんだろうって、ばあちゃんが言ってました。」
「なるほどなぁ。だから、一緒に来てないんだな。ちなみに、あのエロい姿に化けるとこもできなくなってんのか?」
「そうなんですよ!あれも、変化の術って術らしくて、他の術同様使えなくなっちゃったらしいんです。」
「そうか。それは残念・・・いや、決してやましい気持ちがあるわけではなくてだな!」
「いや、ノブさん。誰に言い訳してるんですか。今、男しかいませんよ?」
「・・・・うん、あれはまた見たかったな。」
「ですよねぇ。あの姿、健全な男子中学生には、危険ですよね。」
「確かに。ツネなんて、あの姿見せただけで勝てるんじゃないか?」
そう言ってひとしきり、男子トークをしたあと、ノブが呟く。
「どっちにしても、かなり戦力上がったんじゃないか?プレッソも、うかうかしてられねぇな。」
そう言って、ニヤリと笑ってプレッソを見るノブ。
「う、うるせぇなぁ!そんなことは、オイラが1番わかってるんだよ!泣き虫の癖に、知ったような事言ってんじゃねぇよ!!」
「な、泣いてなんかないやいっ!」
プレッソの言葉に、どこにも需要の無いであろう可愛さで言い返すノブ。
そんなこんなで、他の忍者部の面々と合流した重清達は、その後、模擬戦を終わらせて、その日は解散することとなったのである。
「よし!今日も『中央公園』で勉強すっか!」
ノリや先輩たちと別れたあと、元気よく言い出す重清に、聡太が首を傾げる。
「あれ?シゲはこの後、田中さんと会うことになってるんじゃなかったの?」
「・・・・・っ!?そうだった!!!みんなごめん!今日は帰る!プレッソ、行くぞ!!」
そう言って慌てて走り出す重清と、呆れたようにため息をついて重清を追うプレッソの後ろ姿を見ながら、聡太は呟く。
「あれだけ今日1日騒いでたのに、よくもまぁ忘れられるもんだよ・・・」
「ソウ、あいつ、どうしたんだ?」
恒久の言葉を受けて、聡太が恒久と茜に事情を説明する。
「はぁ!?なんだよあいつ!何勝手にリア充の階段上ろうとしてんだよ!!」
「そうよ!この中で恋人ができるのは、わたしが最初だと思ってたのに!!」
「いや、ぼくに言われても、知らないよ!」
「・・・・お前ら。追うぞ。」
恒久が、突然聡太と茜に向かって、そう口を開く。
「・・・面白いわね。この結末、見届けてやろうじゃない。」
「え、2人とも本気??え?ぼくも行くの??」
「「当たり前だ(よ)!!」」
恒久と茜の視線が、聡太に振り注ぐ。
「友達の恋行方だぞ!?邪魔・・・じゃなくて、どうなるのか、確認するのが友達としての義務じゃないか!!」
「いや、今邪魔って言いそうになったよね!?もう、応援する気ないよね!?」
「そんなバカの言ってる事は気にしないの!わたしはただ、恋バナに飢えてるだけなの!キュンキュンしたいの!!そのためだったら、シゲなんかのしょうもないこんな機会すら、逃すわけにはいかないのよ!!」
「いやもう、ただの野次馬だよね!?しかも今、しょうもないって言ったよね!?」
「「うるさい!行くぞ(わよ)!!」」
「・・・・・・わかりましたよ。」
聡太は、諦めたように頷く。
「それでこそ聡太、重清の親友だな。おれ達は、この時のために修行をしてきたといっても過言ではない!これまでの修行の成果、見せてやろうぜ!」
そう言って親指を立ててどや顔する恒久に、
「・・・過言だよ!」
もう疲れた、とでも言わんばかりに、それだけをつっこむ聡太。
こうして3人は、こっそりと重清を追うことになったのであった。
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