第66話:捜査協力
「ノブさん、付き合わせてしまってすみません。シゲとプレッソも、悪かったな。」
警察署へ向かう道すがら、恒久がそんな言葉を口にする。
「ハッハッハ!気にすんな!」
「ノリさんにも言ったけど、捜査協力自体はおれの責任だからね。」
「ホントだよ。なんで恒久の罰ゲームにオイラまで付き合わなきゃいけないんだよ。」
それぞれが笑って恒久に返す。
「ありがとな。それにしても、まさかシゲが課題クリアするとは思ってなかったよ。」
「あのねぇ、みんなおれをバカにし過ぎなんだよ?これでも一応、勉強はそれなりにはできるんだから。」
「まぁでも、それでもバカは変わらないよな?」
「だな!」
重清の言葉に、恒吉がプレッソに向かってそう言うと、プレッソも同意する。
「お前らなぁ!」
「ハッハッハ!俺が言うのもなんだが、勉強できるからってそれに胡座かいてたら、すぐ置いていかれるからな!」
「そういえば、ノブさんたちの時にも、おれらみたいな課題ってあったんですか?」
ノブの言葉に、恒久が返す。
「あぁ、行事の度に、色んな課題出してくるぞ?」
「ちなみに、ノブさんは実力試験のときの結果、どうだったんですか?」
重清の言葉に、ノブはニヤリと笑う。
「もちろん全科目」
ゴクリ、という音が、恒久から聞こえる。
「80点に届いていない!!」
「いや、全科目かよっ!あっ、素でつっこんじゃった。」
何故か自信満々で言い切るノブに、恒久は思わず敬語を忘れてつっこむ。
「構わん!つっこみに敬語使ってたら面倒だろ?お前は大事な戦力なんだ!敬語なんか気にせず、どんどんつっこめ!」
「いや、褒められた気になりましたけど、今の確実に、つっこみとしての戦力って意味ですよね!?」
そうこう無駄話をしているうちに、3人とプレッソは警察署へと到着する。
警察署の門の前では、小野田学が待ち構えていた。
「ん?ノリさんからは1人来ると聞いていたが、2人・・・と1匹増えてんな。」
話している途中でプレッソが猫史上初の咳払いをするのに気付いて、小野田が付け加えながらそう言って、重清達に目を向ける。
「はじめまして。2年の森坂信宏といいます。当初はこのツネだけが来る予定でしたが・・・色々あってこうなりました!」
「後半思いっきり端折られたみたいだが、わかった!とりあえず、ノリさんから聞いてるかもしれねーが、表向きは社会科見学ってことになってるから、そこんとこよろしくな!じゃぁ、早速、出発だ!」
そう言ってあるき出す小野田に、一同はついて行く。
「とりあえずこれからの説明だ。」
そう言って小野田は、話し出す。
「しばらくは一緒に行動するが、あとはそれぞれ別れて見回りだ。これまでの被害状況から考えて、今日新たな被害が出る可能性が高い。」
「もし現場に居合わせた場合は、どうすれば?」
恒久が手を挙げる。
「その場合、捕まえようとはせず、ただ追いかけろ。ただし、なるべく相手に気取られないようにな。」
「捕まえちゃ、ダメなんですか?」
重清が、首を傾げる。
「あぁ。相手は一般人だから、お前らなら対応はできると思っているが、万が一ってのがある。あくまでも、捕まえるのは俺の役目だ。お前ら、スマホ出しな。」
突然の小野田の言葉に、3人は不思議に思いながらもそれぞれがスマホを取り出す。
そして、小野田が指定する無料通話アプリを起動する。
「これで位置情報送れるから、もしも犯人見つけたら、俺に送るんだ。お前らの気配は覚えたから、俺はその情報を元に、お前らを探す。余裕があったら、犯人を追いかけながら何度か位置情報を送ってくれ。」
小野田の言葉に、3人が頷く。
「オイラが連絡役やってもいいんだせ?」
プレッソが、小声で小野田に告げるも、
「いや、そこまでしなくていい。それに、お前まだ、特定の相手にだけ話したりはできないんだろ?」
プレッソがうなずくと、
「だろ。だったら、俺に情報を伝えるのに話す必要があるんだ。今回は、そのリスクを負うほどの事件でもない。」
「なぁ。」
プレッソが、返事の代わりに鳴くのを聞いた小野田が、
「おし、じゃぁそろそろ、っと。」
そう言って、前方に目を向ける。
「先輩、おつかれさまです。」
一同がその声のした方に目を向けると、以前重清達を警察署まで連れて行ってくれた、森本が敬礼をして立っていた、
「おつかれさん。」
そう言って敬礼を返す小野田に笑顔を返す森本は、周りにいる重清達に視線を送る。
「君達は、あの時の。また捕まったのかい?」
そう言って笑う森本に対して恒久が、
「いや、社会科見学で、小野田さんに色々とご指導してもらってるんですよ!」
と、言い返す。
「それは失礼。先輩、最近ひったくりが多発してるようなので、お気をつけ下さい。」
「誰に言ってんだよ、誰に。」
「またまた失礼。君達、さっき言ったように、最近ひったくりが増えている。くれぐれも気をつけてね。ちゃんと小野田さんの言うことをよく聞くんだよ。」
そう言って、森本は小野田に一礼してその場を去っていく。
「森本さん、いい人ですね。」
立ち去っていく森本の背を見ながら、重清が呟く。
「だろ?あいつ、あのあとお前らの事心配してたんだぞ?今度、派出所に遊びに行ってやれ。」
「「はい!」」
重清と恒久が声を揃えるのを聞いた小野田は、
「よし、じゃぁそろそろ分かれるぞ。いつでも位置情報は送れるように準備しておけ。ただし!」
そう言って、3人に厳しい目を向ける。
「歩きスマホは禁止だ。」
にっと笑う小野田に、
「この人、怖いのかどうかわからんな。」
と、ノブが呟く。
「ガクさん、前もおれたちと会ったときも、『冷たい警官役』やってて・・・」
「無駄話はあとだ。とりあえず、解散!」
小野田が、重清の脱線を遮る。
そしてそれぞれが、思い思いの方向へと歩き出す。
得意の脱線を遮られた重清だけは、少し不満そうにしており、それを重清の頭上でプレッソが、小さく笑うのであった。
「いゃぁ、今日も街は平和だなぁ。」
(バカな事言ってないで、ちゃんと見回れよ。)
小野田達と別れてしばらく歩いた後に発した重清の独り言に、プレッソがつっこむ。
(へいへい、わかってますよ。)
心の中ででそう返して重清が歩いていると、横断歩道で老婆の手を引いて歩く男がいた。
(おっ、おばあちゃんが横断歩道渡るの手伝ってるんだ。最近の若者も、捨てたもんじゃないねぇ。)
(いや、どう見たってお前より10歳は年上じゃねーか!)
プレッソのつっこみを聞き流しながら、その2人を追い抜いて重清達が歩いていると、
「キャァーーーっ!!」
背後から悲鳴が聞こえた。
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