第65話:試験結果と罰ゲーム
「ノォーーーーーーー!」
重清が、実力試験の結果を受け取っていると、どこからか叫び声が聞こえてきた。
((あ、ツネだな。))
重清と聡太は、同時にそう感じていた。
新たな修行から一週間、それぞれが修行と試験対策に奔走し、無事に実力試験は終了していた。
先程の叫び声から、一概に『無事に』とは言えないのかもしれないが。
とにかく、その日は試験から更に数日経ち、試験結果の返却される日となっていた。
恒久の叫び声を聞きつつ、重清は自身の手にある試験結果に目を落とす。
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国語86点、数学91点、理科89点、社会83点、英語82点
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そう、重清は、無事にノリの課題をクリアしていたのである。
彼はこれまで、幾度となくバカにされてきてはいるが、基本的にやれば出来る子なのであった。
「ちっ。」
どこからともなく、雅の舌打ちが聞こえてきたような気がする重清であったが、そんなことは気にしないのである。
「えーっと、シゲ、どうだった?」
重清同様、どこからか聞こえてきた舌打ちを無視して、聡太が重清の結果を覗き込む。
「ん?余裕でクリア。ソウは?」
「もちろん、クリアだよ。」
そう言って聡太が差し出す結果を見た重清は、
「って、オール90越えかよ!」
「ちょっ、シゲ、声が大きいよ!試験のほとんどは小学校で習ったことだったんだから、このくらい大したことないって!」
「お前それ、あいつらに面と向かって言えるか?」
重清の叫びに慌ててフォローを入れる聡太に、重清がある方向を見ながら呟く。
聡太がその視線の先に目を向けると、そこには肩を落として慰め合う後藤、藤田、原田の姿があった。
どうやら、あまり成績がよろしくなかったようで、先程の重清の叫びも耳には入っていなかったようである。
「正たちには、内緒にしといてね?」
「まぁ、おれもアイツらには自分の点数言いたくはないからなぁ。」
お互いにそう言って、周りに負のオーラを漂わせる3人に、ただただ憐れむ視線を送る2人なのであった。
その日の放課後、重清達の姿は、いつものように忍者部の部室にあった。
いつもと違うことといえば、恒久の姿が小さく見えることくらいか。
結局、アカを含め、恒久以外の3人は、無事にノリの課題をクリアしており、唯一失敗した恒久も、
「なんだよ、79点って。あと1点じゃねーかよ・・・」
ギリギリのところで、クリアに届かなかっただけのようであった。
それでも、79点は79点なのであるが。
「うるせぇよー」
恒久がどこへともなくつっこんでいると、ノリが部室へとやってくる。
「あー、早速だが、恒久。お前これから罰ゲームな。ちょうどさっき、警察署から連絡があった。以前『借り』にしてた件、今日返せだとさ。」
まだ立ち直れていない恒久に代わって、ソウがその言葉に返す。
「それって、軽犯罪の捜査協力を忍者部にしろっていう?」
「それだ。最近多発しているひったくり事件の捜査に協力しろだとさ。
別に解決する必要はないらしい。ガクが付くらしいから、怪しいやつ見かけたらアイツに連絡すりゃいいだけの簡単なお仕事なんだとよ。
犯罪捜査を『簡単なお仕事』とか言うあの署長も、どうかと思うがな。」
そう言いながら呆れ顔をするノリに、恒久が心配そうに口を開く。
「犯罪捜査におれだけって、大丈夫なんですか?」
「ん?大丈夫だろ。そもそも逮捕しろって言われてるわけじゃないんだ。見回り増やす程度のつもりなんだろうから、こっちの手をわざわざ増やしてやる気にもならん。」
その時、ノリの言葉を聞いていた重清がスッと手を挙げる。
「ノリさん、これ、おれも行っていいですか?」
「ん?どうした?『お前は全科目80点以上取った』だろ?」
一部の言葉を強調し、かつ、恒久に目を向けながらノリが答える。
「元はといえば、警察に協力することになったのはおれの責任です。だから・・・」
「まぁ、重清が行きたいのであれば、止める理由もないけどな。」
「そ、そんな!?シゲ!ってことは、俺は一人で、お前のばあさんと修行することになるのか!?」
「あ。」
ノブの悲痛な叫びに、そのことをすっかり忘れていた重清が声を漏らす。
「いいよ、ゴリ。あんたも行っておいで。」
「ひぃっ!」
突然背後から現れた雅に、ゴリラが小さく悲鳴を上げるながらも、自分を取り戻して雅に向く。
「い、いいんですかい?」
「あぁ。ゴリラとはいえ、男と2人っきりだなんて、あの人に顔向けできないからねぇ。」
雅が笑ってそれに答える。
もう、ゴリラの件に関しては、誰もつっこまないのであった。
「雅様の許可もおりたことだし、今回は恒久と重清、それにゴリ、じゃなくてノブの3人が依頼を受けるってことで。一応表向きは、社会科見学ってことにしてるから、よろしくー。」
「あー、ゴリや。さっきの言葉、忘れてないからね。明日は覚悟おしよ。」
軽いノリと、おもーい雅の言葉に見送られながら、3人と1匹はガクに会うために警察署へと向かうのであった。
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