第62話:家族を紹介します

重清達が騒いでいるなか、雅が呆れたようにノリに目を向ける。


「いつもこんな感じなのかい?」

「はい。楽しそうでしょ?でも、大体はあなたのお孫さんが原因ですよ??」

ノリが笑うと、雅が呆れたようにため息をつく。

「まったく、誰に似たんだか。」


それに苦笑いをしながら、ノリが騒ぎを収める。


「はいはい。知らない人もいるから、まずは紹介させてもらうよー。」

ノリが、古賀の口調で話し出すと、

「あ!ノリさん、猫かぶってる!」

アカが笑いながらノリを指差す。


「『かぶってる』だぁ?」

その瞬間、雅から殺気が発せられる。

「ひぃっ!」

それに当てられたアカが、悲鳴を漏らして腰を抜かす。


「ちょっと雅様。あんまり私の生徒をイジメないでくださいよ。

アカ、大丈夫だから。多分、噛みつきはしないから!」

「ノリ、あたしを猛獣みたいに言うんじゃないよ。」


(((((いや、猛獣の方が可愛いわ!)))))

雑賀家一同とプレッソ、そしてノリが心の中でつっこむ。

決して、口には出せないつっこみを。


「えーっと、今バシバシ殺気出したおば、見目麗しきお姉さまが、重清の祖母でもある、雑賀雅様だ。」

おばあさんと言いそうになり、殺気が向けられたノリが訂正しながら雅を紹介する。


「よろしくね!」

そう言ってウインクする雅につっこめる猛者がいるわけもなく、その場はただ、静寂に包まれる。


「おや、中学生には刺激が強すぎたかい。いつもバカ孫が世話になってるね。」

と、勝手に勘違いした雅が笑っていた。


「その隣が、恒久とお父さんの伊賀恒吉さんだ。」

「よろしく。」

そう言って小さく頭を下げる恒吉。

「その隣が、重清のお兄さんの雑賀公弘君と、雑賀裕二君。」

「「よろしくーー」」

そう言って2人が手を振ったあと、ノリが続ける。


「この方々に、君たちの修行に付き合ってもらうから。修行は、各属性に分かれてやってもらうよ。

ケンとソウは、公弘君が。シンとアカは、裕二君が。恒久には、恒吉さんが―――――」

「「っ!!」」

そこまで聞いた重清とプレッソが、声にならない声を出す。

「そして、ノブと重清は、雅様に担当してもらうから。」


「重清にプレッソ、何か文句でもあるのかい?」

そう言って目をくれる雅に対して重清とプレッソは、

「「そんなもの、あるはずもありません!!」」

未だかつてないほどの礼儀の良さで、声を揃えてそう返事をする重清とプレッソ。

それに対して満足するように雅が頷くのを確認して、ノリがまた口を開く。


「雑賀家と伊賀家の希望で、属性に関する修行は毎日1時間とする。そのあと、重清と恒吉は、各家庭での修行をするそうだ。その間、残りのものは模擬戦をするが、希望者は雅様が修行をつけてくれるそうだよ。」


((誰が希望するんだよ))

重清とプレッソがそう思っていると、アカがスッと手を挙げる。

「わたし、雅様の修行、受けてみたいです。」


「ほぉ。あたしの殺気受けてなお、そう言えるとは、大したもんだね。アカちゃん、だったね、他の子達もそうだけど、別に様なんて付けなくていいからね。ノリが勝手にそう呼んでるだけだから。気軽に、『みーちゃん』とでも呼んでおくれ。」


「えっと、じゃぁ、雅さん、で。」

「おや、そうかい。」

アカが戸惑いながら答えると、雅は残念そうにそう答える。


(『皆殺しにしてあげるよ、ちゃんと。』の略じゃね?)

(おっ、プレッソ上手いな!)

プレッソと重清が心の中で会話していると、雅が笑顔で、

「おや、重清とプレッソも加わりたいみたいだねぇ??」

と2人に目を向ける。

笑顔ではあったものの、もちろん目は笑っていなかった。


「「すみませんでした!!」」

速攻で頭を下げる重清とプレッソ。

一度心の中での、会話を盗聴されたというのに、学ばない1人と1匹なのであった。


頭を下げている学ばない1人と1匹をノリは無視する。

「えーっと。個々での模擬戦や修行を1時間やったあとは、最後に中忍体ルールでの模擬戦。これが、これから1ヶ月の予定だ。何か質問はあるかな?」


「2つ目の属性使えるようになるのに、1か月もやる必要ってあるんですか?」

恒久が、手を挙げる。


「まぁ、簡単とはいっても、それなりに訓練が必要だからね。実際、今回で全員が2つ目の属性を使えるようになるとは思ってないからね。」


「・・・・なるほど。」

(クソ、腹立つな。絶対使えるようになってやるよ。)

納得いかない表情でそう答えた恒久は、心の中でそう誓う。


「他にはないかな?じゃ、それぞれ頑張って!」


そう言って古賀が手を振るのに背を向けて、それぞれが別の方向へと動き出す。

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