第61話:80点or罰ゲームor地獄

「よし、全員揃ったな。」


いつものように部室に集まった面々に、古賀が前髪をかき上げながら話し出す。


「昨日、これからの方針を考えた。と、その前に。1年!お前ら全員、今度の実力試験で全科目80点以上取らないと、罰ゲームな。」


「「「「はぁ!?」」」」


4人の声が揃う。

と、直後にソウとアカが、突然何かに気付いたように自身の契約書を取り出す。


そこには、これまであった4つの項目の次に、1つ増えた項目があった。



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(追加遵守事項)

5 次に行われる実力試験で、全科目80点以上を取ること。それを満たさなかったものには、罰を課すこととする。

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「やっぱり、増えてる。」

アカがそう呟く。


「あ。もしかして、あの着信音みたいなのが鳴ったのか?おれとシゲは契約破棄したから、わからないのか。」

恒久が納得するように頷くのを見てノリが、


「恒久と重清も、もちろん従ってもらうぞ?ちゃんと、雅様と恒吉さんの了解は貰ってるからな!」


「「えぇーーー」」

「声揃えてんじゃねーよ。アカとソウだけなんて、可哀想だとは思わねーのか?」

「「いや、別に。」」

「ひどっ!」

再び声を揃える重清と恒久に、アカが抗議する。


「ノリさん!2人もちゃんと巻き込んで下さい!」

「まぁ、言われなくてもそのつもりだけどな。あ、重清は罰ゲーム免除な。」

「へ?」

古賀の言葉に、重清が笑顔で間抜けな声を出す。

しかしその笑顔は、古賀の次の言葉で絶望に染まる。


「お前が罰ゲームの対象になった場合、その罰ゲームの時間を、雅様がくれってさ。プレッソも一緒に。」


「「はぁーー!?」」

今度は重清とプレッソが声を揃える。

「ちょ、重清!お前絶対全部80点以上取れよな!!」

「ノ、ノリさん!おれたちも、どうか罰ゲームの方でお願いします!!」

「ムリ。雅様の命令だもん。」


「だもん。って!可愛く言ったら許されると思ってないですか!?ちょ、マジでどうにかなんないんですか!?」

重清の魂の叫びを聞いたノリは、ニヤリと笑う。


「俺が、雅様の命令に逆らえると思ってんのか?」


「「・・・・・・」」

沈黙する重清とプレッソ。


「よしっ。全員が納得したところで、これからの方針な。」


((納得してねーよ!))

重清とプレッソが心の中で泣き叫ぶも、それに気付いても気にしないノリは、そのまま話を続ける。


「お前らにはこれから1ヶ月間、2つ目の属性を使えるようになってもらう!」


「2つ目!?」

それに反応したのは、1年生メンバーでなくシンだった。


「以前、ショウさんが2つ目の属性発動したときに、ノリさん言ってたじゃないですか!『この年で2つ目なんて、天才だ』って。それなのに、それを目指すんですか!?」


((((ショウさん、既にできてるんだ。))))

1年生メンバーが心の中で呟く。


そんな中ノリは、

「ありゃぁ、誰にも習わずにそこに行き着くのがすげーって意味だよ。確かに、2つ目の属性を使えるようになるのは、現在の高校のカリキュラムの第一歩だ。でもな、多くの中学では既に教えてるんだよ。まぁ、そこまで行き着くやつは、そこまで多くはないがな。」


「今、それをやる意味は?」

恒久がいつものように手を挙げる。


「この2つ目ってのはな、結構重要なんだよ。まず、ショウ、お前の忍力の属性は?」


「水、ですね。」

ショウが笑顔で答える。

「で、2つ目に使えるようになった属性は?」

「もしかして、木?」

そう言ったのは、ショウでなくソウだった。

「正解!」

それに、ショウは眩いばかりの笑顔で答える。


アカが、それに見とれていたのは言うまでもない。


「さすがソウだな。気付いたか?」

「はい。相生の関係、ですね。」

「そうだ。お前らが元々持っている属性と相生の関係にある属性。これを使えることを目指す!というか、それ以外の属性をいきなり使うのは、ほぼ不可能なんだけどな。」

ノリがそう言って笑って続ける。


「例えばショウの場合、元々水の属性を持っている。その水からは、木を生み出すことができる。これが相生の関係だな。だからショウは、木の属性も扱えるようになったって話だ。」


「じゃぁショウさんは、今度は火の属性を使えることを目指すんですか?」

木の属性を持つケンが、珍しく口を開く。


「いや、2つ目までは、高校のカリキュラムに入っているくらい、そこまで難しいものでもない。しかし、3つ目以降となると、難易度がぐっと上がる。だからショウは今回、使える属性を増やすことは目指させない。」


まぁ、ショウなら使えるようになるかもしれんがな、とノリが笑って続ける。


「えっと、じゃぁ、僕は今回何を?」

ショウが首を傾げる。

「お前は、俺と模擬戦だ。」

「えっ?じゃぁ俺たちの修行はどうするんですかい?」

ノブが尋ねると、ノリは、

「ちゃんと考えてるよ。お前らには、俺とは別に特別講師の方々を呼んでいる。」


(あれ、デジャヴュ??)

『特別講師』という言葉に、重清が反応した。


「ということで、お入りください。」

ノリがそう言うと、部室の掛け軸が光出す。


「兄ちゃん達!?それに、ば、ばあちゃん!?」

「親父っ!?」

重清と恒久が、叫ぶ。


「っていうかまたこの登場の仕方かよ!雑賀家!!と、親父。」

恒久が叫ぶと、重清が申し訳なさそうに呟く。

「ごめん、これ多分、ばあちゃんのお茶目な演出。」

「なんだよ、お茶目な演出って!お茶目って!なんか腹立つよ!!」

「え、あれ、シゲのお兄様なの!?弟と違って、カッコいいじゃない!」

「アカ!その弟って、おれのことじゃないよね!?」

「シゲ、公弘さんたちの弟は、シゲしかいないよ。」


相変わらずの、言いたい放題1年生メンバーであった。

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