第63話:それぞれの1時間

「親父、どういう風の吹き回しだ?」

それぞれが別れて、恒吉と2人っきりになった恒久が、父を睨みつける。


「なにが?」

息子に睨まれながらも、恒吉は平気な顔でそう返す。


「今までおれが、属性について教えてくれと言っても、何も教えてくれなかったくせに、なんで今更こんなとこに来てんだって聞いてんだよ!」

「なんだ、そんなことか。別に大した理由は無い。属性に関しては、高校のカリキュラムだってノリ君も言ってただろ?俺だって、平八様のことは尊敬してんだよ。だから、そのカリキュラムに沿わないことは勝手にしたくなかったってだけだよ。」


「・・・それなら、まぁ、納得してやるよ。シゲのじいさんって、そんなにスゲー人だったのか?」

「あぁ。ああいう人を、天才って呼ぶんだろうなって、思い知らされるような人だったよ。」

「そんなにかよ。1度くらい、会ってみたかったな。」

「まぁ、雅様だって同じくらい天才だけどな。」

「雅さんは、ノリさんが勝手に様付けてるって言い方だったけど、親父もそう呼ぶんだな。」

「雅様はあぁ言ってたけどな。多くの忍者は、あの人のことをそう呼ぶよ。それくらい、凄い人なのさ。」


「・・・そんなスゲー人たちの孫が、なんであんなバカなんだろうな。」

そう言って笑う恒久に、

「あの家族、過保護だろ?」

と、恒吉が苦笑いして答える。

「確かにな。」

「雅様も、口ではあんな感じだけど、重清君にだけは甘々みたいなんだよ。」

「それだけ可愛い孫ってことか?あれが?」

「ま、あそこにも色んな事情があるんだろうよ。っと、無駄話はこれくらいにするか。早速だが恒久。なんでノリ君は、敢えて今、2つ目の属性を使うことを目指すことにしたか、わかるか?」



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「相剋の関係、ですね。」

同じ頃、ケンとソウに恒吉と同じことは質問をしていた公弘に対して、ソウが答えていた。


「おっ、重清の友達とは思えない聡明さだね。さすが、聡太君だ。そのとおり。君たち属性は、木。だから、金の力には弱いだろ?そこで、2つ目の属性。木と相生の関係にある火を使えるようになれば、金に強い火が、有効になるってわけさ。」

「なるほど。」

ケンが納得したように頷く。


「ってことで、早速イメージしてみよう。」


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「イメージ??」

裕二の言葉に、アカが首を傾げる。


「そ、イメージ。火は、全てを燃やし尽くす。その後に生まれるのは、灰だ。その灰が、土になっていくイメージを持つんだ。そうしたら、土の属性が使えるようになるはずだよ?」


「んー、なんか、わかりにくいような・・・」

「そっかぁ。ごめんね。俺、あんまり人に教えるの特別じゃないからさ。このイメージ伝えたら、あとは2人にお任せしようと思ってたんだけど・・・」


「あのぉ。。。」

アカと裕二の会話に、シンが入り込む。

「おれ、火の属性の術って、火幻の術しか使えなくて、なんていうかその、燃やし尽くすってイメージが、なんとなく持ちにくいんですけど・・・」


その言葉を聞いて、裕二が目を輝かせる。

「おっ、じゃぁさ、とりあえず属性のことは一旦おいて、2人とも、新しく術でも目指してみる??俺、術作る方が得意だから。」

「それ、いいですね!!」

新しい術と聞いて、シンの目も輝く。


「まぁ、流石に作るのは難しいかもしれないけど、今ある術との契約くらいなら、2週間くらいかければ2つはなんとかなると思うんだ。」


「わたしは、裕二さんの案に賛成!」

「お、おれも!」

「よし、じゃぁ早速、頑張ってみよう!」



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「だぁっ!!わかんねぇ!!なんだよ!金属の周りに水がつくって!」

「文句言うんじゃないよ!!」

文句をつけ叫ぶ重清の頭に、雅の拳が振り下ろされる。


「いってぇ!!!」

「お、おい、シゲ、大丈夫か?」

そう言って駆け寄る、心優しきゴリラ、ノブ。


「ゴリ!あんたならわかるだろ!?」

「いや、俺はノブ・・・いや、まぁ、ゴリでいいんすけど。。。」

ノブが戸惑いながら返す。


(あんないかつい男が、ばあさんに翻弄されてるよ。)

プレッソが、なんとも言えない表情でそれを見ていた。


「で、ゴリ!どうなんだい!?」

「えっと、すんません。よくわかりません。」

「あーもう!揃いも揃ってバカだね!」


「シゲ。お前のばあさん、強烈だな。」

「でしょ!?いっつも感覚で伝えてきて、伝わらないとすぐ手を上げるんですよ!」

「無駄口たたかない!!」

「「はい!すみませんでした!!!」」

「こんなんで、大丈夫なのかよ。」


2人揃って謝るノブと重清を見て、プレッソがため息混じりにそう呟く。


「プレッソ!なに他人事の顔して見てるんだい!」

「はい!すみませんでした!!!」


本当に、大丈夫なのだろうか。



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それぞれが修行している頃、ショウはというと。


「はぁ、はぁ、はぁ。」

地面に寝転んで息を斬らしていた。


「どうだ、ショウ。格上との戦いは?」

先程までと違って、髪をオールバックにしたノリが、余裕の表情でショウに声を掛ける。


「お前は、確かに才能がある。2中忍者部の中じゃ最強だろうよ。だからこそ、格上と戦う機会なんかなかっただろ?今回は、俺が徹底的に叩いてやるよ。」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。もう一回、お願いします!」


「まったく。才能がある上に、向上心もあって、さらに感情に流されることなく冷静ときた。先生を思い出しちまうな。」

そう苦笑いして、ノリが再びショウへと襲い掛かるのであった。



こうして、各々の修行が幕を開けるのであった。

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