第53話:ソウの覚悟と反省会
中忍体のルールに沿った模擬戦が終わった忍者部の面々は、部室へと戻っていた。
「ソウ、大丈夫か?」
ショウとの戦闘で気絶に追い込まれたソウに、気遣うように重清が声をかける。
「ん?大丈夫だよ!痛みはほとんど無かったし。」
「・・・あの時、助けられなくて悪かった。」
「ほんとだよ~。全部を守るっていうんなら、ちゃんとぼくも守ってよ。」
ソウのその言葉に、「悪い。」と重清がつぶやくと、
「なんてね。ぼくさ、シゲの目標と覚悟を聞いて、決めたんだ。シゲが全てを守るなら、ぼくは絶対にシゲの後ろじゃなく隣で、それを全力でサポートする。そのためにぼくは、強くなる。」
「それが、ソウの覚悟なのか?いいのか、それで。」
「あのねぇ。昔助けてくれたこと、それだけぼくは感謝してるんだよ?」
「でもあれは・・・」
「わかってるよ。助けるつもりがあったわけじゃない、っていうんでしょ?でもね、いじめられていたぼくに、そんなことを気にせずに話しかけてくれたシゲの優しさがぼくを救ってくれたんだ。だったらそれはもう、シゲがぼくを救ったってことになるだよ。」
「そういうもんか?」
「そういうもん。助けられた本人がそう言ってるんだから、ウダウダ文句言わないの!」
「あれ?なんでおれ、怒られてんの?」
「ふふふ、ごめん。」
「いや、ソウのおかげでなんか吹っ切れたよ。ありがとな。それでこそおれの右腕だ。」
「え~!右腕だと、シゲの方が偉そうじゃん!せめて司令塔にしてよ。」
「はぁ!?それだとソウの方が偉いみたいじゃんか!」
「「・・・いったん保留で!」」
(まったく、なにやってんだよこいつらは。)
2人のやり取りを見ていたプレッソが、呆れながらも、笑顔で2人を見ていた。
「それよりシゲ、ぼくの言ってた場所に、あった?」
「おう、バッチリあったぜ!ソウ、どうやってわかったんだ?」
「うん、それはね・・・」
「はぁーい。色々と話したいこともあるだろうけど、まずはみんなで、今の模擬戦を振り返ってみよう。」
古賀の言葉に、各々話していた面々が古賀に目を向ける。
「さっき言ったとおり、結果はショウ率いるチームの勝利。シンとソウが倒されたことで持ち点がゼロとなったからだね。これについて、コメントのある人は?」
古賀の言葉を聞いて、ソウが口を開く。
「ショウさんと戦っていてわかったんですけど、属性には相性があるみたいで・・・」
「ソウ、すまないがその話は、最後にさせてくれ。」
ソウの言葉を、古賀が途中で遮る。
一番気になっていた話を最後に回されてしまったソウは、それでも仕方なく頷く。
「あの、シンさんは誰にやられちゃったんですか?」
続けて、重清が恐る恐るシンに尋ねる。
それを受けて、シンが苦笑いを浮かべる。
「あぁ、シゲがノブと別れてから、ノブはすぐおれのところに来たんだ。そのあと、ケンとアカも来て、戦闘になった。そこまではよかった。一応2対2で、互角だったからね。それからしばらくしたら、ショウさんとツネが来た。そこからはもう、ショウさんに袋叩きさ。」
「袋叩きは言い過ぎだよー。」
シンの言葉に、ショウが口を尖らせて返す。
「いや、あれだけのことをやって、よくそんなに可愛く言い返せますね。」
「「あははは。」」
シンの言葉に、恒久だけでなくアカまでもが、乾いた笑いをする。
(一体、ぼくが気絶している間に何が・・・)
ソウが2人の反応を見てそんなことを考えていると、重清が声をあげる。
「シンさん、ノブさん、すみませんでした!おれがショウさんたちを足止めできていれば・・・」
「いやいや、気にしないで!ソウがやられちゃったんでしょ?シゲとプレッソでも、ショウさん相手はきついって。そのうえツネもいたんじゃ、足止めなんてできやしないよ。」
「だろぉ?ほらな重清、オイラの判断は間違ってなかっただろ?」
シンのフォローに、プレッソが猫史上初めてのドヤ顔を披露する。
「重清、プレッソの判断は間違ってなかったよ。しかもきみたちはただ逃げたのではなく、その後にショウたちの隠した校旗まで見つけ出しているんだ。十分によくやったよ。」
古賀の言葉に、ソウ以外の全員が驚く。
「は、おまっ、あれ見付けたのか!?」
「まぁ、見つけたのはソウのおかけなんだけどね。」
恒久の言葉に重清が答えると、一同の視線がソウに集中する。
「アハハハ」
ソウの乾いた笑いだけが流れる微妙なひととき。
「ソウ、よかったら、説明してもらえる?」
ショウの言葉にソウは頷いて、話し始める。
「ぼくは最初、ノブさんと行動してケンさんとアカに出会いました。そこで劣勢になったので、一旦バラバラに離脱することになりました。
ノブさんと別れたあと、ケンさんとアカがノブさんを追ったことがわかったので、ショウさんたちを探せないかと思って、忍力を広範囲に広げてみようとしました。
そうしたら、レーダーに『探索』のアイコンが増えたんです。それをタップすると、3つの点からレーダーに現れました。そのうちの2つが、シゲに近づいていたので、それがショウさんとツネだと思いました。
それで残りの1つが・・・」
「校旗だった、ってわけか。」
最後のいいところをノブが呟き、ソウがそれに頷く。
「あくまでその時点では可能性でしかなかったけど、一応シゲと合流したときにそのことをシゲに伝えました。いざとなったら探してほしいって。その後は、シンさん同様、ぼくもショウさんから袋叩きに。」
「だから、それやめてってー。」
ショウがまたしても可愛く言うと、ソウの袋叩き現場を目の当たりにしていなかったアカが、今度こそ目をハートにしてそれを見ていた。
「それで、シゲが探してみたら見つけた、と。」
今度は恒久が、いいところを持っていく。
「そゆこと。」
重清が言うと、シンが感心したように言葉を吐く。
「はぁー、模擬戦の時から凄い武具だとは思ってたけど、ここまでだったとはね~。古賀先生、こうなってくると、ソウのレギュラー入りはほぼ確定なんじゃないですか??」
シンのその言葉に、古賀は素直に頷く。
「確かに、ソウの力は必要になるだろう。でもそれには、ソウの戦力強化が必須だね。まぁ、これはソウだけに言えることじゃないけどね。」
古賀の言葉に、ソウを含めた1年生4人が、頷く。
(やっぱり、新しい術、ちゃんと考えないと!)
重清は、古賀の言葉を聞いて、改めて決心するのであった。
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