第41話:重清とショウ 再戦?

「これで、残りはショウと重清だね。それにしても、ソウのレーダーは本当に便利な代物になってきたねー。」

「そうなんですよね。おれも、最初見たときびっくりしましたよ。でもこれ、中忍体みたいな集団戦ではかなり使えますよね。」

古賀の言葉に、模擬戦でレーダーの有能さを体験させられたシンがそう返す。


「そうだね。正直、ソウは中忍体のレギュラー最有力候補だよ。」

「レ、レギュラー!?」

ソウが、驚いて声を上げる。

「そ、レギュラー。中忍体の参加人数は6人だけど、うちには8人いるからね。これから少しずつ、みんなの実力や適性を見ながら選出していくつもりだよ。っと、それはさておき、ショウ、重清、準備はいいかな??」

「はーい。」

そう言ってショウが歩き出すが、重清はただ、俯いてその場から動かなかった。


「シゲ??」

ソウが心配そうに重清に声をかけると、

「っ!あぁ、悪い。大丈夫!すみません、今行きまーす!」

そう笑いながら言って重清はその場から走り出し、プレッソもそれに着いて行こうとする。

「プレッソ!シゲを、よろしくね。」

「これは、あいつ自身の問題だ。」

ソウの声に振り向くこともなくそう冷たく返し、プレッソは重清の後をついて駆けていく。

そんなプレッソの背を、悲しさと寂しさの入り混じった表情で、ソウは見つめることしかできないのであった。


「すみません、お待たせしました。」

離れたショウにギリギリ聞こえる声で、重清が謝ると、

「それは別に大丈夫。じゃ、始めようか。」


ショウのそんな声にも、反応することなく俯いている重清に対して、

「おい重清!聞いてるのか!?」

プレッソが声をかけるも、重清は無言で、ただプレッソに目だけを向ける。

「ちっ。お前が行かないなら、オイラが行く!」

そう言ってプレッソが、ショウに向かって駆けていく。


ハチとの修行により向上していたプレッソのスピードは、すぐにショウとの間を詰める。

さらにプレッソは、金の力を使えるようになっており、その力を込めた金属の強度を持つプレッソの爪が、ショウを襲う。


「やめろっ!!」

プレッソの爪をショウが杖で受ける直前、重清が叫び、そのままプレッソを自身の元へと召喚する。

「なっ!?重清、何やってんだよ!?」


突然重清の元に召喚されたプレッソは、重清に対してそう怒鳴る。

「わりぃ。つい・・・」


「シゲ、どうしたのかな??」

そんな重清とプレッソの様子を見ていたショウが、重清に声をかける。

「あっ、ショウさん、すみません。」

「謝ってほしいわけではないんだけどな。もしかして、古賀先生が言ってた『覚悟』が関係してるのかな?」

「・・・はい。」

「はぁー。そうだろうとは思ったけどさぁ。そういうのは、模擬戦始める前に心の整理しないと。申し訳ないけど、始まった以上こっちから辞めるつもりはないよ?

忍者って、そんなに甘くないと思ってるからね。

ってことで、そっちが来ないならこっちから行くよ!」

そう言って重清へと向かってくるショウ。


『忍者って、そんなに甘くない』

と言うショウの言葉が、重清の心に重くのしかかる。


「ちっ!」

それでもなお、ショウに対して構えもしない重清に舌打ちしながらも、プレッソは重清とショウの間に入り、構える。


「おごっ!!」

突然、重清の前にショウではない影が現れ、その影が繰り出した平手で胸を打たれた重清は、その衝撃で後方へと吹き飛ばされる。

「ぐっ!」

後方にあった木に、背からぶつかった重清は、その衝撃で意識を失いそうになりながらも、突然現れた影に目をむける。


「ば、ばあちゃん?」

そう呟き、重清の意識は途切れる。


「ノリ!!!」

突然現れた雅がそう叫ぶと、古賀は姿勢を正して声を出す。

「はいっ!」

「ちょっと、あのバカ借りていくよ!いいね!?」

突然のことに素が出ていた古賀は、気を取り直していつもどおりに雅に返す。

「はいはい。どうぞご自由に。こっちの体感では、すぐに戻ってくるんですよね?」

「そりゃ、あのバカ次第さ。プレッソ、あんたも付いてきな。」

「・・・おう。」


それだけ返事をして、プレッソは黙って雅の後ろをついていく。

雅は、気を失った重清を肩に担ぎ、その場を去っていく。


古賀を除く7人は、その突然の出来事に、ただただ呆然とするのであった。



重清を担いだ雅とプレッソが、忍者部の部室にある掛け軸から別の部屋へと移動すると、先程のダメージが回復した重清が雅の方の上で目を覚ます。


「へ?あれ?ここどこ?っぶへっ!!」

雅が目を覚ました重清を足元へと落とし、

「目が覚めたかい、重清。」

「ばあちゃん?あれ、なんで・・・」

そこまで言って、これまでのことを思い出した重清が、口を噤む。


「ここに連れてこられた理由、わかってるんだろう?」

「うん。」

重清の頭に、突然雅のゲンコツが振り下ろされる。

「いってぇ!!」


「まったくこのバカは!普段なんにも考えてないくせに、どうしてこう、細かいことで悩んでるんだよ!」

「細かいことでってなんだよ!?人を傷つけるかもしれないんだぞ!?そんなの、悩むなって方が無理だよ!!!」


そう言い返す重清の頭にそっと手をおいて、祖母の表情で雅が続ける。


「その優しさが、あんたのいいところでもあるんだけどね。あんたみたいな子たちのために、あの人がしっかりとしたカリキュラムを作ってるんだ。だから、そんなに考え込まなくても良かったってのに。」


「・・・へ??え、あの、あの人って・・・」


「あ。」

雅が初めて、『しまった!』という表情を浮かべた。

「あー、もう少し隠しとくつもりだったんだけどね。あの人ってのは、お前のじいちゃんのことだよ。現在の忍者育成カリキュラムは、お前の祖父、そしてあたしの愛しのダーリン、雑賀平八が作り上げたんだよ。」

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