第40話:ソウ対シン 再戦

「さてと、なんやかんやあったけど、ひとまず次に行こうか。次は、シンとソウだね。準備はいいかな?」


古賀の言葉にシンが頷き、歩き出す。


その後ろを、固い表情のソウがゆっくりと追いかける。


「もしかして、さっきの『覚悟』のこと?」

前を歩いていたシンが足を止め、振り返りながらソウに声をかける。


「っ!・・・はい。」

「んー、まぁ確かに、いきなり『覚悟』とか言われても困っちゃうよね。でもね、これ聞いて安心できるかわかんないけど、おれもまだ、多分その『覚悟』ってやつ、できてるかわかんないんだよね。」

「え??」

「いや、頭では分かってるんだ。人に重傷を負わせる可能性あるってこと。でもね、いざ自分がそんな環境に置かれた時、本当に出来るのか、正直自信はない。もしかしたら、直前で怖じ気ずくんじゃないか、ってね。」


そんなシンの言葉に、ソウは戸惑う。

先輩ですら未だできていないという覚悟を、自分ができるのか、と。


「中忍体って、あるじゃん?あれってね、今の模擬戦みたいに、刃物の刃は切れないようにするルールなんだよ。」


突然話題が変わったことに戸惑うソウに、シンが笑いかける。

「多分さ、この忍者のカリキュラム作った人って、おれたちみたいなやつのこと、よく分かってくれてたんじゃないかな?

今からそんな覚悟、しなくてもいいよ。少しずつ、考えていきなよ。って、なんかそう言われてる気がするんだよね。

お、なんか今の、先輩っぽくない!?」


「はい!まさに、先輩からのありがたい言葉、でした!おかげで、なんかぼくも心が軽くなりました!ありがとうございます!」


「そ、そうか。それなら良かったよ。」

自分の言葉に少し恥ずかしくなって、最後におちゃらけてみたものの、それでもシンの言葉にまばゆいばかりの笑顔でお礼を言ってくるソウに、顔を真っ赤にしてそう返すシンなのであった。


「2人ともー、そろそろ始めたいんだけどー?」

「っと、じゃぁ始めるか。」

そう言ってシンは、ソウと距離をとる。


「ショウさんから指導を受けてるソウを甘く見るつもりはない。悪いけど、前回よりもマジでいくよ?」

そう言ってクナイを具現化させるシン。


対するソウも、スマホ型になったレーダーを具現化して構える。


(おいおいおい、あれ、レーダーか?めちゃくちゃ小さくなってんじゃん!ショウさんの指導の賜物か?ソウの才能か?その両方か??どっちにしても、こりゃ油断できないね。)

そう考えたシンは、早速攻撃に移る。


4本のクナイを、以前のようにソウの周りへと打ち込むために、投げる。


ソウに目を向けながらの行動ではあったが、シンはソウが手元で視線も向けずにレーダーを操作しているのには気付くことができなかった。


そんなシンの投げたクナイは、ソウの周りへと刺さる、かに思われた。

しかしクナイは、その直前に全て撃ち落とされ、そのまま消滅してしまう。

ふとシンがソウの周りに目を向けると、そこには一輪の花が咲いていた。

(わぁ、綺麗!じゃない!あれは前回も使ってたソウの術か。前より大きくないか?)


ソウの木砲の術による花は3日間の修行により、一回り大きくなっており、それに伴い打ち出される種の威力も強くなっていた。


(ありゃぁ、当たったら痛そうだな。だったら!)

そう考えたシンは、火幻の術をソウに向かって放つ。


火幻の術は、炎を発生させ、その周りに炎の何倍もの大きさの炎の幻術を発生させる術であり、本来攻撃を目的としているものではない。

発生させる炎自体には、確かに攻撃力はある。

しかし、それはあくまで発生した炎のみにであり、炎の幻術には攻撃力はない。


それでもシンは、ソウに向けて火幻の術を放ったのである。


対するソウは、自身に迫る炎を前に、これの殆どが幻術であること見破り、レーダーを操作しながら炎の幻術を大きく避ける。


ソウがレーダーを操作すると、先ほどシンのクナイを撃ち落とした花が霧散し、再度花が出現する。


再出現した花は、今度はシンに向かって種を飛ばす。

(さっきはクナイ、今度はおれ。その間に一度、わざわざ術を発動しなおした??)


シンは、種を避けながら、クナイを具現化してソウへと投げる。

ソウはそのクナイを、木砲の術で撃ち落とすことなく避ける。


(ん?避けた?ってことはやっぱり。あぁ、うざったい!)

考えながらも種を飛ばしてくる花に、シンは火幻の術の炎で花を燃やし尽くす。


と同時に、先ほどソウに向けて投げたクナイを起点に、術を発動する。

(分身の術!)


4体の分身が現れ、それぞれがソウに向けてクナイを飛ばす。


木砲の術が焼却されたためにソウが再度レーダーの操作によって発現された花は、今度はソウに向かって飛んでくるクナイへと種を飛ばす。


種が2本のクナイを撃ち落とすも、残りの2本はシンの技の力によって空中で大きく種をよけながら、なおソウへと向かっていく。

ソウはクナイに目を向けながらも、シンの居場所を探る。

クナイが飛んでくることに気を取られている間に、シンは姿を消していた。

しかし、ソウの感知能力はすぐにシンの居場所を把握する。

「上っ!」

「っと、やっぱばれるか。でも、おれの予想が正しければ、種は飛んでこない。だろ?」

「っ!?」


笑いながら降りてくるシンに対し、ソウは木砲の術で攻撃することなく上からのシンの攻撃に構える。

シンが空中で縦に一回転し、その勢いのままかかと落としを仕掛けてくる。

それに対してソウは腕を上に向けて交差することで防ごうするも、落下の勢いと回転により威力の上がったかかと落としの勢いをすべて抑えることはできず、勢いを殺されたシンのかかと落としが、そのままソウの頭部を直撃する。


「そこまで!」


そこで、古賀の声が鳴り響く。


頭部へのダメージにより、膝をついているソウに対し、シンが声をかける。


「ソウ、お前のそのレーダー、めちゃめちゃ便利だな。でもあれだろ、おれの攻撃を撃ち落とした攻撃と、おれを追ってくる攻撃。あれ、二つ同時にできないんじゃないか?」

そのシンの言葉に、ソウは頭をさすりながら頷く。


ソウのレーダーには、3日間の修行の間で、3つのアイコンが搭載されていた。

そのうちの2つは『同期』と『追尾』。そしてもう一つが、ショウとの修行の間に新たに出てきたアイコン、『迎撃』。相手からの攻撃に対して攻撃をする機能を持ったアイコンである。


しかし、修行の中でソウは気づく。『追尾』と『迎撃』の同時使用ができないことに。

正確には、それぞれのアイコンに一つの忍術のセットが可能のようであったが、現時点で使用できる忍術が一つしかないため、どちらのアイコンにも木砲の術をセットしたところ、『追尾』を使用したまま『迎撃』をしようとすると、先に使用していた『追尾』が無効となってしまうのであった。

これが、同じ術であるためなのか、そもそもアイコンの同時使用ができないのかは、新しく術を覚えて確認しないと、わからないのであった。


そのことをシンに説明すると、

「うわ、これで同時使用が可能だったら、おれ確実に勝てないわ。ってかそのレーダー、結構チートじゃね?」

「やっぱりですか?最近ぼくも、そう思うようになってきたんですよ。」


そう言って笑いあう、2人なのであった。

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