第39話:アカ対ケン 再戦
ノブと恒久の模擬戦後、ノブがクレーターを作ってしまったことによりその場での模擬戦実施は不可能と考えた古賀の提案により場所を移動した一同に、古賀が声をかける。
「この辺でいいね。じゃぁ、次はケンとアカ!準備はいいかな?」
古賀の言葉に、既にお互いに距離をとって構えていたケンとアカが、それぞれに頷き返す。
「では、始めっ!」
その声と同時に、2人がお互いに距離を詰める。
シンが、そのまま刀による突きを繰り出してくるも、アカはそれを無視して腕を交差して上段に構える。
アカの胴体に迫った突きは、直後に幻となって消えてなくなり、アカが上段に構えた手甲と、ケンの刀がぶつかる。
「心の力の修行は、バッチリだな。」
「お陰様でっ!」
そんな一瞬の会話のあと、ケンは後方へと飛びのき、
「これならどうだ?」
そう言ってその場での刀を振るう。
すると、そこから斬撃が飛び、アカを襲う。
(あれは、忍力を斬撃として飛ばしてる!?ケンさんは木の属性のはず。だったら!)
アカは即座に考えて、火鎧の術を手甲に集中させて斬撃を受ける。
火を纏ったアカの手甲に衝突したケンの斬撃は、手甲にぶつかると同時に燃えるように消滅する。
「洞察力も、咄嗟の判断力も良い。あのゴリラとは、また違った接近タイプだな。」
ケンの斬撃を防いで安心していたアカのすぐ近くで、ケンのそんな声が聞えた。
「でも、油断はダメ。」
すぐにその場から逃げようとするアカだったが、いつの間にか足に蔓が巻き付いており、その場を動くことができなかった。
「ぐっ!」
そのまま、ケンの蹴りが、火の鎧を纏うアカの肩に直撃する。
本来であれば足を拘束されているアカは、そのまま衝撃で後ろに倒れるはずであったが、直前にケンが術を解除していたことにより、アカの体はそのまま衝撃で後ろへと飛ばされる。
しかしアカの体が衝撃で後方へ飛ばされる前に、突如アカの背後に壁が出現し、アカはそのまま壁に激突することになる。
「ぐっ!これは、はぁ、シンさんから聞いてきた、はぁ、ケンさんの木壁の術?はぁ、はぁ。」
「正解。で、続き、やる?」
「はぁ、はぁ、もう少しだけ、お願いします!」
「よし、じゃぁ今度はお前からかかってこい!」
そう言ってケンは再度アカと距離をとる。
それを見たアカは、息を整えて構え直す。
そしてそのまま、ケンへと向かって走り出す。
アカが向かってくるのを確認したケンは、2人の間に木壁の術を発動させる。
先程アカの背後に発現したものとは違い、アカの視界を塞ぐ程の壁が、そこに現れる。
(さてどうする?流石にお前の体の力だけじゃ、これは破壊できない。横に避けるか、まさか飛び越えて来るか?)
目の前に木の壁が出現したのを目の当たりにしたアカは、考える。
横か、上か。
しかしアカは、そのどちらも自分の中で瞬時に却下する。
アカは苛ついていた。先程大きなダメージを受ける原因となった、この壁に。
そう、ケンに対してではなく、壁に。
模擬戦である以上、攻撃されることは仕方がない。
だからこそ、ケンに対して苛つくわけにもいかない。
結果として、アカが苛つきの対象としたのが、目の前の壁だったのである。
木壁からしたら、完全にただの八つ当たりである。
ただ、ケンに発現されただけなのだから。
もちろん、木壁に感情はない。
ただそこに、悠然とそびえ立つだけである。
しかし、もしも木壁に感情があったならば、おそらく考えただろう。
(いや、おれ(もしくは、わたし)関係ねーし。)
と。
そんなことはさておき、木壁が目前に迫るアカは、ただ考える。
(この壁ぶん殴らないと気が収まらない!絶対にぶっ壊す!!!)
シンに対してもそうであったが、アカは可愛い顔して意外と暴力的な女子であった。
そんな暴力女子は、ただ木壁の破壊だけを考える。
(わたしの体の力だけじゃ無理。火、大きな火が、この拳にあれば!!)
そう考えながらアカは、手甲をはめた拳に、ありったけの火の属性の忍力と、体の力を集中させる。
「ピロリンッ♪」
そんな着信音がアカの頭に鳴り響くと、アカの手甲をつけた手に炎が宿る。
アカの全力の体の力と忍力を吸収した大きな炎が。
それを見たアカは、それを木壁にぶつけるべくさらに加速する。
そして、
「ドゴォーーーン!!」
大きな音と共に、アカの拳が木壁を突き破る。
「なぁ!?」
流石に木壁を破壊されるとは思っていなかったケンが、驚愕の表情を浮かべて、アカを見ていた。
ケンのそんな表情を見ることができて満足したアカは、
「やったぁーー!っ、あれ??」
そのまま膝から崩れ落ちる。
「そこまでっ!」
そこで、古賀のストップがかかる。
「忍力が切れたみたいだね〜」
古賀が近付きながら、アカに声をかける。
「に、忍力が??」
「そ。さっきアカは、ケンの土壁の術を破るのに、ありったけの忍力を使ったでしょ?それで、アカの忍力がなくなっちゃったんだよ。体の力も使い切ってるから、さらに体に力が入らないはずだよ?」
「あー、確かに。」
「でしょ?そう言えばアカ、余裕があればなんだけど、忍術契約書、出せる?」
そう言われたアカは、満身創痍ながらも、忍術契約書を出現させる。
アカ自身も、先ほどの頭の中で聞こえた着信音のような音が、気にはなっていたのだ。
アカが出した契約書を、その場にいた全員がのぞき込む。
--------
忍術契約書
契約者 甲賀 アカ
作成した忍術
なし
契約した忍術
火鎧の術
炎拳の術
--------
「術が、増えてる??」
「そうみたいだね。アカはあの時、この術と契約できる要件を満たしたんだよ。」
「要件??」
アカではなく、ソウが聞き返す。
「そ、要件。今回の場合はおそらく、体の力と忍力、この二つがこの炎拳の術という忍術の発動条件だったはずだ。これらの力の割合が、アカがさっき込めたそれぞれの力の分配と合致したんだ。本来、ここまでの条件が揃うと、契約の前にその忍術の契約書が現れる。そこで、他の契約条件だったりを提示されるんだ。でも今回の忍術は忍者協会が管理する初歩的な忍術だった。だから、そのまま契約された直ぐに使えるようになったんだろうね。」
「はぁ。あの土壇場で、術契約するかよ、普通。」
「わたしすごくないですか!?やっぱりわたしは、強くて可愛い忍者なのよ!」
ケンのため息交じりの言葉に、アカが立ち上がってそう叫ぶ。
忍力や体の力は、もう大丈夫なのだろうか。
「強くて可愛い忍者に、そんなの関係ないの!!!」
アカが、誰にともなくつっこむのであった。
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