第36話:アカの修行
場所は変わって、それぞれが修行を行っている森の一画。
同じ森であるにも関わらず、そこには生い茂った木々はなく、ただ焼け残った木々が並んでいた。
「はぁっ!」
その中では、アカが向かってくる炎を避け続けていた。
。
「違う違う、それは幻!あ、そっちは本物!!!」
そう言って、アカを見ていたシンが術を止める。
「んー、まだまだ幻術と本物の区別ができてないねぇ。っていうかアカ、大丈夫??」
心配そうにシンがめを向けた先のアカは、所々制服を焦げさせてその場にへたり込んでいた。
「これ、大丈夫に見えます!?ソウとの模擬戦の時から思ってましたけど、シンさん加減って言葉、知ってます!?」
アカが不機嫌そうにシンを見返すも、
「いやぁ、これでも結構手加減してるんだよ?」
シンが笑って答えるのを恨みがましく見ているアカは、その場に寝転んで叫ぶ。
「あーーー!もう全然幻がわからなーーーい!しかも教えてくれる人が意地悪するぅ~~~~!」
「いやいや、意地悪て。そんなつもりもないのにな~」
アカの言葉に苦笑いをしながらシンが仕方なさそうに話し出す。
「じゃぁ、ちょっと教えてあげようかな。そもそもアカ、どうやって幻を見分けようとしてる?」
「どうって、それは、目で・・・」
「いやもうそれ、見極めるつもりある!?先生言ってたよね?きみは心の力の使い方がまだまだだって。で、この修行だよ!?もう心の力使うのはわかりきってるよね!?」
「ほら~。そういうところですよ~?そんな言い方、しなくてもいいじゃないですか~!こっちだって一生懸命頭使って考えてやってるのに~。そんなんだと、女の子にもてませんよ~?」
「うっ。ご、ごめんなさい。今後はもう少し発言に気を付けるよ。じゃぁ、もう少し詳しく、幻術の見分け方について説明するよ。その代わり・・・・」
「その代わり?」
「どうしたら女の子にもてるか、教えてくれない??」
「ぷっ!あははははは!先輩、そこ気にしてたんですか!?わかりました!私の知識を総動員して教えてあげましょう!」
アカが自信たっぷりに答える。
「よし。じゃぁ、そっちの話はまた後日お願いいたします。と、それは置いておいて、早速だけど幻術を含めた幻の見分け方について説明を始めるよ?」
「その切り替えの早さもものすごく気になりますけど、わかりました。お願いします!」
「うん。じゃぁとりあえず説明始めるよ。といっても、そんなに難しいことではないんだよね。心の力を、目に集中させるように意識するんだ。慣れれば、それで幻や幻術をある程度は見分けることができる。もちろん、相手の術者の力量にもよるから、一概には言えないんだけどね。ここまではいいかな?」
アカが黙って頷くのを見て、シンが続ける。
「というか、通常はこの力も含めたすべての力を展開しておいた方がいいんだ。忍力の感知による全方位への警戒、心の力による幻術への対策、技の力による武具使用の準備、体の力による身体能力及び反射の強化。これらをすべて、戦っていないときにも展開しておくのが望ましいといわれているんだ。」
「え、日常生活でもですか!?」
「たぶん、正式な忍者になったらそうする必要があるのかもしれないけど、我々中学生にはそこまでは求められていないみたい。今のところは、模擬戦中、と思っててくれればいいと思うよ。ってことで、今のを意識して、もう一回やってみようか!」
笑顔で言うシンに、嫌々ながらアカは腰を上げる。
「火幻の術!」
アカの準備が終わり、二人の距離がある程度あいたところで、シンが忍術を発動する。
火幻の術は、火を発現させ、その周りに火の幻を作ることで大きな炎に見せる術であり、先ほどからシンはこの術をアカにかけ続けていたのである。
アカにとってこれまで何度も見た術ではあったが、これまでは幻を見分けることができなかった術でもあった。
そう、あった、のだ。
アカは、シンからのアドバイスのとおり目に心の力を集中させることで、辛うじて火の幻を見破ることに成功していた。
辛うじてではあっても、アカにとっては自身の成長を感じることのできる成果であるのは間違いなく、アカ自身もこの結果には喜びを得ていた。
「少しだけど、でも明確に今までと違う!シンさん、早く教えてくれればよかったのに!」
「はいはい、無駄口叩かずに避ける避ける~」
シンの声を聴きながらも火の幻を避けていき、そのままシンの前に到着するアカの制服は、それでも少し燃えていた。
「まだまだみたいだね。服燃えちゃってるよ?ん??」
アカにそう話しかけるシンが、話しかけながら気づく。
「火鎧の術か。ちゃんと術でガードまでしてたか。それに、武具まで出して・・・」
そう話している間に、アカがシンに向かって飛び出し、拳を突き出してくる。
「今までさんざんやられた分、いったんここで返させてもらいます!!」
アカの拳が、シンの腹へとヒットしたかに思えた瞬間、シンの姿が霧となって消滅する。
「はぁっ!?これも幻術!?」
「残念だったね~。火幻の術を抜けたときのために、それよりも精度の高い分身の術を準備してました~。」
そういってシンが姿を現す。
「あぁ~~~~!もう!すっごいむかつく!!!!!こうなったら、意地でもシンさんを一発殴ってやらないと気が済まないわ!!!」
「そう言われたら、こっちとしても怖くて殴られるわけにはいかなくなってくるね。じゃぁ、こっちはおれの力を駆使して、意地でも逃げ切ってやろうか。今日も含めて3日間、殴るか逃げ切るか。おれとしては何とも情けない鬼ごっこだけど、どっちが勝てるか勝負だよ。」
「その勝負、のってやろうじゃないの!あたしが勝てなかったら、シンさんに友達紹介してあげます!」
「お、それはモチベーション上がるね。じゃぁ、もしアカが勝ったら?シンさんの同級生で、かっこいい人紹介してください!」
「わかった。じゃ、やる?」
「はい!!!」
邪な目的をもった2人の真剣勝負が、幕を開けるのであった。
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