第27話:恒久対ノブ、アカ対ケン
森に出た一同に向き直った古賀が、重清たち4人に対して口を開く。
「じゃぁ、早速模擬戦に入ってみよう!今日のところは、先輩たちが相手をしてくれるからね。」
「いきなり先輩とですか!?」
そう言った古賀に、恒久が声をあげる。
「いや、最初だからこそ、先輩となんだよ。きみたちは今日初めて忍術を使うだろう?いきなり1年生同士で模擬戦をやると、下手すると大事故になりかねないからね。その点彼らなら、きっとその辺は大丈夫なはずだよ。多分ね。」
((((いや、そこは言い切って!))))
4人が心の中でつっこむ。
「それに、今のきみたちでは彼らを傷つけることもできないだろうしねぇ。」
そう言いながら目を向けてくる古賀にイラッとした恒久が、普段の口調を忘れて前に出る。
「そこまで言うんなら、やってやろーじゃねーか!」
「威勢がいいなぁ!よし、お前の相手はオレだ!」
そう言ってノブが前に出る。
「よし、じゃぁ初戦は決まったね。制限時間は5分にしとこうか。2人とも、準備はいいかな?」
「あ、その前に1つ。」
さっきの威勢の直後に聞くことに若干の恥ずかしさを感じながらも、恒久が手を挙げる。
「忍術って、どうやって使えばいいんすかね?」
「一度契約した忍術は、忍力を展開しながら『この術を使う』ことを念じるだけで、簡単に出せるはずだよ。いわゆるショートカットだね。逆に、その方法を使わずにその忍術に必要な心・技・体の力と忍力を練り合わせて発動することもできる。こちらの方法の方が、色々と応用もききやすいんだけど、流石に今日はそれは難しいだろうから、今回は前者の方法を使うといいよ。じゃ、いいかな?他のみんなは少し離れよう。」
恒久とノブ以外のメンバーが離れたことを確認して、古賀が声を発する。
「始めっ!」
その声を聞くと同時に、恒久は武具の手裏剣を具現化する。
そのときには既に、ノブの拳には武具のナックルがあった。
(チッ、具現化一つとってもこの差かよ。)
そう考えながらも、恒久は手裏剣をノブに向けて投げる。
(武具分身の術!)
恒久がそう念じると、投げた手裏剣が4つになる。
1つの本物と、3つの幻術となった手裏剣がノブを襲う。
対するノブは、4つになったことなど気にも止めないようにそのうちの本物である1つの手裏剣をそのまま拳で殴って弾く。
本物が弾かれたことで、他の手裏剣はそのままスッと消えていく。
「なぁ!?」
まさか拳で簡単に本物の手裏剣を弾かれると思っていなかった恒久が声をあげている隙に、ノブが一気に恒久との距離を詰める。
(クソっ、じゃぁ幻刀の術だ!)
そう考えて、術を発動させようよ忍力を展開させる恒久。しがし。
(発動しねぇ!どうなってんだよ!)
そう思っている間に、ノブはすぐ近くまで来ていた。
慌てて恒久は、土穴の術を発動させる。しかし地面に穴が空いたときには既にノブはその場を通り過ぎており、
「そこまで!」
恒久の目の前に、ノブの拳があるのであった。
「んー、ノブさぁ。一気に決めすぎだよ?もう少し恒久の動きを見たかったのにー。なんのための模擬戦なのさ。」
と、ジト目でノブ見る古賀に、
「すんません。つい。」
と、ショボーンとしながらノブが答えるのであった。
((((いや、いかつい男のショボーン姿とか見せられても))))
そんな4人の心の声など知る由もない古賀は、
「恒久、悪かったね。もう一戦やる?」
と恒久に聞くも恒久は、
「いえ、先輩方との差を実感出来ただけでも収穫はありましたので。ノブさん、ありがとうございました。」
そう言ってノブに頭を下げる。
「ハッハッハ!そう言ってもらって助かる!」
先程までのショボーンな姿とうってかわって、ノブが豪快に笑いながら親指を立てるのであった。
「さて、じゃぁとりあえず模擬戦の評価は最後にまとめてするとして、次にいこうか。誰かやるかな?」
「はい!わたしやります!」
古賀の言葉にアカが前に出ながら答える。
「こっちはおれが。さっきの猿みたいなことにはならないようにする。」
「うぉぉい、ケン。猿はないだろ猿は。せめてゴリラにせんかい!」
(((ゴリラはいいんだ)))
アカ以外の3人の心のつっこみをよそに、アカとケンが前に進み出る。
そして、お互いが距離を取って向かい合い、
「始めっ!」
古賀の声が響き渡る。
「火鎧の術!」
アカがそう言うと、アカの周りに火が現れ、アカの体を包んでいく。そしてアカは、同時に手甲を具現化する。
アカは火を腕、体、そして足に纏い、考える。
(体の力で拳を強化できるのなら・・・)
アカは体の力を足へと集中させ、ケンへと向かって走り出す。
(やっぱり、スピードがあがってる!)
「ほう。」
それを見たケンは、感心して既に具現化していた刀を構える。
そしてアカから突き出された拳を回避して、アカの後ろへと回り込む。
(わかる!後ろにいるのがわかる!)
そう思ってアカが後ろを振り向くと、既にケンの刀がアカへと振り下ろされるところであった。
アカは咄嗟に、手甲で刀をガードする。
しかしケンの刀は、アカの手甲に当たると同時に、霧のように散る。
(幻術!?)
アカがそう思った途端、火の鎧を纏う腕に衝撃が走る。
その衝撃に驚いたアカは、すぐにその場から距離を置き、衝撃のあった腕に目をやる。
「安心しろ。この刀、切れないようにしてる。それより腕の具合、どうだ?」
ケンがアカに話しかける。とても模擬戦の途中だとは思えない程に普通に。
「あれ、思ったほど痛くない!」
「そうか。じゃ。そろそろおしまい。」
そう言ってケンがアカへと向かってくる。
先程ごく普通に話しかけられたことによって油断してしまっていたアカは、ケンの攻撃に対応できないと判断してその場から逃れようとする。
(うっ、足が。)
そう思って自分の足に目を向けると、植物がアカの足に絡みついていた。
アカが足から目線を上げたときに初めて、ケンの刀が首筋に当てられていることにアカは気づく。
「そこまで!」
古賀の声がまた、鳴り響く。
「ノブ、こういうこと。」
ケンがノブに対してニヤリと笑いながら言う。
「わ、わかっとるわい!嫌味なやつだ!」
ノブが拗ねたようにそう返す。
「さてと、次にいこうか。どっちがやるかな?」
これまで、人と戦うということにどこか尻込みしていたソウが、恒久とアカの模擬戦に触発されて、前に進み出る。
「ぼ、ぼくがやります!」
「じゃ、次はおれかな?」
そう言って、シンが前へと出てくる。
そして二人が、向かい合う。
「始めっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます