第28話:ソウ対シン、重清対ショウ
「始めっ!」
古賀の声と同時に、ソウの前後左右にクナイが刺さる。しかしクナイは、ソウから2メートル程も離れたところに刺さっていた。
「あ、勘違いしないでね?わざと外してるんだからね。分身の術!」
と、シンの声が先程までいたソウの目の前でないどこかから聞こえてくる。
その声と同時に、クナイのあった場所に4人のシンが現れる。
(幻術!?レーダーを!)
そう思ってソウは、咄嗟にレーダーを具現化する。
「あれっ?」
レーダーを見たソウは、そんな声を上げる。
何故ならレーダーには、中心にしかなかったからだ。
(う、上!?)
ソウが上を見上げると、すぐそこにシンの姿があった。そのままシンは、ソウの持つレーダーを殴り飛ばす。
シンの攻撃でレーダーを飛ばされたソウは、慌ててレーダーと逆の方へ回避してしまう。
すると、4人のシンとそこにあったはずのクナイが消失する。
「仕切り直し。本当だったらここで一気に終わらせるところだけど、今日は色々と試したほうがいいでしょ?」
そう言ってシンが、改めてクナイを具現化する。
それを聞いたソウは、少し悔しい気持ちになりつつ、一度レーダーの具現化を解除してから、再度具現化する。
そしてすぐに、レーダー上のシンの点にタッチしてマークする。
(木砲の術!)
ソウが念じると、一輪の花が出現する。
(木砲なのに、花!?)
そうソウが考えていると、
「準備は出来たみたいだね。じゃ、いくよ?安心してね、このクナイも当たっても切れないようにしてあるから。それでも、痛いのはかわらないけど、ねっ!」
そう言いながらシンが3つのクナイをソウの周りへと投げつける。
「分身の術!」
シンのその声と同時にまた、シンの分身が現れる。
周りに現れたシンが幻術だと思ったソウは、それを気にせず花に攻撃するよう念じる。
すると、花はソウの後ろへと種を飛ばす。
「おっと。」
そう言いながらいつの間にかソウの後ろにいたシンが種を避けるが、種はそのまま方向転換してシンに再度襲いかかる。
シンはそれを手に持ったクナイで弾き落とす。
「ほんとに追尾してくるよ。やっかいだね。」
シンがそう言っていると、突然ソウの腕に痛みが走る。腕を見ると、そこが赤くなっており足元にはクナイが落ちていた。
(まさか、あの分身が投げた!?やばっ!)
そう考えながらその場を避けると、シンの分身がさらにクナイを投げてくる。
ソウがそのクナイを避けると、ソウの横を過ぎたクナイの場所に再度分身が現れ、またクナイを投げてくる。
3人のシンの分身から投げられるクナイ避けながらもソウは、木砲の術での攻撃をやめなかった。しかし、サッカーボールサイズのレーダーを持ちながら避けるのは、長くは続かなかった。そして、
「あぁっ!」
3つのクナイが、ソウの腕、足、胴体へと直撃する。
「そこまでっ!」
古賀の声が鳴り響く。
「シン、ちょぉーっとやりすぎなんじゃない?ソウ、大丈夫かい?」
「いてててて。はい、シンさんの言うとおり痛くはありますけど、切れたりはしてませんから。」
「ソウ、ごめん!先生の言うとおり、やりすぎた。正直、お前の術に焦っちまった。」
「いえ、シンさんが一度仕切り直してくれたおかげで、今の自分の力を確認することができました。ありがとうございました。」
お互いにそう言って、頭を下げる。
「よし、これで残りは重清とショウだね。準備はいいかな、」
そう言われて重清は、「よ~し、プレッソ、行くぞ!」そう言いながら前に出る。そして気付く。
(あれ、そういえばおれだけ、どんな術か聞いてなくね!?)
「あ、せんせ・・・」
「始めっ!」
「うぉーーー!始まっちまったよ!とりあえずやってみるか!鉄壁の術!」
重清がそう言って鉄壁の術の発動を念じると、重清の目の前に鉄の盾が現れる。
しかし、その盾は、3秒ほど出現したまま空中で留まった後、消失する。
ショウはそれを、笑顔でそれを見守って、
「もう、いいのかな?」
と口にだす。
「あ、もう少し待ってください!」
「ん~、とりあえずここで待ってるから、いつでも攻撃してきてね~」
そう言って杖を構えて重清をただ待つショウ。
「よし、プレッソ!鉄玉の術だ!多分ソウみたいな遠距離用の術っぽいから、そのままショウさんに攻撃するぞ!」
「おっけぇーい!いくぜ!鉄玉の術!」
プレッソが叫ぶと、その体が輝き始める。そして。
プレッソのいた場所に、野球ボールサイズの鉄の玉が現れる。
「いやお前が鉄玉になんのかよ!でもあれなら・・・」
そう言いながら重清がプレッソ、もとい鉄の玉を掴み、
「いくぞ、プレッソ!」
「は、え、お前、まさか!」
「いっけぇーーーー!」
そのままショウに向かって投げる。
「のぉーーーー!」
プレッソの悲痛な叫ひをあげながら、ショウへと襲いかかる。
やっと来た攻撃にショウは、持っていた杖をバットのように持ち直し、そのまま打ち返す。
打ち返された鉄の玉は、真っ直ぐに重清に向かって飛んでいくが、
「痛ってぇーー!」
杖で打たれた痛さでプレッソの術が解かれ、そのままプレッソは重清にぶつかる。
「ショウ選手、見事なピッチャー返しです。ごめんね、プレッソ。」
ショウがそう言って舌を出す。
約1名、見学者の目がハートになっていることも知らずに。
プレッソとぶつかった重清は、ぶつかった頭をさすりながら立ち上がる。
「これで、術の効果はだいたい把握できたかな?じゃぁ次は、こっちから行くよ?」
そう言ってショウが、重清へと向かっていく。
「プレッソ、起きろ!ショウさんが来る!」
「わかったよ!重清、覚えとけよ!?」
プレッソにそう言われながらも重清は、アカの模擬戦を思い出しながら手と足に体の力を集中させる。
「迎え撃つぞ、プレッソ!」
「おぅ!」
そう言い合う間に、ショウは重清の目の前まで来ており、そのまま重清に杖を振り下ろす。
「今度こそ、鉄壁の術!」
重清と杖の間に鉄の盾が出現し、ショウの攻撃を防ぐ。しかし鉄の盾は、ショウの攻撃を防ぎはしたものの、グニャリと曲がって、そのまま消滅する。
(今、あの盾曲がったぞ!?そんなに強度ないのか!?)
そう重清が考えている隙に、ショウは再度重清に杖を振り下ろす。
「させるかよっ!」
その声とともにプレッソが、横から杖を持つショウの右手に体当たりをする。
ショウはプレッソからの体当たりでバランスを崩すことなく体当たりされた勢いに乗ってそのまま横に回転し、回転の途中でプレッソを左手で回収して、杖を重清の頭部に当てる直前で止める。
「そこまでっ!」
そこで、古賀が終了を告げる。
「さて、これでひとまず全員の模擬戦が終わったね。重清、最初のグダグダ、普通だったらその隙を見せた時点で負けちゃうんだからね?」
「わ、わかってますよ!次からは気をつけます!それよりショウさん、色々とありがとうございました!」
そう言いながら重清はショウへと頭を下げる。
「いえいえ。それよりプレッソ、痛くなかった?ごめんねぇ!」
そう言ってショウは、プレッソを抱きかかえるのであった。
「ほんと、あれメチャクチャ痛かったんだからな!?」
と、心地良いショウの胸の中で、落ち着いた顔のプレッソが文句を言う。
全くもって、説得力はないのであった。
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