第25話:忍術契約書
3人がそれぞれの試験をクリアして、一行は忍者部の部室へと戻ってくる。
戻ってすぐシゲが、同級生3人と、先輩4人、そして古賀に対して頭を下げる。
「この数日間、本当にすみませんでした!自分が試験一つもクリアできなくて、焦って、追い込まれて、全然周りが見えてませんでした。皆さんには、たくさんご迷惑をおかけしてしまいました!これからは心を入れ替えて、日々頑張っていきますので、今後ともご指導ごべんたちゅのほど、よろしくおねがいいたしびゃしゅ!!」
シゲの渾身の謝罪を聞いた一同は、笑いだす。
「シゲ~、この大事なとこで普通噛む??」
「ソウ、そこはつっこまないで!?」
「いやソウ、こういう大事なとこで噛むのは定番だぞ?それよりシゲ、お前最後は巻き返せないとあきらめて、わざとかんだろ?」
「ちょ、ツネ、なんでわかるんだよ!?」
「重清~、お前ほんとに反省してんのかよ~」
「あ、プレッソ!お前まで裏切るのかよ!?」
「あ~もうあんたたち、いい加減にしなさいよ!バカがバカなりに一生懸命難しい言葉使って謝ろうとしてんだから、そこは聞き流してやんなさいよ~」
「あれアカ、フォローしてくれると思いきや、一番ひどくない!?」
ショウ「ふふふ、今年の1年生は本当に元気だね。」
シン「ショウさん、楽しそうですね。なんか、これから騒がしくなりそうだな~。」
ノブ「ハッハッハ!シゲ、良い謝罪だったぞ!許してやるからもう気にすんな!」
ケン「騒がしい奴らだ。」
「はいはい、とりあえずシゲの噛みに噛んだ謝罪も終わったことだし、話を進めていいかな~」
そう言って、古賀が謝罪騒ぎを収める。
「とりあえず、これで4人全員が全ての試験をクリアすることができたね。おめでとう、これできみたちは、正式に忍者部の部員となる。まずはシゲツネと。きみたちは、昨夜私との契約を破棄して、それぞれ雑賀重清、伊賀恒久の忍名を授かった。本来血の契約者は、師として血縁者を選ぶことができる。そうすることで、よりそれぞれの家での専門的な指導も受けることが出来る。ただ私としては、できればきみたちには今後も、他の中学生契約者のために作られたカリキュラムに沿って、私の指導を受けてもらいたいと思っている。どうかな?」
古賀にそう聞かれたシゲは、
「古賀先生のご指導を受けたいです!!」
と、即答し、プレッソも何度も頷いていた。
「きみたちは、私の指導を受けたいんじゃなくて、雅様の指導を受けたくないだけだろうに。」
と、苦笑いする。
「おれも、先生の指導を受けたいです。おれだけ除け者ってのも、なんかやですから。ちなみにですが、先生の指導を受けながら、父からも指導を受けることは可能なんですか?」
「あぁ、その辺は問題ない。ただし、この空間を使えるのは私の指導の時だけだから、恒吉さんからの指導では、ここは使えないからその点はよろしくね。だから、シゲ、きみも雅様の指導は、いつでも好きな時に受けていいんだからね。」
と、古賀が重清に対して笑顔を向ける。
((嬉しくねーー!))
重清とプレッソが、心の中でそう呟く。
「では2人とも、これからも私の弟子として扱わせてもらうよ。今後は、これまでの忍名ではなく、重清、恒久と呼ばせてもらうよ。みんなはこれまで通り、シゲとツネで大丈夫だからね。」
そう言って古賀は次に、ソウとアカに目を向ける。
「さて、ソウ、アカ。きみたちは、試験を全てクリアしたことにより、正式に私の弟子になる。だから、改めて私と契約を結んでもらうよ。」
そう言って古賀は、2人の契約書を出す。
「特に中身に変わりはないから、一応確認して、問題なければ以前のように『契約に同意する』と念じてくれ。」
そう言われて古賀から契約書を受け取った2人は、契約書の中身を確認したあと、念じる。
((この契約書に、同意する!))
すると、契約書はそれぞれの胸の中へと吸い込まれていく。
その途端、2人から忍力が溢れ出す。
ソウは緑の、アカは赤の忍力が放出され、そのまま2人へと戻っていく。
(やっぱ、みんな忍力の色が違う。)
「はい、これで正式な手続きは終了。じゃぁ、これからの話を・・・」
「ちょっと待ってください!古賀先生、よければ先に忍力の色について教えてほしいんですけど・・・」
古賀の言葉に重清が割って入る。
「あぁ、そうだね。じゃぁまずはそこから話そうか。その前に、重清、恒久、2人とも忍力を出してもらえる?」
そう言われた2人は、それぞれに忍力を放出させる。
プレッソだけは、今までずっといた、しかも意外と心地よかったショウの胸の中から飛び出し、重清の忍力を食べるように吸収し始めるのであった。
「プレッソ、できれば今から忍力の説明したいから、食事はやめてもらってもいいかな??」
苦笑いしながらそう告げる古賀の言葉にプレッソは、
「ちぇっ、しょーがねーなぁー。」
と言って引き下がる。
「見ての通り、重清の忍力は白、恒久の忍力は黄色だね。さらに先程の契約で見た通り、ソウの忍力は緑、アカの忍力は赤だったよね。これらの色は、きみたちそれぞれの得意な忍術を表している。いわゆる、属性ってやつさ。」
古賀のその言葉に、重清が
(おぉ、属性きたぁーーーーー!)
と1人テンションをあげる。
「属性には、5つあるんだ。その属性のどれが得意かが、忍力の色で判断できる。白は金、黄色は土、緑は木、赤は火、そして青が水。これは、中国の五行説っていう考え方が元にされたと言われているんだ。」
「って言うことは、忍者って中国発祥なんですか?」
ソウが疑問を投げかける。
「いや、我々のこの忍者というシステムは、日本で作られている。あくまで、このシステムを作った者が五行説を元にしたってだけ。だから細部に関しては、おそらく本当の意味での五行説とは違うはずだよ?」
「え、忍者って、誰かが作ったんですか!?」
今度は恒久が尋ねる。
「あぁそうだよ。もっとも、忍者の始祖が誰なのかは明らかにされていないけどね。ここからはある人の考えなんだけど、我々が使ってる忍力、この元となっている力は、人間誰しもが持っている力だという考えがある。この力を、忍力という枠に当てはめて、それを忍者というシステムに組み込んだんじゃないか、ってね。だからもしかすると、同じような力を使った他の存在もあるのかもしれない。例えば、魔法使い、とかね。ま、これはあくまで仮説でしかないけどね。」
「いるんだったら会ってみたいな〜、魔法使い!」
「会えるといいね。」
目を輝かせて言う重清に、古賀が笑顔で答える。
「さて、ここまでで質問は?」
古賀の問に、恒久が手を挙げる。
「属性ってやつは、なんとなくわかりました。今の話だと、それぞれの属性に応じた忍術があるってことになると思うんですけど、その忍術は、どうやって覚えることになるんですか?やっぱり、修行ですか?」
「いい質問だ。ここでやっと、以前話した『契約のもう一つの要素』が関係してくるんだ。と、その前に。重清と恒久にはもう無いけど、ソウとアカには、私との契約書があるよね?でも、それ以外に、きみたち全員がもう一つの契約書を持っているんだ。みんな、『忍術の契約書』を出すよう、念じてみて?」
そう言われた4人は、それぞれが古賀の言ったとおりに念じてみる。
すると、それぞれの手の中に紙が出現する。
重清は、自身の手にある紙へと目を向ける。
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忍術契約書
契約者 雑賀 重清
作成した忍術
なし
契約した忍術
鉄壁の術
具現獣の忍術
鉄玉の術
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