第20話:真夜中の校舎
夜中に学校へとやってきた恒久に、重清は、
「ツネ、こんな時間にこんなとこで、何やってるんだよ?」
と小声で聞くと、
「いや、お前もだろ。おれは、その、部室に忘れ物したんだよ。」
と、恒久は答える。
自身と同じように、こんな時間に部室に行こうとする恒久に、重清は思わず尋ねる。
「もしかして、ツネも契約書を取りに?」
「『も』ってことは、シゲもか?もしかしてお前も、血の契約を?」
重清の言葉に、恒久も思わず聞き返す。
「あぁ。おれの本当の忍名、雑賀重清らしい。」
「雑賀、か。おれは、伊賀恒久。やっぱりあのクソ親父、忍者だったよ。しかも、忍者の血を引いてたらしい。まったく、こんなギリギリになって言いやがって。」
恒久がボヤくのを見て、重清は笑いながら言う。
「じゃぁとりあえず、おれらの目的は同じ、ってことだよな?だったらここは、協力しない?」
「当たり前だ。こんなこと、1人でなんてやってられるか。」
重清の提案に、恒久は当然のように了承して頷き、
「ふっ。」
と小さく笑う。
「なんだよ、急に笑って。」
「いや、夕方まで追い込まれてたくせに、もう立ち直ってやがるなぁと思ってな。明日にでも、ちゃんとソウに謝っとけよ?」
「大丈夫!もう夕方謝ってきたから!」
「そりゃよかった。お前ら2人の雰囲気悪いと、おれと茜だけじゃ、間がもたねーんだよ。」
「あー、ムッツリだからね。」
「ムッツリは関係ねー!」
「しぃーーーっ!」
焦りから少し大きな声で突っ込んでしまった恒久に、重清が笑いながら人差し指を口に当てて恒久に注意する。
恒久が口を押さえて頷くのをみて、重清が続ける。
「ってことで、早速中に入りたいんだけど、どうする?正面は警備員さんいるっぽいけど、正面の入口以外を探す?」
「いや、他の入口が開いているかわからない以上、あそこから入るのが無難だろ。」
恒久が重清の言葉に返しながら正面の入口に目を向ける。
「ってか、警備員さん増えてない?」
重清の言葉を聞き、恒久が入口に目を向けると、先程まで2人しかいなかった警備員が、4人に増えていた。
「普通、こんなに警備員いるか?・・・ん??」
警備員に目を向けた恒久が、あることに気付く。
「あのうちの2人、幻術じゃないか?」
「え、マジ?」
「あぁ、恐らくな。血の契約してから、今までより少しだけ力が扱いやすくなってんだよ。シゲも、心の力集中させて、あいつら見てみな。」
そう言われ、重清は心の力を集中させて、警備員に目を向ける。
「あ、ほんとだ。なんかわかる。幻術って真ん中の2人じゃない?」
「おれも、そう感じる。2人の意見が一致してるんだ。恐らく、間違いない。」
「古賀先生かな?」
「その可能性が高いが、毎日こんなことやってんのか?まぁそれはいい。シゲ、お前は左の警備員の注意を引け。おれは右のやつだ。」
「注意を引くっていったって、どうするんだよ?」
「なんか、音たようぜ。おれはこれ使う。」
そう言って恒久は、手裏剣を具現化させる。
「よし、じゃぁこっちは・・・プレッソ、頼めるか?」
「にゃぁ!」
重清に頼まれたプレッソは、「任せろ」とでも言うようにそう鳴く。
「じゃぁ、ツネが音をたてたらすぐに、プレッソも反対側で大きな音をたててくれ。音をたてたらすぐ、ここに召喚するから!」
それを聞き、プレッソは駆けていく。
「じゃぁ、いくぞ!」
そう言って、恒久は手裏剣を投げる。
「パリンっ」
「あ、窓割っちまった。」
と、恒久が呟いた瞬間、
「ガラガラガラっ」
と、何かが倒れるような音が辺りに鳴り響く。
(うわ、スゲー音してるな。プレッソ、何やったんだよ。)
そう思いながら、重清はプレッソを召喚すると、得意げなプレッソが出現する。
プレッソの召喚を確認した恒久が
入口の方に目を向けると、警備員のうち2人が、それぞれ音のなった方へと走っていた。
「今だっ!」
恒久のその言葉に、重清とプレッソは、恒久と共に走り出す。
(幻術でありますように!)
と心の中で祈っていた重清だったが、その祈りが通じたのか、2人の警備員は、目の前の2人と1匹に反応することなく、その場に立っているだけなのであった。
警備員(の、幻術)の横を通って校舎へと入った重清と恒久は、違和感を感じる。
「なぁツネ、これって・・・」
「あぁ、部室に入った時と同じ感覚だな。ってことは、ここはあそこと同じ空間なのか?」
「わかんないなー。どうする?それだと、部室への道も違う可能性あるけど。」
「どの道が正しいかわかんねー以上、とりあえずいつもの様に図書館に向かうしかねーだろ。」
「ま、そうだな。」
そう言って、2人と1匹は、図書館の方へと歩き出す。
すると、少し歩いたところで・・・・
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ」
前から大きな岩が転がってくる。
「「いやいやいやいやいやいやいやいや!どんな映画だよ!?」」
2人と1匹は、来た廊下をダッシュで戻る。
そして、脇へと逃れ、岩をやり過ごす。
重清達を通り過ぎた岩は、壁に当たると、壁を破壊、することなく、そのままスっと消えていく。
その様子を見た恒久は、重清に声を掛ける。
「あれ、どう思う?」
「どうって・・・これでおーしまいっ、ってわけには、いかないんだろうねぇ?」
「まぁ、そうだろうな。どうする?他の道探すか?」
「いや、なんかどこもこうなってそうな気がする。それに、何故かここをクリアしないといけないって思っちゃったんだけど?」
「なんとなくわかる。なんつーか、誰かに試されてる気がしてきたな。だとしたら、ここで逃げ出す訳にもいかねーよな。」
笑って言う恒久に、重清も笑って頷く。
「で、次来たらどうする?」
恒久の言葉に重清は、
「ここはやっぱ、体の力で割るしかないんじゃない?」
「シゲ、お前体の試験、どのくらいだ?」
「んー、さっきの岩、試験のと同じくらいだよな?多分、半分くらいならヒビ入れられるくらいかな。」
「おれも似たようなもんだ。ってことは、2人で殴ればいけるか?」
「それっきゃないでしょ!じゃ、早速行ってみよう!」
そう言って重清が、廊下を歩き出す。
「ばっ、少しは心の準備をだな・・・」
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ」
「あーっ、たく、やるぞ、シゲ!」
「おうともさ!」
そう言って2人は、岩へと同時に殴り掛かる。
2人の拳が同時にぶつかった岩は、2か所からヒビが入り、静かに崩れてそのまま消えていく。
「っしゃぁ!!」
重清が声を上げる。
「よし、これで進めるな。それにしても、なんでこんな罠みたいなのがあるんだよ。これも、古賀先生の仕業なのか?」
つぶやきながら進む恒久の後ろを、重清とプレッソがついていく。
そのまま、図書館の前まで何事もなく、2人と1匹は到着する。
「いや、確かにあの後は何事もなく進んだわけだけどさ・・・」
図書館への扉の前で、重清がつぶやく。
重清と恒久の視線の先にあるのは、いくつも刃。その刃が図書館への扉の前で左右に揺れており、そこから図書館に入るのは到底無理に見える。
「シゲ、あの扉見てみろ。スイッチがあるぞ。それもご丁寧に2つ。こりゃどう考えても、あのスイッチを押せってことだよな。」
「あー、ほんとにあるね。ってことは、そう言うことなんだろうな。ということは・・・」
「これが必要だな。」
恒久が、手裏剣を2つ具現化しながら言う。
「今のおれらなら、これくらいできるはずだ!刃の動きを忍力で把握して、同時に当てるぞ!」
そう言って、忍力を展開して刃の動きに集中する。
「いまだ!」
重清の言葉に、恒久も同時に反応して2人同時に手裏剣を投げる。
2人の投げた手裏剣は、左右に動くいくつもの刃の間を抜け、それぞれがスイッチにあたる。
「「よっし!」」
2人同時に、声を上げる。
「よーし、じゃぁ図書館に入るぞ!」
そういって重清は、図書館への扉を開ける。
「おやおや、こういったときに、中の様子を確認もせずにいきなり入ってくるなんて、良くないんじゃないのかな~?」
重清と恒久が入った図書館にいたのは、古賀であった。
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