第16話:そして1週間
試験初日から7日間、4人はそれぞれの試験に挑戦していた。
そして、今日が8日目。
今日も今日とて、4人は部室へと向かっていた。
「残り1週間か~。来週の今日までに、全部の試験クリアしなきゃいけないんだよな~。大丈夫かな~」
社会科研究部の部室がある図書館へと向かいながら、重清が言う。
「シゲはまだ1つもクリアできてないもんね。あ、ツネもか。2人とも、本当に大丈夫なんでしょうね??」
茜が、そう言って重清と恒久に顔を向ける。
そう言う茜は、心の試験には未だ苦戦していたものの、既に体の試験をクリアしており、技の試験もクリア目前となっているのである。
茜から声をかけられて、恒久は、
「おれも心配になってきてんだよ。思ってたよりも、忍力の扱いってのがわかんなくてな。ソウみたいに、上乗せしてーんだけど、なんかこう、忍力と他の力が上手く噛み合わないような、そんな感じがしてな。」
と答え、重清も、
「あ、それなんか分かる!上乗せしようとしても、なんか上手いこと上に乗らず、滑っちゃう、みたいな。」
「ま、滑るのは忍力だけじゃねーけどな」
「その事には触れないで!」
笑いながら、重清は恒久の軽口に反論する。
「あんたたちねぇ。なんでそう余裕あるのよ!このままだと、1週間後には記憶無くしちゃうのよ?」
茜が心配そうに2人に言う。
「なんとなかるって!さっさと試験クリアして、みんなで『中央公園』で、パパァっと打ち上げしようぜ!」
重清が、根拠の無い自信を持って言う。
「まったく、シゲは相変わらず能天気なんだからー。」
と、ソウが呆れながら言う。
「大丈夫だって!それよりもソウは、技の試験クリアする所だけに集中しとけって!」
重清が、笑いながら聡太に返す。
聡太は、既に心の試験と体の試験をクリアしており、残りは技の試験のみとなっていた。
しかし、他の3人と違い、技の試験にかなり手こずっていた。
「ソウが技の試験で止まってるってのも、よくわかんねーんだよなぁ~。」
恒久が試験2日目のことを思い出しながら、言う。
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試験2日目
その日、最後に技の試験に来たツネは、ケンに尋ねる。
「ケンさん、結局、的ってどうやってどこにあるか認識するんですか?」
そう聞かれたケンは、他の3人にも同じことを聞かれたのだろう。めんどくさそうに答える。
「忍力を使え。」
「え、忍力?」
「そう。ここは技の試験場だが、的は忍力を使って認識しないといけない。忍力を、周りに展開するよう意識しろ。」
そう言われてツネは、忍力が周りに展開するよう意識する。
「なるほど。なんとなくわかりました。忍力を周りに展開することで、人の気配とかがなんとなく認識できるようになりました。でも、これでもまだ的の場所まではわからないな。」
「その辺は、まだまだ慣れが必要。とりあえず、実際に的を見てこい。で、その存在を忍力で認識したうえで、戻ってこい。」
そう言われ、ツネは的へと向かう。
「確かに、見たうえで忍力で認識すると、全然違うな。これだったら、離れてもどこにあるかわかりそうだな。まぁ、あとの問題は手裏剣をうまく投げられるかどうかなんだけどな。」
そう呟き、ツネはケンのいる場所へと戻っていく。
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「ケンさんの話だと、的の認識には忍力が必要ってことだったろう?古賀先生の話だとソウは、おれたちの中で一番忍力が高いらしいじゃん。だったら、ソウが技の試験をクリアできないのがどうしても納得できないんだよな~」
恒久が言う。
「それなんだけどね~。なんとなく忍力は展開できてる気がするんだけど、どうにも人の気配とかそういうのが認識できないないんだよね~。」
聡太が不思議そうに言う。
「忍力での認識は、みんなできるの?」
聡太の言葉に、恒久と茜が頷く。
「おれも、たぶん少しは認識できてると思うんだけど、な~んか邪魔が入ってるような感覚あるんだよな~」
重清がつぶやく。
「ん~、シゲも苦労はしてそうだね。それでも、ぼくよりはちゃんと認識できてそうだね。」
聡太が寂しそうに言う。
「いやいやいや、ソウ、なんでそんな寂しそうな感じなんだよ!技の試験で苦労してるとはいっても、ソウは既に2つ試験クリアしてんだから、自身持てって!」
重清が明るく言うと、
「そうよ。1つもクリアしてないこの2人がこんだけ楽観的なんだから、ソウはもっと自信持ちなさい!」
茜が笑って言う。
「あ~、確かにね。ぼくがこんな顔してたら、嫌みになっちゃうか~。」
聡太が笑いながら言うと、「なんか腹立つわ~。」と恒久が笑いながらも、他の2人も笑って頷いた。
「でも、ほんとにおれあと1週間でクリアできんのかな~。もう諦めちゃったほうがいいのかな~。」
重清がため息をつきながらそう言って、社会科研究部の部室へと入る。
すると、古賀が既に部屋へといた。
(古賀先生、なんか顔色悪くない?)
茜がそう考えていると、古賀が口を開く。
「シゲ、きみは今日は帰りなさい。」
「え!?さっき言ってたのは冗談ですよ!?やります、諦めずにちゃんとやりますから!」
「そのことではない。私の口から理由を言うわけにはいかないが、何も聞かずに、今日は帰るんだ。まっすぐに、家に帰るんだぞ。」
有無を言わさず、古賀が重清に告げる。
「・・・・わかりました。」
全く納得できない重清ではあったが、古賀の様子に言い返すことができず、そう返答する。
「じゃぁ、今日は帰るわ。3人とも、頑張れよ!プレッソ、行くぞ!」
少し無理をした笑顔を3人に向けて、プレッソを戻して重清は家へと帰ることにする。
重清が家に着くと、普段であればまだ帰っていない時間にも関わらず、両親が帰ってきており、2人ともバタバタと何かを準備しているところだった。
「シゲ、帰ってきたか。連絡せずに済んだな。すぐに出るから、カバン置いてこい。」
父、雅司が重清に告げる。
「行くってどこに?」
父の様子にたじろぎながら、重清が聞く。
「親父んとこだ。」
父のその言葉に、重清は不安になりながら聞き返す。
「じいちゃんち?何かあったの。」
「親父が、お前のじいちゃんが、亡くなった。」
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