第13話:技の試験
心の試験場から走り出した4人とショウは、すぐに技の試験場へと到着する。
そこでは、ケンが何故かプレッソと戯れていた。
「プレッソ、お前。なんかおれといる時より楽しそうじゃん。」
シゲの言葉に、「にゃぁ?」と鳴いて、またプレッソは森の中へと走り去っていく。
「あいつ自由だな~。なんか、古賀先生のハチとの違いを感じるんですけど。」
シゲがつぶやく。
その後ろではショウが、
「いいなぁ。僕のところにもきてくれないかなぁ。」
と、ケンに羨ましそうな目を向けているのであった。
と、ケンが試験用の手裏剣をもって、4人の前に立つ。
「誰から?」
それに対し、シゲが
「さっきと同じ順番でいいかな?」
と3人に確認し、3人が頷いたのを見てケンから手裏剣を受け取る。
「シゲ、またやるのか?」
ケンが不思議そうに尋ねるが、
「いや、やりますよ!今度こそ、当てちゃいますよ!」
シゲがムキになって答えて、手裏剣を受け取る。
(心の試験では余裕無くてわかんなかったけど、今は技の力ってのがわかる!これなら・・・あれ?)
「ケンさん、質問が。」
「いや、投げねーのかよ。」
ツネのつっこみを流して、シゲがケンに質問する。
「この手裏剣持ったら、技の力ってのはなんとなく感じることが出来たんですけど、そもそもここから的、見えないですよね?見えない的に、どうやって当てれば・・・・」
そう聞かれたケンは、少し考えて、
「んー、今日のところは、ノーヒント。」
と、ニヤッと笑いながら答える。
「くぅーっ、ケンさん、いい性格してますよねー。」
シゲがそう言って、ショウに目を向ける。
心の試験でシンの出番を奪ってしまったショウは、
「ここの担当はケンだからね。ケンがそういうなら、僕もここはノーヒントで。」
笑顔で答える。
「わかりましたよ、ノーヒントで頑張りますよ!」
少し不貞腐れたシゲは、改めて手裏剣を構える。
(ようし、感じるんだ、あの木の先にある的を。そして、この技の力を込めて・・・)
「そこだぁっ!!」
シゲの投げた手裏剣は、森のなかに弧を描いて吸い込まれていく。そして・・・
「てってけてー」
微妙なあの音、ではなく、ケンの口からそんな言葉が発せられる。
「はい、残念。次。」
ケンはニヤニヤしながら、いつの間にか戻ってきていた手裏剣を持って言う。
「プッ、あははははは!『そこだぁっ!!』って、シゲ!全然ダメじゃん!」
アカが笑いながらシゲにダメージを与える。
「いや、マジで難しいんだって!やってみなよ!」
「じゃ、次おれな。」
そう言ってケンから手裏剣を受け取ったツネが、構える。
(よし、さっきと同じで、技の力も感じ取れる。問題は、見えない的をどうするか、だが・・・やっぱりどこに的があるかわかんねーな。とりあえず今日は、手前の木の先にある木でも狙っておくか。)
そう考えながら、ツネは手裏剣を投げる。
手裏剣は、弧を描いて狙った木の手前に突き刺さる。
(木には当てられなかったが、方向としては問題ない、か。)
一応納得して、次のアカに場所を譲る。
「ツネも、全然ダメだったじゃん!」
笑ってシゲが話しかけてくる。
「的の場所分からなかったから、とりあえず練習のために、普通じゃ当てられなさそうなあの木を狙ったんだよ!まぁ、手前に刺さっちまったけど。」
「ほんとにぃ~~?」
ニヤニヤしてシゲが聞いてくる。
「でも、ケンのその考え方も、間違ってはないと思うよ?自分の能力の範囲で出来ることを考えるっていうのは、大事なことだよ。」
ショウがツネをフォローする。
ショウに褒められたツネはどや顔で、
「ほらな。ま、どっちにしろ今のとこどっちも似たり寄ったりなのは確かだ。見てろよ、おれの方が先にクリアしてやるから。」
ツネの挑発に、シゲは、
「あ、言ったな!絶対おれの方が先にクリアしてやるからな!」
と、ムキになって言い返す。
(まったく、男の子っていうのは・・・もう少しショウさんを見習って欲しいもんだわ)
アカがため息をつきながら、ケンから手裏剣を受け取って構える。
(さーて、さっきの試験とは違って落ち着いて力を感じることが出来るわね。ツネの言うように、確かに的の場所がわからない以上、どこか別に的を設定して投げる練習した方がいいかしら。とりあえず今日のところは、ツネと同じ木を狙おうかな。)
そう考え、アカは手裏剣を投げる。
手裏剣は、そのまま狙った木に当たる。
「よっし!」
アカがガッツポーズを取る。
「いやいや、アカ当たってないじゃん!何で喜んでるのさ!」
シゲが不思議そうに言う。
「ツネと同じよ。だからわたしも、今日はツネと同じ木を狙ったわけ。ま、わたしはちゃんと当たったけどねぇ~」
と、どや顔でツネを見る。
「要はクリアすればいいんだろ?別に早い者勝ちってわけでもあるまいし・・・」
「あれぇ?シゲに『先にクリアしてやるー』とか言ってたのは、どこの誰だったかなぁ?」
苦し紛れのツネの言い分に、アカがそう返す。
その言葉は、手裏剣のようにツネの心に突き刺さる。
「うぐっ・・・」
「最後、ソウ。」
ツネとアカのじゃれ合いを無視して、ケンがソウに手裏剣を渡す。
(うん、さっきと同じ、技の力を感じる。とりあえず僕も、みんな(シゲを除く)と同じように、あの木を狙ってみよう。)
そう考え、ソウが手裏剣を投げる。
しかし手裏剣は、曲がることなく真っ直ぐ飛び、そのまま近くの木に突き刺さる。
「あれっ、これ難しいなぁ。」
ソウが呟くと、シゲが嬉しそうに近付いてくる。
「な、な、な!難しいよな!?良かったー、ソウ、これもクリアするんじゃないかと、ヒヤヒヤしてたぞ!」
「いや、心の試験クリアしたときと同じテンションで、失敗したこと喜ばないでよ!」
ソウに笑顔で話しかけてくるシゲに、笑ってソウは答える。
「まだやるか?」
ケンが、4人に声をかけるが、
「いえ、とりあえず今日は全部の試験を経験したいので、次に行きます!」
と、ツネが答える。
「わかった、じゃぁおれは部室に戻る。」
そう言って、ケンは姿を消す。
「あの一瞬でいなくなるやつ、カッコいいよなー」
そんなツネの呟きに、
「わかる!あれこそ忍者って感じだよな!」
と、シゲとソウが同意し、3人で盛り上がる。
(まったく、男の子っていうのは・・・)
そんな3人に、アカは姉のような表情で、目を向けるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます