第12話:心の試験の恐怖

シゲの叫びを聞いた3人は、顔を強ばらせてお互いを見る。

そしてすぐに、シゲが一人言を言いながら、小屋から出てくる。

「いやだ、もうスベりたくない。もう、いやだ・・・」

と、涙を流しながら。


その様子で、3人はシゲがどんな幻術にかけられたかを理解する。


(((幻術エグっ!)))


3人は、なんとなくかけられる幻術を理解した。

おそらく、軽いトラウマを呼び起こすものであろうと。


「さ、次は?」

シンが笑顔で3人に声をかける。

ソウとアカがしり込みをするなか、ツネが前に出る。

「次はおれが。おれには、シゲみたいな嫌な記憶は、多分ないはずだ。だったらなんとかなる!」

そう言って、小屋へと入っていく。

そして数分後。


「ノォーーーーーーーーーーっ!」

ツネの叫びがこだまする。


ツネは、「違う。おれはムッツリなんかじゃない。違う、違うんだ・・・」と頭を抱えて呟きながら小屋から出てくる。


(どんな幻術かけられたのよ)

アカが若干引きぎみに心の中でつっこむ。


「よし、ビビっててもしょうがない!次はわたしが行くわ!」

アカが男らしく(?)、小屋へと突っ込んでいく。そして。

「いやぁぁーーーーーーーー!」

この世の終わりのような叫びが、響きわたる。


「男は誰もわたしに見向きもしない。わたしは、1人寂しく生きていくのよ・・・」

と、泣きながら出てくるアカを見て、ソウの顔が青ざめる。

次は自分の番なのだと。そして、自分が小屋に入った場合どうなるのかを想像して。


「さて、最後はソウだね?準備はいいのかな?」

シンが声言うその声も耳に入らず、震えてすらいるソウに、やっと幻術から解放されたシゲが声をかけてくる。


「ソウ、お前はやめとけ!お前が入ったら・・・」

そこで口ごもるシゲを見て、ソウの震えは止まり、笑顔でシゲに言葉を返す。

「シゲ、ありがとう。でもぼく、ここで一歩踏み出さないと、いつまでも変われない気がする。ぼく、行ってくるよ!」

そう言って、シゲに笑みを向けて小屋へと歩き出す。


ソウが小屋に入るとすぐに、ソウは心の力を感じることができた。

(わかる、忍力と心の力を感じられてる。)

そう思っていると、目の前に、先ほど自分を心配してくれていた、

シゲが立っていた。


「シゲ、どうしたの?ここには1人しか入れないんじゃ・・・」

「はぁ、話しかけんなよ。いつまで友達面してんだよ。お前なんて、おれがいなかったらまたいじめられっ子に逆戻りの弱虫のくせに!」

突然、シゲはソウに辛辣な言葉を投げ掛ける。


それを聞いたソウは、顔を青ざめてシゲを見る。

すると、シゲの後ろには、忘れられるはずもない彼らの姿があった。

「なんだよ弱虫!お前まだそんな弱虫のままなのかよ!こいつだってほんとは、お前のことなんて友達だとは思ってなんかないんだぜ!」

昔ソウをいじめていた彼らが、そう言いながらシゲと肩を組む。

シゲも、そんな彼らと仲良く笑いあっていた。


ソウは、そんな親友の姿に涙を浮かべながらも考える。

(違う、これは幻術だ!心の力、さっき感じた心の力を高めるんだ!)

「なんだよ、まただんまりかよ弱虫!」

彼らの言葉が、ソウを動揺させる。

それでもソウは、シゲに目を向けながら心の力を高める。

すると、シゲの顔が一瞬だけ、いつもの優しいシゲになった。


(足りない、これじゃ足りないんだ!忍力、忍力を上乗せ・・・)

「なんだよ、ソウ。お前やっぱり弱虫じゃん!こいつらに全然言い返せねーんじゃん。」

シゲが、ニヤニヤしながらソウに話しかける。

「やっぱ、お前なんか友達になる価値ねーよ!」


その言葉を聞いたとき、ソウの忍力が大きくなり、心の力へと上乗せされる。

すると、いじめっ子達の姿が無くなり、シゲだけが残る。

「なんだよ、それで勝ったつもりかよ弱虫!お前なんか、おれひとりでどうとでもできるんだぜ?」


しかしもはや、ソウの心にその言葉は響かない。

「わかってないなぁ。」

と、ソウは呟く。

「シゲはね、『友達になる価値がない』なんて絶対言わない!人に価値を見出して付き合いを考えるなんて器用なこと、出来るわけないんだ!あいつは、僕なんかにも優しく声をかけてくれた。こんな幻術なんかで、僕の親友を貶めるなー!!!」

そう、ソウが叫ぶと、シゲの姿は無くなっていた。そして。

「テッテケテー」

微妙な音が鳴り響く。


ソウが小屋を出ると、シゲ、ツネ、アカが駆け寄ってくる。

「ソウ、スゲーじゃん!早速クリアしちゃってんじゃん!」

シゲが笑顔でソウに話しかける。

「うん、なんとかクリアできた。シゲのお陰だよ!」

「おれの??」

ソウの言葉に、不思議そうにしているシゲに、

「何でもない!気にしないで。」

と、誤魔化しながらソウが笑う。


「初日でクリアかぁ。ソウ、やるなー。」

と、シンが話しかけてくる。

「ありがとうございます、シンさん。」

「どうする、みんないろいろとダメージ受けたみたいだけど、今日はこの辺にしとく?」

ショウが提案するも、4人は揃って首を横に振る。


「このままでなんて終われないです!次!次こそはーー!」

シゲが気合いを入れて叫ぶも、

「いや、順番でいったら次は技の試験だろ?お前はもう恥・・・・」

「やめて、それ以上は言わないで!心の試験の幻術のバリエーション増えちゃうから!」

ツネのつっこみに嘆くシゲを見てソウが笑っていると、

「あ!ソウまで笑ってる!見てろよ!今度は失敗しないからなー!よし、皆の衆、出陣じゃーーー!」

と、叫びながら走り出すシゲの後ろ姿を見て、

(やっぱ、シゲはこうじゃなくっちゃね)

と笑いながら、

「おぉーーー!」

と、シゲを追って走り出す。

ソウがシゲに乗ってしまったのを見たツネとアカも、少し視線を合わせたあと、

「おぉー!」

と、小さめの声を出して駆けていく。


「ふふっ、若いねぇ。」

「いや、おれらもそんな変わりませんからね?」

ショウの呟きに、シンが思わずつっこむのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る