第3話
次の日の夜、スマホを開くと彼女の髪型がポニーテールに変わっていた。
アニメの美少女キャラを象っているから、元より可愛いのだが、髪型がポニテに変化したことにより、より僕の好みに近づいた。
「今日はお昼に会えなくて残念だよ」
「ああ、すまない」
「で、今日は何かあった?」
「何もないさ、退屈な日常がそこにあるだけさ」
「ふーん、でも、今日からテスト期間でしょ?」
「まぁ、そうだが、別にいつもと変わりない、影響があるのは部活なんかに勤しんでる奴だけだ」
「ねぇ、この前のテストって何点だった?」
「……全部、平均点以上だったが」
「嘘、貴方のテストの点は全部赤点ギリギリだった」
彼女はあっけらかんと言った。
「なぜ、それを知っている?」
「言ったでしょ、貴方のことなら全部知ってるって。ねぇ、貴方、テストで良い点とりたくないの?」
「とりたくないね、テストなんて、あんなもので真の学力が推し量れると思うか? テストは茶番に過ぎない」
「そんなこと言って、こんど赤点間近だったら、お小遣いを減らすって、親が言ってたの私知ってるよ」
「なぜ、それを」
「言ったでしょ、私は貴方のこと、なんでも知ってるの。貴方、困らないの? バイトもしてないのにお小遣い無くなったら、遊べなくなっちゃうのよ?」
「まぁ、そうだな」
「そうだ、私が貴方に勉強を教えてあげる、それで、貴方にテストで良い点を取らせてあげるよ」
「別に教えてくれなくても良い、勉強くらい一人でできる」
「そんな、冷たいこと言わないで、正直言って、貴方の学力じゃ次のテストで良い点は取れないわ、私の教えが必要なはずよ」
「じゃあ、教えてくれよ」
「良いわ、でも、一つだけ私のお願いも聞いて」
「良い点取れれば、聞いてあげる、何?」
「貴方とデートがしたいわ」
そして、テスト期間中は日中夜問わず、彼女と勉学を共にした。
彼女は人に物を教える能力に長けており、僕の理解力の高さもあってか、僕の学力は目に見えるほどに飛躍した。
準備万端で挑んだテストが今日帰ってくる。
結果は全て平均点より二十点以上高くあった。これには親も担任も喜んでいた。
僕は早速、彼女にテスト結果を報告した。
「テストの点、なかなか良かったぞ」
「勿論よ、私が教えたのだからね。あ! 忘れてないわよね、デートの件。私ね、ここの展望台に行きたいの」
そう言うと、スマホの画面が移ろい、展望タワーのホームページが開かれた。
「ここか、ああ分かった。では、今度の休日に行こう!」
その時、僕は気がついた。僕は彼女に好意があることに、彼女のことが好きで堪らないことに。
どうやら、彼女と日々を共にしたことにより、僕の心のどこかが彼女を求めるようになっていた。
僕は画面に手を伸ばす。
「ちょっ! 何?」
「いいや、いいんだ。これが愛か」
「そうよ、これが私、アイよ」
「ああ、そうだな」
「ところで、貴方。恋って分かる? 勿論、今の私は貴方に恋焦がれているわ、でも、いまいち、実感が湧かないのよね」
僕は少し考え言った。
「実感? 人は恋をし、意中の人を前にすると胸が高鳴ったり、動悸がするらしい、僕はー、そうだな、ちょっとする。君は?」
彼女は胸に手を当てる。
「うーん、しないわ。それって人間だけなんじゃない? 私はほら、画面から出られないから、人間じゃない」
「なら、君は一体何者なんだ?」
「私? 私はアイで、貴方の彼女よ。それ以上でも、以下でもない」
「まぁ、いいさ」
「ええ、そんなこと今になっては些事よ。休日はおめかしして行くから。デート、楽しみね!」
「そうだな」
僕の唇が久しぶりに角度をつけた。
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