思い出した大事な記憶?!

・恵実と神様見習い三人は差出人不明の手紙をもとに、セキを発見することができた。地面に臥したセキの姿に既視感を覚えたリマはセキのそばに駆け寄る。リマとセキは前世で同じ時を過ごしていたのだ。


樊崇「オレがガキの頃、飢餓から村を救ったのは女神だった。オレは女神に忠義を誓った。オレの正義は仲間の腹が満たされること。この反乱をもってして飢えの苦しみを理解しようともしない都人を成敗してやる」



・女神は樊崇の正義を信じ、樊崇の率いる反乱軍を勝利の道に導こうとした。しかし女神は目の当たりにする。天を味方につけたと図に乗った男たちの横柄さを。彼らの傲慢無礼な振舞いになす術もない村人たち。仲間同士での無意味な諍い。樊崇一人では止められないほどに軍は暴徒と化していた。


女神「これがあなたの言う正義なの?みんなが救われるための犠牲だとでも思ってるの?」

樊崇「そんなワケねェだろォ!オレは仲間に飯を食わせてやりたかっただけなのに……!」



・樊崇がそう言い放った直後、敵軍の襲撃により反乱軍は次々と捕まってしまう。樊崇は最後まで抗うものの、女神の潤んだ瞳を見て肩の力が抜けてしまった。



・牢に入れられた樊崇は夢を見た。見限られたはずの女神に微笑まれたのだ。なんと都合のいい夢だろうと自身に呆れながらも樊崇はどこか救われた気がした。



・樊崇は気づかない。樊崇の最期を憐れんだ女神は『穢れた魂を浄化する』禁忌を犯した。返り血に染まった樊崇の魂はとうに穢れきっていたためだ。なびいた長い髪の黄昏色が樊崇の左目に宿る。女神がもたらした祓の力と禁忌による罰により、やがて二人はともに神様見習いとなった。セキは前世のこの記憶だけを思い出せずにいたのだ。



・樊崇との記憶を取り戻した女神改めリマはセキの両目に手をかざす。二人が前世の姿を思い出したという奇跡が、セキの中に眠る浄化の力を呼び覚ましたのだろうか。フロイデという穢れが清められたセキはまぶたをおし上げる。目尻から流れたひとすじの涙には気づかないフリをして。


セキ「なァ女神答えてくれ。オレは悪人だったのか?」

リマ「わからないわ。そんなの誰も判断しようがないもの」

セキ「オレの怒りは間違ってたのか?反乱を起こさなければみんな幸せになれたのか?」

リマ「それは違う。人間の抱く感情に誤りなんてあるはずない。きっとセキの選択で失われたものも守られたものもあるのよ。その証拠に恵実たちが今を生きているじゃない。アタシは人間の紡ぐ歴史を尊いと思うわ」



・恵実は何もできず、ただセキとリマを見つめるしかなかった。二人の互いを思う気持ちは友情よりも強い何かだ。それが恋人同士の抱くものだろうかと邪推してしまう自分がひどく醜い。この時恵実はリマに対する劣等感に気がつく。



・今までセキと過ごしてきた自分は、セキにとってリマの代わりだったのかもしれない。リマと同じ顔貌だけを見て、自分の中身や感情なんてどうでも良かったのかもしれない。そう考えた瞬間恵実の心に小さなフロイデがとり憑き、恵実はふさぎ込んでしまう。


?「あたしは何をやってもダメなんだ。何度やり直したって、きっとなにも変わらない」

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🌸(旧版:2023.05.28) よん @orgasituwhite

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