セキとそっくりな青年?!

・ある日恵実のリボンが風に飛ばされてしまう。リボンを追いかけて恵実がたどり着いたのは、広大な和風の邸宅だった。事情を話すと家主の息子である黒緋くろあけせんが恵実を迎え入れる。宣の姿を見た恵実は動揺する。宣はセキと同じ顔をしていたからだ。


宣「先ほどから顔色が優れないようですが?熱はありますかね?」

恵実「へっ?!あ、あの宣!…おでこコツンはちょっと、恥ずかしいかも」

宣「すすすすみません!!俺自身風邪は滅多に引かなくて…幼い頃親にやってもらった記憶を頼りに…ほんと、申し訳ないです」

恵実「大丈夫!もう大丈夫だから土下座はやめて!」



・宣は少々世間知らずだが思いやりのある青年であった。宣と恵実の性格には似通ったところがあり二人はすぐ打ち解けあう。



・恵実のリボンは中庭の木に引っかかっていた。恵実は木に登って手を伸ばす。しかしリボンに触れる既のところで恵実は足を滑らせる。



・宣は恵実を助けるべく走り出すが小石につまずき転んでしまう。恵実はうつ伏せになった宣の背中に尻もちをついた。その衝撃で宣のメガネが外れる。


宣「あはは…お恥ずかしい。でも心配いりませんよ、頑丈な身体が俺の取り柄ですから!」

恵実「やっぱり見た目はセキにそっくり…」

宣「…あの、セキさんとは一体?」



・突如日が陰り黒雲に稲妻が走る。気がつくと恵実はセキの胸の中にいた。呆然とする宣をセキは睨みつけ人差し指を突き出す。


セキ「テメェがここの家主かァ?」

恵実「セキやめて!もし雷が宣に落ちたりしたら…!」

セキ「そしたらなんだ?オレは今ものスゴく機嫌が悪ィんだ」



・セキが魔法を発動させる前に宣が動き出す。右手に本物の拳銃を構え、その銃口は見えていないはずのセキの頭部に向けられていた。


セキ「チッ、道理で妙な気配がするワケだ」

宣「どなたか存じ上げませんが、恵実さんは初めてできた俺の友人です。手荒に扱うのはやめていただきたい」

セキ「おもしれェこと言うなァ!!ッつても弱い者イジメは性に合わねえ。一時的に実体化してやる、これでテメェにもオレの姿が見えンだろ?」

宣「…俺と同じ顔…あなたが、セキ」

セキ「人間相手なら魔法も必要ねェ。テメェは銃でもメガネでも何でも使えよ」

宣「お気遣い感謝します。メガネは伊達なので必要ないんですがね」



・一触即発の状況に待ったをかけたのは恵実だ。


恵実「セキ!宣はあたしのリボンを一緒に探してくれたんだよ!だからケンカしちゃダメ!」

セキ「…クソが。勝手にしろ」

恵実「行っちゃったね…宣は大丈夫?」

宣「なんですかあの悪魔は」

恵実「悪魔じゃなくて神様だよ!セキはちょっぴり乱暴だけど、頼りがいがあってすごくカッコいいんだ」

宣「かっこいい?!あの…セキさんの顔が怖くないんですか?」

恵実「怖くないよ!最初は少し怖かったけどセキは優しい神様だってわかったから。それは宣も同じだよ。あたし、こんなにすぐ誰かと友だちになれたのは初めてだよ」

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