悪夢の始まり

 ある日、高校時代の友達から連絡がきた。


「よう、久しぶり。元気にしてた?」


「久しぶり。元気にしてるよ。それよりどう

したの?」


「高校のときに仲が良かった人を集めて肝試

 しをしようと思っているだよ。」


 近くの壁に貼られているカレンダーを見てみる。


 もう7月末だった。


(ああ、もうそんな時期か)


 高校生の頃は、仲の良い人で集まって近くの廃校などを使って肝試しをしていた。


 高校を卒業してから、特に誰とも連絡していなかったので、久しぶりに会いたくなった。


「懐かしいな。いいよ。僕も行くよ。」


「わかった。それじゃあ、来週の日曜日に集

 合な。」


「了解。」


 久しぶりに、高校時代の友達と会えることが楽しみで仕方がなかった。


 そして肝試し当日、集合場所に行くと、仲の良かった友達がみんな来ていた。


「よし、みんな揃ったな。それじゃあ、今回

 の肝試しする場所を発表します。」


 あの頃のように、主催者以外の人はわくわくした表情で発表を待っていた。


「今回の肝試しする場所は乱頭トンネルで 

 す。」


 その場所を発表された瞬間、みんなの顔が一気に引きっつた。


 それもそうだ、乱頭トンネルといえば全国屈指の心霊スポットで世界最恐ともいわれていたりする。


 実際、僕たちの学校にいた不良たちがふざけていったら、帰り道に事故に遭い全員即死だったそうだ。


 他にも、男性の霊がでる、トンネルに向かう途中にある注意を促す標識を越えると吐き気に襲われたり、車のハンドル効かなくなったりする、体が重くなり動けなくなるなど様々な体験談が多く報告されている。


「さすがにそこは無理だ。」


 誰かが言うと、


「俺はもう帰る。」


「僕も。」


「 私も。」


 そう言って、半数くらいの人が帰っていった。


 やはり、いくら大人になったからといって最恐の心霊スポットである乱頭トンネルに行くのは、かなりの根性が無いと難しい。 


 ある意味、ここで帰るのはいい判断なのかもしれない。


 しかし、僕は元々幽霊などの非科学的なものは信じていなかったし、半数ほど帰ってたとしても、僕を含めて5人残っているから怖くないだろう。


 そんな安易な考えをしたことがこれからの人生を大きく狂わすこと知らずに。


「それじゃあ行こっか。」


 少し暗い声で主催者の彼はそう言った。


 自分が乱頭トンネルを選んでしまったことを後悔しているのだろう。


 少し重たい空気のなか、友人が用意した大型車に乗って、目的地へ向かった。


「みんな着いたぞ。」


彼の声で目が覚めた。


 いつのまにか寝ていたようだ。


 ふと外を見ると、辺りは暗闇に覆われていて5メートル先も見られないほどだった。

 

 降りてみると、鳥の鳴き声も聞こえずただただ不気味な雰囲気がずっと暗闇のは奥まで続いているようだった。


 そんな中、少し歩くと目的地である乱頭トンネルに着いた。


 乱頭トンネルを前にして、今までに無いくらいの悪寒に襲われたが、気のせいだろうと自分に言い聞かせた。


 中に入ってみると、外との温度差に驚かされた。


 もう季節は夏でいくら夜だと言っても気温は27度くらいはある。


 しかし、トンネル内は15度くらいの体感温度だった。


 風の音、水滴が落ちる音、自分の足音でさも過剰に反応してしまう。


 みんなも周りの雰囲気が異常なのを感じたのか、1言も喋らずただただ歩いていた。


 トンネルを半分ほど進んだとき、僕は後ろに倒れた。


 あれ、なんで倒れたんだろ...。


 気がつくと、僕は病院のベッドで寝ていた。


 主催者の友人が僕が起きたことに気がついた。


「ごめん、俺があんなところに行こうと提案

 したから。」


 土下座をしながら、謝ってきた。


「大丈夫だよ。それより、僕はどうしてここ

 にいるの?」


「それはだな...。」


 僕はあの日からのことをすべて教えてもらった。


 僕が突然倒れて意識をなくしたこと、それから救急車を呼んで医師に診てもらったが原因がわからなかったこと、意識が戻るまで1週間経ったこと。


 すべて聞かされた僕は、疑問に思ったことを聞いてみた。


「僕が倒れたとき、急に強風が吹かなかった

 か?それと、すごく怖い顔をした男性がこ

 ちらに向かって走って来なかったから?」


「怖いこと言うなよ。突然お前が倒れてたと

 き、特にそんなことはなかったぜ。」


 その言葉を聞いたとき、背筋が凍った。


 あれは決して、勘違いとかではなかった。


 確かに、強風を感じたし、あの怖い顔は見間違いなんかじゃない。


 よほど真面目なくらい険しい顔をしていたのだろう。


「それって本当なのか?」


 そんなことを聞いてきた。


「嘘なわけあるか。あんなこと逆に嘘であっ

 てほしいくらいだよ。」


 そう怒鳴ってしまった。


「そうか...。ごめん、俺はもう帰るから

 安静にしとけよ。」


 そう言って、病室を出ていった。


(悪いことしたな。今度会ったら謝らない

と)


 そんなことを思って、僕は再び眠りについ

た。


 スマホの着信音で目が覚めた。


(誰だろう)


 相手はこの前乱頭トンネルに行かなかった友人だった。


(突然どうしたんだろう)


 不思議に思いながら、電話にでてみる。


「よう、どうした。」


「どうしたじゃねえよ。お前今まで何してた

んだよ。」


「ごめん。今まで病室のベッドで寝てた。」


「ああ、そうだったな。悪かった。それより

もあいつが交通事故に遭って、今重体らし

 いぞ。」


「えっ!それってどうゆうこと?詳しく教え

て。」


 主催者だった友人は僕の見舞いの帰り、交通事故に遭ったらしい。


 その3日後、彼は亡くなった。







 

 

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