第5話 仕事

 店を出て私はある問題について悩んでいた。


「お金がない」


 二人組の男達から貰ったお金はさっきの買い物で大分使ってしまい、今残っているお金では、2日くらいしか宿に泊まれない。


「お金がないんですか?もし良かったら冒険者ギルドに来ますか?デイリーさんの強さならやっていけると思いますよ」


 確か冒険者ギルドってなんでも屋みたいなやつだったっけ?1万年前もあった気がする。結構野蛮な人が多かったイメージがあるけど、お金がない今、すぐに手に入る冒険者ギルドは確かに良いかもしれない。


「それじゃあお願い」


 そしてレミーに連れられて冒険者ギルドの建物まで案内された。道中妙に周りから見られているような感じがしたけど、ばれていないか不安になる。

 数分後、目的の建物に到着した。中には数人の男女がいて私たちが入ってきた瞬間こちらに注目された。そのまま受付に行って手続きをすることにした。


「あのラインさん。こちらにいるデイリーさんが冒険者になるので手続きをお願いします」


 受付の男の人はそれを聞いて手際良く準備してした。そして、私の前に一枚の紙が置かれた。


「その紙に必要事項を記入してくれ。書けないんだったらこっちで書くが?」


「大丈夫です」


そして私は、その紙に記入していった。


名前:デイリー

職業:魔術師

得意な武器または魔法:火魔法


 記入し終わった私は受付の人に渡した。


「ギルドのプレートを発行するから少し待っててくれ」


 そう言われ、私とレミーは近くの椅子に腰掛けることにした。その直後


「ねえねえ君、名前何て言うの?」


「どこから来たの?」


「一緒のクランに入らない?」


「いやいやこっちのクランに入りなよ」


 建物にいた人たちが次から次へと話しかけてきた。確かに誰かと話したいとは思っていたけど、こうも一気に来られるとコミュ障の私は対応出来ない。あたふたしながら、プレートの出来る時間を待つこと十数分、やっと出来たようで受付に呼ばれた。


「これがギルドのプレートだ。無くすんじゃねえぞ」


 その後ギルドの説明を受けた。どうやらギルドはF~Sの7階級に分かれているらしい。依頼をクリアしていくごとに昇格試験が受けられて、それが合格すると次の階級に昇格するらしい。はじめはF級からなので依頼を見てみると、ゴブリン五体の討伐、薬草の採取、子供の子守、下水道の掃除といかにもF級の依頼が並べられていた。ついでに討伐は討伐の証拠を持ってこないとお金が貰えないらしく、数時間前に倒したゴブリンは全て消し炭にしてしまったためお金が貰えなかった。

 早速依頼を受けてお金を貰おうと思った私は、もう一度ゴブリン討伐に行くことにした。まだ時間は正午を過ぎたあたりなのですぐに戻ってこれるだろう。レミーも着いてきたいと言ったので、一緒に行くことにした。

 街を出て森に入ってから1時間、ゴブリンを発見した私たちは今度は消し炭にしないように慎重に魔法を放った。


「サンダーボルト」


 直撃したゴブリンは抵抗することなく死んだ。その後証拠品を回収して次のゴブリンを探しているとき、森の奥からドスドスと何かが近づいてくる音がした。そして現れたのは、2メートルを超えるオークだった。


「お、オーク!?こんな森になんで」


 レミーが恐怖した顔でオークのことを見ていた。


「逃げましょうデイリーさん!」


 そう言ったレミーは私に手を引っ張って逃げようとする。しかし、レミーの足の速さではすぐに追いつかれてしまう。

 私はレミーの手を振り払いオークと対峙する。

 お金!私の頭の中にはそれしかなかった。


「何やってるんですか!早く逃げましょう」


 それを無視して私はオークに向かって魔法を放った。


「サンダーランス」


 電気で出来た槍がオークの頭に突き刺さる。そのあとドーンと音を立てて倒れた。呆気にとられているレミーを置いて、私はオークの証拠品を取りに向かう。


「お、オークを一撃」


 それからゴブリンを探しを再開して数時間、やっと街に戻った。どうやら、さっきのオークのせいでゴブリン達がびびって散らばっていたようで探すのに大分時間がかかってしまった。それからギルドに証拠品を渡して、お金を貰った。その際、周りから驚いた声が上がった。


「オークって確かD級のモンスターだよな」


「一体何者だあいつ?」


そんなこんなでもう外は暗くなっていた。宿どうしよう。こんな遅くに宿が空いているだろうか?そんな風に考えていると


「デイリーさん、今日泊まる場所が無いなら内に泊まりますか?」


 レミーがそう提案した。


「え、いいの?」


「はい。今日助けて貰いましたので」


「ありがとう」


 その後、レミーの家に行きご飯を食べ、風呂に入り、ベットで寝た。久しぶりの体験で終始涙目の私だった。

 翌日の早朝、眠っていた私は鐘の音で目が覚めた。外はまだ日がまだ登り切っていないくらいの時間である。

 何事?

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