第3話


 帰りにいつものコンビニに寄った。

「あ、イエナガさん、おはようございます」

「あ、おはよう」

 ササキくんがいた。このコンビニで働くさわやかなイケメンである。

「夜勤ですか。大変っすね」

「うん。まあ慣れてしまえばね、仕事自体は、ほとんどクリーンだけだから、楽なんだけど」

 私はいつものようにパンを買った。ササキくんのキビキビとした感じのいい接客を見ていると、私も見習わないといけないなと思う。

「ありがとうございまっす!」

 ササキくんの元気な声を聞きながらコンビニをあとにした。


 今日はお休み。

 お昼に寝て、夕方に目が覚めた。

 夕方に起きてからは、夜遅くまで、だらだらとネットで動画を見ていた。

 深夜のシフトに入るようになってから、精神的にややネガティブになっている。

 睡眠不足がいちばんの原因だろうと思う。深夜のシフトに入ると充分な睡眠時間を確保するのがなかなか難しい。昼間はなぜか眠れない。

 深夜だけのシフトにするべきだろうか。でも、そうしてしまうと、今度は普通の生活習慣に戻すのが大変そうだ。

 そんなことを考えながら動画を見ていたせいか、何の動画を見たのか、動画の内容がどんなだったか、よく覚えていない。

 せっかくの休日だったのに、夜中までだらだらと一日中スマホで動画を見ていた。

 よくないな、と思う。


 朝の六時に目が覚めた。三時間しか寝ていない。

 もう一度寝ようとしたけれど、寝られなかった。


 今日は夕方のシフトに入っている。

 夕方に入るのは久しぶりで、ちょっと心配だ。身体はなまっていないだろうか。夕方の忙しさについていけるだろうか。不安だ。


「おはようございます。今日も一日よろしくお願いします」

 ホールは、ノグチさんと私のペアだ。

「久しぶりに一緒だねえ。どう? 深夜にはもう慣れた?」

「あ、はい。久しぶりですよね。はい、深夜はだいぶ慣れました。でも、深夜に入るようになってから、ずっと眠たいんですよね」

「大丈夫なの?」

「あ、はい。大丈夫です」

 キッチンは店長とカトウくんのペアだ。この二人なら忙しくてもキッチンはスムーズに回る。ホールもキッチンも私以外は夕方の最強メンバーだと言っていい。

 それなのに、たいして忙しくはならなかった。人数がそろっているときには暇だったりする。逆に人数が少ないときに限って忙しくなる。そういうものだ。


「お疲れ様です」「お疲れ様です」

 午後九時に上がって休憩室に戻ると、休憩中のカトウくんがいた。

「カトウくん、それ、大盛り?」

 カトウくんが食べている焼肉丼を見て私は尋ねた。

「大盛りです。ていうか、ガチ盛りです。店長がガッツリついでくれたんで」

「すごいね」

「イエナガさんは食べて帰らないんですか?」

「うん、今日はいいかな」

「イエナガさん、あんまり食べないですよね」

「うん、歳とともに食欲が落ちてきた」

「いやいや、まだまだぜんぜん若いじゃないっすか」

「いやいや、そんなことないって」

 実際のところ、ここ最近は食欲が急激に落ちてきている。生活のリズムが不規則になっているせいだと思う。

「カトウくんは、今日はラストまで? がんばってね」

「はい。おつかれっす」


 帰りにいつものコンビニに寄る。

 今日は、おにぎりを買った。

 カトウくんが美味しそうにどんぶりを食べていたのを見たからか、久しぶりにお米を食べたくなった。最近はラーメンとパンしか食べていなかった。

 久しぶりに食べたおにぎりは、美味しかった。

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