4.
数学の授業が終わり、昼休みの時間になった。
キョウジは昼食を済ませた後、仲の良い男友達と会話をするために、2つ隣の教室へと入って行った。
ある男子生徒が、キョウジが入室してきたことに気付く。
「おー、どうだった、数学のテストは?」
「さっぱりだな。数学は嫌いだ。シゲは? ……」
キョウジと仲良く会話をするこの男子生徒は、シゲオという名前だ。シゲオは、キョウジの遊び仲間の1人で、「シゲ」とキョウジは呼んでいる。身長は173センチで、キョウジよりもやや低めだ。だが、その鍛えられた筋肉質の身体は、遠目に見ても美しさを感じさせる形をしていた。
「……それで、アレはどうなった?」
シゲオは、何かの件についてキョウジに尋ねた。それに対し、キョウジは笑いながら返答をした。
キョウジの話を聞いて、シゲオは手を叩きながらガハハと笑った。
シゲオとキョウジは互いに笑い合っていたが、その笑いの「質」は、両者で若干の違いがあった。キョウジは、心のどこかで安心していたのだ。
シゲオが言った。
「そいつは良いや。明日、『リュウグウ』が楽しみだな」
この『リュウグウ』とは、竜宮城のことではない。ある特定の「場所」を、彼らはこう呼んでいるのだ。
「ああ。また楽しもうぜ!」
キョウジは、明るい声で頷いた。
キョウジの笑顔には、安心感が含まれていた。
……だが、それだけではなかった。
キョウジの笑顔の中に、秘密裏に何かを企む、無情な色が滲んでいることに、他のクラスメイト達は気付かなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます