2.

 学校のクラス。そこで行われていた授業や教育内容を思い返してみて欲しい。あなたはどのような教育を受けていただろうか。


 おそらくは、次のような教育を受けた記憶があるのではないだろうか。


■基本的人権の尊重。

■歴史の授業における、暗殺、虐殺、戦争、流血革命、国家間の対立、侵略などが存在したという事実の教育。

■歴史上で差別を受け続けた人々の存在、および、現代社会においてどのような差別問題が残っているか。

■民主主義社会の実現のため、公平・公正な振舞いをしよう。

■相手の気持ちや立場を、尊重し、配慮しよう。

■自分の大切さと共に、他の人の大切さを認めよう。


 それは、彼の通う学校においても例外ではなかった。聡明な彼は、「教育」と「現実」との間にある、断絶的とも言えるほどのギャップに、誰よりも早く勘付いていた。


 これらの教育を受けたクラスメイト達は、誰もが皆、公平や公正の精神を持って人間関係を構築できているだろうか。

「自分の大切さと共に、他の人の大切さを認められる」人権感覚のある生徒が、周りに何人いるだろうか。

 クラスの中に、虐げられる立場の人は、いないだろうか。




 ………………




 人類が、もし、クローン人間のように、誰もが完璧に平等な存在になれば、人は皆、幸せになる?

 生まれ持った差異や不幸に、思い悩む人は居なくなる?


 わからない。


 なぜ、社会は「比較」を基にして成り立っているのだろう。

 自分の力ではどうにも出来ないことに対しても、どうして人間は平然と評価をつけ、侮辱をし、虐げようとするのだろう。


 わからない。


 自分が今までの人生で努力を注いだことは、すべて無駄なことだったのだろうか?


 それは……。


 ……きっと、そうだったんだ。


 だから、もう、自分の人生に、意味は無い。


 自分の人生を、この時点で、完全に閉じる準備をしていこう。

 これから、少しずつ。

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