第9話二次創作

 荒神先輩は、カタカタと、音を立てながら小説を書く。

 ハルナちゃんは綾音の書いている小説に訂正を、入れている。

 緑園先輩は白紙を自分の前に並べ難しい顔で座っている。

 リン先輩は用事があるという事で今日はいない。

 しかし、いつもと違う事が2つある。

 1つは、俺がパソコンを開いている事。ん? 何故って簡単だ。俺もいよいよ依頼された作業。

 つまり、ゲーム部に依頼されたプロットなを書くのだ。

 本屋に行ってから1週間。休み時間を削り、部活の時間を削り。時には寝る間を削って何とか全ての本を読み終わる事が出来たのだ。

 そして、実はもうほとんど頭に設定は出来ている。

 後はこれを文字にするだけ。

 だが、自分で言うのもアレだがやる気に満ちている俺の集中力を妨げる物が俺の視界の中で繰り広げられている。

 それは……

 カタカタ、カタカタ


「えーと、後は。ねぇ、荒神ー本とって」


「了解。……これで良い、


「うん。ありがと」


そう、俺の目の前でパソコンの前に座り菊川先輩が小説を書いているのだ。

 スゲー気になる。ちょー見てー。そう思っていると俺の膝を叩く存在がいた。

 見なくても分かる。このちゃぶ台を使っているのは席の無い俺。そして、綾音だけだ。

 ていうか、何だよ。

 俺が綾音の方を見るが綾音は澄ましたように小説を書いている。因みに、ハルナちゃんはいない。トイレにでもいったのかな?

 俺は、ふと下を向いた。するとそこには白紙の紙が一枚。そこには、


『菊川先輩が小説書いてるんだけど。アンタ何か知ってる?』


と書いている。何だよ。やっぱりお前も気にならなかよ。

 俺はサラサラと答えを書く。


『確か2次小説を書くはず』


俺は、綾音に突き返す。

 俺がパソコンに向き直るとまた、返答が返ってきた。


『本当に! それ、かなり気になるんだけど。アンタ何か知ら無いの?』


俺はまた返す。


『知るかよ。俺も初めて菊川先輩が書いてるの見たわ。ていうか、そんなに興味あるのか?』


『まぁ、いつかは書いてみたいジャンルだし』


やっぱり、こいつ相当な小説バカだな。

 こいつ、本当に本に対してはどこまでも貪欲だ。この前も、荒神先輩に何か聞いてたし、自分が書いていたのを読ませてた。ていうか、まぁ、それには俺も付き合わせられたんだけど。この部のルールだから。

 そんで案の定、ダメ出しメッチャ食らって落ち込んでた。

 けど、まぁ普通に憧れはする。そうやって何かに打ち込めるのは素直にアイツの才能だと思う。


『じゃぁ見せて貰えばいいだろ』


「じゃぁ見せて貰えばいいだろ。ですかー。成る程ー」


「うわっ! ハルナちゃん! いつのまに!」


「本当に! それ、かなり気になるんだけど。アンタ何か知ら無いの? 辺りから」


そんなに、前かよ。全然気づかなかった。


「綾音さん。そんなに、気になるなら聞けばいいじゃないですか?」


「えっ、いやさんなんですけど。その、昨日荒神先輩に、あんまり、人の技術を盗もうとしすぎると自分らしさがなくなるぞ。

 って言わて」


そう言い横を見る。俺には色々と喧嘩吹っかけてきたり、俺をのクラスのヤツをけしかけて俺を殺そうとした癖に、何で先輩の命令には忠実何だよ、コイツ。


「ふーむ。そうですか」


そこでニヤリとハルナちゃんは笑う。

 あっ何か荒神先輩そっくり。ていうか、嫌な予感……


「ニィーニィー。綾音さんが菊川さんの小説が気になるって!」


「ちょ、ちょっとハルナちゃん!」


あー、やっぱりこの子も荒神先輩の妹だわー。


「ん?」


荒神先輩は、イヤフォンを外し俺たちに椅子を向ける。

 荒神先輩は小説を書くときはいつも音楽をかける。

 そして、綾音は目をギュッとつぶっている。頭に手をやり震えている。

 そんなにかよ……ていうかコイツ


「ん? いいんじなな無いか?」


「えっ?」


「菊川、お前の小説コイツがら見たいってよ」


「あー。いいよ」


そう言い、菊川先輩は手を招きをする。


「ねっ。大丈夫だったでしょう」


ハルナちゃんは、ニコリと笑う。


        ♢♢♢


「で? 何が聞きたいの?」


「その! 2次小説の書き方を教えて下さい!」


コイツ、本当に好きなんだなー。


「う、うん。けど、ちょっと近い」


「ご、ごめんなさい」


ま、ちょっとその気持ちが強すぎだけど。


「えーと、じゃぁ簡単に」


そう言い、菊川先輩はホワイトボードをどこからともなく連れてきた。

 そのホワイトボード、いつのまにかあったけどどこから持って来たんだろう……

 いや、やめよう。何か考えたらダメな気がした。


「えーと。じゃぁ2次創作の種類からかな。

 2次創作にはいくつかあって。

 原作の創作物の違うパターンを書くパターン。まぁ、イフストーリーかな。

 比較的オーソドックスだから結構簡単だよ。

 2つ目は、1つの作品に違う作品を入れ込むやり方。僕はこれを良くするよ。

 3つ目は、もとある創作物を創作物として見て主人公を書くってパターンかな」


ん? どういう事だ。

 俺は顔をしかめていたのだろうかは分からないがハルナちゃんには理解が追いついていな事に気づいたのか補足をしてくれた。


「つまり、本の中にリアルな人間が入って物語を展開する……って事ですよね。菊川さん」


「そう。とまぁザックリだけど2次創作のパターンはこれかな。

 設定を考えない分楽ではあると思うよ。2次創作から小説を書いた人もいるだろうし」


 2次創作かー。確かに、そう聞くと簡単かも。俺も何書いて良いか分からない訳だし。

 そう思うと早速書きたくなってきた。俺も2次創作から始めようかなー。


「けど、読者層をどうするかで書き方とか文体変わるし。元がある分それに引っ張られたりもするから作るのは簡単でもっ面に取っては1次創作よりも厄介かもなー。 よし、出来た」


うぐ! そうなのかー。けど書き方を縛られらのは難しそうだよなー。

 最近分かってきたけど先輩達もの作品も所々共通点があるし。

 ていうか、緑園先輩、今の話聞いてたのかよ。

 俺は緑園先輩の方を見ると緑園先輩はこっちを見てニコリと笑う。

 ドキッ!

 緑園先輩ってなまじ美人だからこういう事されると普通にドキドキする。

 しかし、緑園先輩はそれだけじゃなかった。了解先輩は俺に向かって口パクをする。

 何だ?


<しょ う せ つ な め る な>


……


みすかされてる!


緑園先輩はニヤリと笑う。その笑いはまさに悪魔の笑いだった。

 そして


「なぁ、折角だし見せれば良いんじゃないか? 菊川の小説。菊川もいいだろう?」


「えっ。まぁ、良いよ。書きかけで良ければ」


「じゃぁ、みんなで菊川の批評会をしよう」


という荒神先輩の鶴の一声で俺達は急遽、菊川先輩の小説を読む事になった。

 空間が歪んだ。


         ♢♢♢


菊川先輩の書いてる小説はさっきも言った通り2つの小説のミックスだった。

 ベースは人気の異世界転生の小説だ。1人の男が異世界にスライムととして転生し、仲間を作り国を作っていく。そして、立ちはだかる敵を倒すという、主人公のチート性と個性豊かな仲間が売りの作品だ。

 そして、その世界観に入れるのは何とゲームだ。

 しかも、あの人気なファンタジー世界のドラゴンやモンスターを狩っていくという例のアレだ。

 そして、例の如く。この空間ではそのドラゴンと主人公のバトルが目の前に繰り広げられる。

 サクサクと進むバトル。3人称と主人公視点の間の文体は興味が惹きつけられる。

 その書き方は荒神先輩の書く3人称や、緑園先輩の1人称ともまた違う。

 俺は惹きつけられた。


          ♢♢♢


………


カッケー。何だよこれ。読みやすいし。しかも、凄いカッコイイ!

 それは、綾音も同じだったのだらう。何度もスクロールして読んでいる。


「どうだった?」


菊川先輩は俺達に聞く。


「凄い面白いです!」


「はい!」


俺と綾音は即答。

 荒神先輩は


「相変わらず良い表現するね。行間の効果的な取り方に。話の引き方。

 普通に凄いと、私も思うよ」


と緑園先輩も絶賛。荒神先輩は


「面白い。2次創作弱点の読者層が分かれるって所もちゃんと補えてていいと思う。

 俺もこのゲームは知ってるし、知ってなくても説明はいらないノリだから読みやすいかった」


と、小説に異常な拘りを見せる先輩2人も絶賛。

 ていうか、凄いな菊川先輩。この2人から太鼓判貰うとか。

 綾音とか、作り直した奴メッチャ持って行ってその都度面白くなっててもボコされてるのに。


「意外に、あの3人でレベルが高いなって菊川かもねー」


「うわっ! リン先輩いつのまに」


「あんたらが小説読んでる時」


「そうですか。で、本当ですか? さっきの話」


「ん。まぁ。あの3人は得意な事とか大事にしてる所はバラバラなの。

 緑園は、雰囲気を大事にしてギャグは一部の人からは人気がある。

 荒神は、設定とキャラを大事にして事実キャラを動かす事に対しては1番上。

 んで、菊川は文を書くことには惹きつけてる。ある意味、小説を書く人間には欠かせない物を持ってるって意味ではね」


そう言い、リン先輩は自分の席に行った。

 確かに。とりあえず言える事は。俺はしばらく2次創作は書けないと言うことだ。

 たって、誰だってあんなの見せられたら初心者はやる気を失うと言う物だ。

 それに、俺は早く自分の仕事をしないといけない。

 俺は机に向かいスリープ状態のパソコンを開いた。

 





 






 




 

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