第8話生み出す前のひと時
「ここの文が分かりにくいです」
「えっ!」
「えーと、なので」
と言い小柄な少女は明らかに年上だと思われる少女の書いている原稿に指をさし訂正する箇所を教える。
とまぁ、小説っぽく書いては見たけど単に、荒神先輩の妹。ハルナちゃんが部室に遊びきて、綾音の作品の指摘をしてるだけなんだけど。
あの、本屋の一件の後の説明を俺は思い出す。
♢♢♢
「さて、唐突だが俺らには時間が無い」
「時間?」
「そっ、俺らソロソロ新しい作品を書こうと思っている。
そこで、お前らの方ばかり見ていられない。そこでハルナの出番だ」
「? どういう事ですか?」
「はぁー察しが悪いなぁ。つまり、暫くお前らの小説はコイツが見る」
「「えっ!!」」
「何だ? その反応は? 言っておくがコイツの少女を見る目は俺らとそこまで変わらないぜ」
と、言う事で試しに綾音の小説を読ませてみた。
勿論綾音は
「何で! 私の小説が実験台みたいになってるんですか!」
と言ったが先輩達は華麗にスルー。
そして、空間が歪む
♢♢♢
「えーと」
そう言いハルナさんの装いはドレスに。そして、周りにはイケメンのキャラがナイトのように侍っている。
その数4人。
「まず、主人公とヒロインをメインに描き過ぎてて他のキャラが立たなさ過ぎてると思います。
こういう小説他のキャラも魅力的に描かないと読む人は飽きますし、何より推しが見つからないため読まれません!」
その声と共に赤髪のナイトが綾音に接近する。
綾音は一撃目は交わすがフェイントによって切られた。
それからは、綾音は一方的にダメだしをくらいあえなく撃沈。
なんか、こう見てみるとアイツ可愛そうだな。
♢♢♢
という事がおき、俺もそして綾音もハルナちゃんの実力を認めざるを得なかった。
まぁ、別に悪い子じゃないし良いんだけど。
それよりも
「あーーー。あー」
「うーん。はぁ」
「あの、2人とも奇怪な声を出して負のオーラーを出さないで下さいよ。
こっちまで気が滅入ります」
そう、さっきらこの2人つまり緑園先輩と荒神先輩はずっとこんな奇怪な声を出しながら机に突っ伏してる。
「うるせー。いまだ何も思いたていないお前に言われたかなーよ。輝」
と緑園先輩は言い
「その通り。お前には分からない。この新しい物を生み出す苦しみが」
と荒神先輩があいのてを打つ。
ていうか! それは俺も同じだわ!
「あちゃー、やっぱりこうなっていたかー」
「あ、菊川先輩。何処に行っていたんですか?」
「ん。あー、生徒会室にね。それで、この2人は何?」
「何か、新しいものが出来なくて悩んでいるみたいです」
「あー、成る程」
そう言い菊川先輩は自分の所に戻っていく。
って、待って下さい!
「良いんですか! これで!」
「ん? まぁ僕は2次創作が基本だし。力にはならないよ。
それに、ほっといてもどうにかなるでしょう」
「いや、近くにいる自分は病みそうなんですけど」
「ハハハハ。なら、君が力になれば良いよ。じゃっ」
と言い机に座り本を読む菊川先輩。
んー。……
「先輩方! 本を読みましょう! 本を! まずは創作物に触れる所からって先輩達も言ってだじゃないですか!」
「本」
と、机に上半身を倒している荒神先輩は顔だけをこっちに向けて言う。
うわー、目が死んでるー。人間、ここまでダメになれるとわ。
何か、見ててこっちまで脱力するなー。
「そうだな。続きも気になるし」
と、徐に体を起こしバックに手をかける。
そして、本を開く。
うん? これってもしかして
「先輩、先輩の持ってる本って俺の読んでるこれですか?」
そう言い、俺は机に置いてあるラノベのブックカバーを外す。
「ん。そうだな。俺のはもっと巻数が進んでるけどな。
てか、またお前もマイナーなの選んだな。それ、アニメ化はしたがだいぶ前だぜ。
しかも古い巻とか、あーいう大きな書店でしか売ってないし。
まぁ、面白いけど」
「知ってます。ハルナちゃんに勧めて買ったので」
「そうか。で、感想は?」
「いきなりですね」
「わざわざお前から話を振ったんだ。それぐらい話せよ」
と言ってもなー。
「俺、全部読んでませんよ」
と、言い読んだところまでページを見せる。
「それだけ読んでたら分かるだろ。良いから話せ」
「だったら。……まぁ、面白いです。戦国時代を取り上げてますけど分かりやすいし。
ヒロインも主人公も何か生き生き書かれてるし、それに普段おちゃらけてる主人公が大事な所でガラって変わって」
そう、話すと荒神先輩の目が少し大きく開く。
そして、ニヤリと笑う。
「あーそこな、分かる。けど、全然主人公のらしさは失ってないんだよな。
しかも、ヒロインを残酷な運命から守るって言って奔走する所とか胸熱だよな!」
「はい!」
と、そこからは話が盛り上がる。
俺今まで漫画とかでもそうだけど。ここまで人と語った事ないから何か新鮮。
けど、スゲー楽しい。
「後、ここ! ここで俺笑いましたよ。カッコいい事やってるのにここまで下心満載にかけるのか! って」
「あーね」
と意味深に頷く。
「何ですか?」
「いや、実はそのキャラが後に」
「言わないで下さいよ! ネタバレは禁止です!」
「ハハ言わねーよ。けど、この小説本当にいいよな。俺、この主人公が色んな奴の運命に奔走する所とかスゲー……」
「先輩?」
荒神先輩は、そこでピタリと止まった。
何だ? いきなり止まって。俺は荒神先輩の肩に触れようとした。
そして、そこで荒神先輩は、ニヤリと笑う。そして
「ハハハハハ! そうか、そういう事か! ありがとよ輝! お前のおかげでいいアイディアが思い浮かんだ!
後は」
そう言い、荒神先輩は紙を広げてペンを走らせる。
その姿はとてもイキイキとして楽しいって気持ちがスゲー伝わってくる。
本当に、この人は本が好きなんだろうな。だから、ここまで熱くなれる。
(お前! いいのかよ! これで! お前の気持ちはそんな物だったのかよ!)
! 今のは……
忘れよう。今のは幻聴、空耳。そう、もう俺は……
と、そうだ。緑園先輩は。
俺は緑園先輩の方を見る。そこには、慣れた手つきでプラモ組み立てる先輩がいた。
「何で、プラモ作ってんですか?」
「息抜き」
「いや、良いんですか? そんな事して。怒られませんか? 先生とかに」
「ん。まぁ、やっさんは基本忙しくて来ないし。後は、生徒会ぐらいだけど。まぁ、そこも基本は来ねーよ」
「あの、前から思ってたんですけど生徒会って他の学校と何か違ったりするんですか?」
「ん。まぁ、違うと言えば違うか。制度っていうか生徒会達役員が」
「どういう事ですか?」
「キャラが濃ゆいんだよ。簡単にいうとな」
あんたが言うか。あんたが。
「だから、あんまり他の人達も積極的に関わろうとしない」
「何か、ウチの部みたいですね」
「
いや。それは無理だろ。少なくともここを部室として貸し与えられてる時点で。
だって、ここの隣の部室。ゲテモノ料理研究会とか、よく分からん部活だったし。
そのまた隣は昼寝部とか、こっちも良く分からん部だったし。
ていうか、ここの通りの部室にかけられているプレートのほとんどがよく分からん部活だった。
そこで俺は悟った。あー、ここらへんのエリア一帯。厄介物の部活を一手に押し込めた場所なんだって。
まぁ、そう思えば普通に納得出来るんだよなー。
だって、俺が入った時スタンガンで眠らされてここに連れてこられたが。普通だったら、不審がるが、不審がられなかった。
つまり、
「どうした? そんな悟った目をして」
「いえ。何でも。ただ自分は今この学校の心理を知った気になって」
「ハガレンかよ」
そう言い、緑園先輩はプラモ作りにもどった。
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