第2話その名はノベル部!
うん? ここは?
「お、やっと起きたか」
俺は声のする方に顔を向ける。そこには眼鏡をかけた男の先輩がいた。
さっき、謎空間でライフル銃を撃ってた人だ。しかし、さっきのような生き生きとした感じはなく無表情だ。
とりあえず。ここからさっさと逃げよう。
そこで俺の寝ぼけた頭は覚醒する。何故なら、俺は今イスにグルグル巻きに巻かれていたからだ。
「何だよこれー!」
「うるさい!」
俺が驚きそう声を発すると部屋の一角からそんな声が聞こえた。
そして、現れたのは金髪に水色のパーカーをきた小柄な先輩だ。
そう、俺をスタンガンでこの部屋に連れてきた悪の権化だ。
「どうしたの?」
「どうしたの? じゃないわよ! コイツがデカい声を出しすからペンがズレてイラストが、私のイラストがー!」
「別にイラストに投稿する奴に出す奴がダメになったぐらいで」
「いや、アンタの挿絵よ」
「おいこら! ふざけんなよ!」
眼鏡をかけた先輩が金髪の先輩に詰め寄る。
「ちょ、ちょっとミスったのはアイツのせいなんだし。私じゃなくて、アイツに行ってよ!」
「そうだな」
眼鏡の先輩は何度か深呼吸を繰り返し右手を前に左手を後ろにし出し腰を構える。
これって
「選べ。顔を二回殴られるか、蹴られるか」
やっぱり! あれ武道の構え。
って、ヤバいヤバい。どうにか逃げないと
「まぁまぁみんな落ち着いて。そんなことしたら折角の新入部員が逃げちゃうよ」
と、良いヒョロイが制服をちゃんときた先輩が現れた。
いや、もう十分逃げたいんだけど。
「さて、」
そう言いヒョロイ先輩は俺の後ろに着く。そして体を下げ俺の体を縛り上げている縄を解こうとしている。
「よしこれで」
ヒョロイ先輩が縄を解く瞬間俺はすぐにイスから立ち上がりドアに全力ダッシュ!
え?!
立ち上がり足を前に出そうとする。しかし、足が動かず。
走り出そうと体重を前に傾けていた俺はそのまま地面に倒れる。
なんだ?! 何が
俺が足元を見て俺は絶句する。
何と俺の足元には手錠が嵌めてあったのだ。しかも、触っても気付かないように、ご丁寧に俺の足首よりも一回り大きくしかし抜けない絶妙な大きさのやつだ。
「あ、その手錠。
まさか、本当に役に立つとは」
眼鏡の先輩は若干目を大きくしてそう言う。しかし、それでも無表情と変わらない。
俺は何とか体勢を立て直す。
「あの! 一体何ですか? てか、何なんですか貴方達は!」
そうだよ。まずここ何処だよ!
教室のようなコンクリートでは無く壁も地面も木製。
そして壁際には4つのパソコン。しかも壁の一角が吹き抜けになっており隣にはキッチンまである。
まず、普通の部屋では無い。
「リン言ってなかったの?」
眼鏡の先輩は金髪の先輩に聞く。
「あ、言ってなかったかも。いや、別に言わなくてもここに連れてくれば帰れると思ってたし」
「はぁー。今度からリンは新入生の勧誘は留守番で」
「はーい」
「さて、ここが何で貴方達は何ですか? って言うのが質問だったね」
「はい」
「じゃぁまず、ここは何処からかと言う質問から答えよう。
ここは、語手部」
「かたりて部?」
「語手部とかいてノベル部と言う」
「ノベル部?」
「そっ。見ての通り自分の考えた話を書きここで批評し、そしてサイトに投稿するって言うことをしている。
そんで俺は
「僕は菊川、菊川洋太。小説は2次創作が主かな」
「私が竹ノ岡リン。基本はここでイラスト書いてる。まぁ、後挿絵か。
因みに、アンタの事は許してないから」
と睨みつける。
それをヒョロイ先輩、基菊川先輩がまぁまぁとなだめる。
うん、1番信用できるのはこの人だな。
あれ?
「けど、確かもう1人」
と、そこでドアが開き
「おーい! やっさんから入部届け貰ってきたぞー!」
と勢いよく部室に入ってくる人がいた。
女性にしては高い身長に。長い黒髪。鋭い目つき。美人と言われる部類の顔立ちだろう。……てか、結構タイプだ。
「お、起きたかのか」
「今さっきな。んで、今自己紹介をしてた所」
「お! そうか。なら私もこの流れで。私がこの部活の部長の
うわー。ドヤ顔が腹立つ
「何ドヤ顔してんだよ」
と、眼鏡の先輩基、荒神先輩が緑園先輩の頭を軽く小突く。
「何すんだよ!」
「何が部長だ。お飾りのくせに」
「何んだと!」
「まぁまぁ落ち着いて。ほら緑園。入部届けを」
「お! だったな。ほれ」
と言い入部届けを俺の前に出す。
ん。吐き気がする。
「んじゃぁ、これに名前とか学年とか書いてくれや」
「あの、俺ここに入るって決めてないんですけど」
「あ? 何言ってんだ。お前、この部室に入ったんだ。
このノベル部のルールー! この部室に入ったやつは必ずウチの部に入る事!」
「それいつきめたんだよ」
「今!」
「うわー」
「なんだよ? 優也その顔はー」
「いや、何というか……まあ、いいか」
「ふふん。という事で書いてもらう!」
♢♢♢
「おーい
「おぉ」
俺は友達の
学食も家の学校にはあるが流石に一年で使おうとは思わない。
倉沢はワックスで固めた逆立てた髪を触りながら
「お前、そういや昨日何やってたんだよ」
「部活通り」
部活通り昨日行っていた部活生徒が新入部員をゲットする為のあの通りだ。
因みに2週間はあそこで新入生獲得に励む。
「へぇー。で、何んか面白い部活でも見つけたのか?」
嫌な質問だ。まぁ、テキトーにはぐらかすか。
「うーん。まぁ、少しな。そう言うお前らは何か入らんのか?」
「俺はパスだな。バントが忙しいし」
そういえば倉沢はバンドを組んでるんだったな。確かそれで髪も逆立ててるとか。
「牧野もか」
「うん」
牧野は倉沢ほど派手では無いが地味な奴だ。で倉沢と同じバンドの確か、ドラムやってるんだよな
それからテキトーにだべっていると放送が流れた。
『一年の桜火輝さん。至急旧校舎3階。
俺は体を跳ねるように振るわす。
これってあの人達だよな
「何だ? お前何かしたのか輝。てか、ノベル部って」
どうする? 行かないって選択肢はあるが。そこで俺の頭にある記憶が思い出す。
無しだな。ここでもし行かなかったら何が起きるか分からん。
あの人達、暴力行為を全く何とも思ってねーし。
俺はトボトボと重たい足取りを引きずりながら旧校舎に向かった。
旧校舎はその名の通り昔の学校。つまり、私立桜語り高校の昔の校舎だ。
しかし、今は部活党として使われている。主に文化部の。けど、じゃぁあの部屋も昔何かの教師だったて事だよな。
と、考えていると例の
俺は何度も大きく深呼吸する。よし。
「失礼します」
俺は扉を開く。
「よっ」
扉を開くと机の前に両手をつき体を少し逸らし扉を真っ直ぐ見据えている荒神先輩がいた。
俺は辺りを見渡す。荒神先輩は俺の意図を読み取ったのかニヤニヤしながら
「安心しろ。ここには俺とお前しかいない。お前が警戒している緑園や笹野丘やお前の頼みの綱の菊川はいねーよ」
バレてる。ていうか、何かこの人……少し性格が違わないか。
さっきもイタズラっ子のように笑いながら話すし。昨日の無表情さは一切無い。
「さて、ここを呼び出した理由は1つ。お前、
「その為に構内放送まで使ったんですか」
「放送部にはつてがあってな。俺のモットーは思いたったら即行動だ」
嫌なモットーだ。
「まつ、受け売りだがな」
受け売り? どういう事だ?
「それで答えは?」
「変わらないですよ。入りません」
俺はそう言い拉致られた時の事を思い出す。
♢♢♢
「嫌です」
「はっ」
「だから、嫌って言ったんです。俺は、この部活には入りません。てか、もう部活に入る気はないんです」
「ふざけんな。私が作ったルールーには従ってもらモガ」
そこで緑園先輩の声は途切れた。というか、止めさせられた。
「はい緑園スートップ。で、1つ聞いていいか?」
「何ですか?」
「別に
それもこの学校で」
「そんなの関係無いですよね貴方には。
じゃぁ逆に聞きますけど貴方達は、何でこの部に入ってるんですか。(話を作る)部に」
そこで、口を塞がれていた緑園先輩が優也先輩の手を振り解き高らかに言った。
「そんなの! 作家になって認められたいからに決まってんだろう!」
「夢の為……ですか?」
「あぁ。あとは趣味だな」
「……なら、尚更俺はここに入る事はしません」
「はっ何でモガ!」
「はい、緑園スートップ。分かった。なら、輝こうしよう。
今日はもう帰って言い。ただし、俺達は何度もお前をここに入れようとする。そうだな……1週間俺達はお前を誘う。
それまでお前が心変わりしなかったら諦めてやる。どうだ?」
「それって」
「だってそうだろう。お前は入りたくない。けど俺達はお前に入ってもらいたい。そして話し合いも無理
なら、戦うしかないじゃん。という事で、」
そう言い優也先輩は足首の手錠を開けた。
♢♢♢
今考えても吐き気がする。
「そうか。けど、まだ1週間入ってないからこれしきりでは俺達は諦めないぜ。と、どうだ? 折角だし話さないか?」
「話す?」
「あぁ。だってわざわざここまで来たんだ。何もしないで帰るなんて時間が持ったないだろう」
「話しって一体?」
「? そうだなー。俺がこの部活に入ってる理由……とかどうだ?」
「そんなの」
「けど、反応してるじゃねーか。まぁ、仕方のないだけど」
「仕方のない事?」
「あぁ。人間は好きなものに興味があるように嫌いなものにも興味がある生き物なのさ。
そして、お前は本が嫌いで、部活が嫌い。なら興味が無いわけ無いよな」
嫌いな物にも興味がある…か。なら俺には興味は無い。だって俺は別に本が嫌いなわけじゃ無いし。
けど、ここで嫌われる事を言えば諦めてくれるかもなー。なら
「……別に、本が嫌いなわけじゃないんですよ。俺は嘘が嫌いなんです」
俺は真っ直ぐ優也先輩の方に向き直りできる限りの愛想笑いを浮かべながら言った。
「嘘?」
「だってそうでしょう。先輩達が書いてるのは物語り。嘘じゃ無いですか。実際、現実には魔法やスゲー悩む程の恋愛何てないんですよ。
……言っておきますけど貴方達がやってる事はただの時間の浪費! 非生産的な行動! 現実逃避も良い所です!」
……あれ? しまった! 嫌われるどころかこれじゃぁぶん殴られても言い訳できねー。
だって、俺、スゲー怒らせること言ったもん。
けど荒神先輩の反応は俺の斜め上を行くものだった。
「ぷっ。ハハハハハハ。嘘……か。そうだよ。物語りは嘘だよ。
どんなに探しても、どんなに努力しても魔法は無いし。スゲー悩む恋なんて無い。
異世界もなければ、自分の運命に苦しめられる事何て事もない。物語りは嘘っぱちで。俺ら作家は嘘つきだよ。
まっ、それが良いんだけどな」
荒神先輩は生き生きとそう語った。笑顔に。至極当たり前のように。
「さて、俺がこの部活に入っている理由だったな。まぁ何、何とも笑えるような理由さ。
俺は信じたいんだよ」
「信じる?」
「そっ。俺はさ。空手習っててさ結構帯も上何だよ。けど、俺より上の奴には絶対勝てない。
当たり前だよな。実力の差ってのがあるんだから。
だから俺は不可能な事は無理だと、出来ないた思ってた。
けど……俺が無理だと思ってた事をイヤ、他の奴らも無理だと思ってた事をやり遂げた奴がいたんだ。
それを見で俺は思ったよ。あー不可能な事なんて無いんだって。本当の意味で(やれば出来る)って言葉の意味を知った気がしたよ。
だから俺はここにいるのさ。不可能だと思ってた事をやった奴が作った場所で物語を書いているのさ。
物語りの中ならどんな不可能も可能に出来るからな。俺は物語上で不可能を可能にして、不可能なんて無いって事を忘れないように、そして他の奴にも知って貰いたくて、信じ続けられるようにしたいのさ。
勿論、作家になりたいっていう夢があるのも事実だねどな」
俺は……荒神先輩の言葉を聞いて初めて、人の言葉を聞いて、心の底からスゲーと思った。感動した。
「だから、俺は諦めない。不可能なんて無いんだから。
お前をこの部室に入れる事は出来るって信じてるからよ」
俺はつい、「入ります」って言いそうになり、口を継ぐんだ。
入りたい。けど……けど
気がつくと俺は荒神先輩に背を向けて、ドアノブに手をかけていた。
これで良いんだ。後は、ここから立ち去れば
「あの、また来て良いですか?」
俺は無意識にそう言っていた。
「良いよ。基本放課後はここにいるからよ」
俺は
何故か嫌な気はしなかった。
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