第23話 女子高生とパパ
「パパぁ!! お帰りぃ」
玄関でびょんと跳ね彩音さんは父さんに抱き着いた。
「おいおい彩音、まったく子供なんだからお前はぁ」
「だってぇ、パパが帰って来たんだもん。うれしくて仕方ないんだもん」
「それにしてもお前、また少し若くなったんじゃねぇのか?」
「え、そんなことないよぉ。若返りはいつもと同じところで止めてるんだけどなぁ」
「ふぅ―ン……さてはお前浮気していたな?」
「えええええ! う、浮気……あ、」
「ほほぉ、思い当たる事があるんだ?」
「ええッとね。実はさぁ。今景ちゃんと一緒に高校生になっているんだぁ」
「マジ! お前が高校生?」
「うん、そうだよ。飛鳥彩音高校3年生だよ」
「はぁ、ついにそこまでしちゃったんだ」
「だってさぁ、景ちゃんと一緒にいたいんだもん。だから私景ちゃんと浮気してたの」
「なる程な。景とか……。で、その景はどうしているんだ」
「ええッとね。ちょっと今取り込み中なんだけど……」
「取り込み中って?」
「あら、頼斗。久しぶりねぇ」
「なんだなんだ雪江お前まで来ているなんてなにがあったんだ」
「まぁいいじゃない、でも相変わらずいい男よねぇあんたは。その金髪に長身、崩れのない顔、スッとととなった目鼻。ブルーアイがほんとそそられるわね」
「ユキ、パパはあげないからね」
「はいはい、分かっているわよ彩音。でもあなたも狙ったかのように来るわよね」
「狙ったかの様にって?」
「あれまぁ父さん?」
「おいおい、なつみまでいたとは。いったい何があったんだ」
「まぁ色々とね、で、いつまでそうしてこの狭い玄関いいるの?」
「なはは、そうだった。疲れているよねぇパパぁ。さ、入って休んで」
「お、オウ」
父さんは家の中に入って、居間を見渡し
「ふぅやっぱり、一番落ち着くねぇここが」
ドスンとソファに腰を沈めた。
彩音さんはずっとネコの様に父さんに引っ付いて離れない。
「ところで景はどうしたんだ?」
「景ちゃんなら今園と一緒にお風呂に入っているわよ」
「ぶっ! おいおいもうそんな関係なのか? て、ことは……景は園ちゃんと、やっちゃった?」
重い空気が漂った。
「て、言う事は景の奴覚醒したというのか?」
「……うん、景ちゃんなっちゃったんだよ。バンパイアに」
彩音さんは少し寂しそうに言う。
そして今日起きた出来事を父さんに話した。
「そうか、アーテーがいよいよ本格的に彼奴の事を狙ったという事か。それで園ちゃんに何か変化は?」
「今の所ないわ」
「うむ、だが確実に園ちゃんの中から景の本体が抜けたという事は、その反動が起きても不思議じゃない。それがどんな形で現れるかは分からないが……」
「出来ればもう少し、あと少し待ってほしかった」
園のお義母さん雪江さんは言う。
「だがたとえ景が18歳になってからにせよ、遅かれ早かれこうなることは分かっていたことだ。あとは景がどう園ちゃんを受け止めるかだな」
「園どうにかなっちゃうんですか?」
「君は?」
「私、園の友人の
「ふぅ―ン。君可愛いねぇ」
「駄目だよパパ。花楓ちゃんはもしかしたら景ちゃんの伴侶になるかも知れないんだから。もういいでしょ。パパはもう伴侶増やさなくたって」
「ほほぉ、景の伴侶候補ねぇ」
「えっ! そ、そんなぁ。まだ私、覚悟がそのぉ……」
もじもじしながら否定する訳でも無く、花楓さんは照れていた。
そこへ僕は園と手を繋ぎ父さんの前に園姿を現したのだ。
「ヤァ父さん。久しぶりだね」
僕の姿を見た父さんは、いささか照れくさそうにしながら
「おう、景。元気だったか?」と、僕に答えた。
僕が覚醒したことを訊いた父さんは、ついに自分よりも権威が上になった僕をどう接したらいいものか少し迷っているような感じがした。
「訊いたんだねみんなから」
「ああ、訊いたよ」
「そうかぁ、ごめん……父さん」
「何で謝るんだ景」
「何となく」
「いいんじゃないか。でもさぁ、まだお前は半人前だ。そんなに気にすることはないじゃないかな。とはいっても、それを許しちゃくれねぇ連中もいるんだけどな」
「うん、今日の事で身に染みたよ。父さんもじいちゃんも、ずっと戦ってきていたんだね」
「まぁな、でも俺らにはおいそれと手は出してこねぇ。それはなぜかわかるか景」
「分かんないけどなんか感じるよ。今までの父さんとは違う何かがずっと守っていることを」
「俺にも感じるよ。もう一人のお前をな」
「なんか照れ臭いけど」
「うむ……」
父さんは軽く頷き僕の隣にいる園に
「園ちゃん、景の伴侶として生涯この子の事を頼む」
園は新たに覚悟を決めた様に
「私は飛鳥景の第一伴侶として相応しい妻となる事を誓います」
「ありがとう園ちゃん。うん、今日はいろいろあったみたいだけど何となくめでたい気分だ。おい彩音、宴会だ。寿司かそれとも肉かどっちがいい」
「あ、私はお寿司が食べたいなぁ」
「ようし特上寿司10人前だ!」
「やったぁ!」
喜ぶ彩音さんに、園が遠慮気味に
「あのう彩音さん。私、彩音さんに景の大好きなカレーライス教わりたいんですけど。駄目ですか?」
「あ、そう言えばカレーご馳走するっていてたね」
父さんがしみじみと
「彩音のカレーかぁ。久しく食っていないなぁ。俺は特上寿司よりも彩音が作るカレーが食いたくなってきたな」
「えええ! そうなのぉ」
「ああ、彩音のカレーを食うと、ようやく自分の家に帰ってきた感じするんだよ」
「僕もカレー食べたいなぁ」
「ンもぉ、景ちゃんまで。分かったわよ。園ちゃんに私のカレー伝授してあげよう」
園はバット明るくなり
「彩音さん。ううんお義母さん……よろしくお願いします」
「彩音、当然私たちの分もあるんでしょうね」
「当たり前じゃない、カレーはね量が多いほど美味しくなるんだよ。それにさ、愛する人の為に作るカレーはね。もっとおいしくなるんだぁ」
「材料足りる?」
「もち、お買い物してこないとね」
「だったら僕と園が行ってくるよ。いつものカレーセットでいいんだよね」
「うん、でも大丈夫、体の方は?」
「ああ、僕も園ももうなんともないよ」
「ねぇねぇ、私も一緒じゃ邪魔?」
花楓さんも僕らと買い物に行きたがっている。
「うんいいよ」
僕ら3人は買い物へ、そして父さんたちは……
これから酒盛りが始まるんだろうな。ま、彩音さんはお酒飲めないから大丈夫だけど、父さんお酒入るとものすごくエッチになるから、ゆっくりと帰ったほうがいいなこりゃ。
「ん? どうしたんですか景、そんなにニヤついて」
「いいやなんでもないよ。さぁ行こうか」
「はい、景」
「あのね、私もいる事忘れないでよね」
ちょっとすねた感じで花楓さんは僕らの仲に割って入った。
「あのね花楓、あなた景の事好きになったの?」
「え? そ、それは……」
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